「アウトを言い渡されたアート」社会に切り込むアーティストたちと考える公開講座

アートは時代を映し、時にシリアスに、時にユーモラスに、時代や社会のさまざまな問題を考えるきっかけを与えてくれる。しかし、社会に切り込んだ作品はその果敢さゆえに、たびたび検閲や規制にあい、「作品」が「アウトである」と判断される。社会におけるアートの役割とは?いかにしてアートを前進させることができるのか?岡本光博さん、chim↑pomを代表し稲岡求さん、そして聞き手に法律家の視点からアーティストを支援する作田知樹さんが集結、青山ブックスクールでトークが繰り広げられる。

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アートは唯一、社会に“イメージ”を突き返すことのできるもの

アートは時代を映し、時にシリアスに、時にユーモラスに、時代や社会のさまざまな問題を考えるきっかけを与えてくれる。

現代美術家 岡本光博さんとアーティスト集団Chim↑Pomも、アートをもって果敢に社会に切り込んできたアーティストのひとりだ。しかし、その果敢さゆえに、たびたび検閲や規制にあい、「作品」が「アウトである」と判断されてきた。ときにその内容の変更を要請されたり、制作や展示が叶わなかったり、撤去せざるを得なかったりと、歯がゆい思いをたくさんしてきたという。

岡本さんとchim↑pomだけではない。近年、ワイセツ、著作権問題、政治的すぎるなど、さまざまな理由で抗議を受け、何かしらの対応を迫られるアートを耳にすることは少なくない。

2015年、岡本さんは「ディズニー美術」と題した展覧会を企画し、アートと著作権の関係を突きながら、「アートは唯一、社会に“イメージ”を突き返すことのできるもの(本展ステイトメントより)」とアートの力を提示してみせた。

同じく2015年、結成10周年を機に、chim↑pomはこれまで実際に受けた抗議や規制・検閲を反映させた作品による「耐え難きを耐え↑忍び難きを忍ぶ」展を開催し、アートへの社会からの回答を可視化させることで、社会の現状を露呈させた。

このように、2組ともこの状況に屈することなく、社会に問題提起しながら、アートの可能性に挑戦し続けているのだ。



「アウト」と言われてしまった作品を中心に彼らの活動と想いに迫る

では、なぜ、彼らはこのような状況においてもなお、アートで社会に反応し続けるのだろうか。
彼らが考えるアートの力とは、一体何なのか。

1月16日、そうしたテーマについて岡本光博さん、chim↑pomを代表し稲岡求さん、そして聞き手に法律家の視点からアーティストを支援する作田知樹さんがトークイベントに登壇する。イベントでは、実際に「アウト」と言われてしまった作品を中心に、彼らの活動と想いに迫る。また、作田さんがアーティストをサポートするうえで直面する問題を紹介することで、アートを取り巻く状況を洗い出し、アートと社会の関係、そして社会の現状を考えていくという。

岡本さん、chim↑pomの活動を通じ、社会におけるアート役割を今一度問い直し、いかにしてアートを前進させることができるのかを考える機会となりそうだ。




chim↑pom 作品

SUPER RAT
2006年 捕獲したネズミの剥製
「スーパーラット」とは、殺鼠剤などの毒への耐性を遺伝化させながら、都市圏で爆発的に増えているネズミの通称であり、ネズミ駆除業者による造語である。Chim↑Pomは、スーパーラットを網で捕獲し、その剥製をアニメ「ポケットモンスター」のキャラクター「ピカチュウ」に模して黄色く着色し、捕獲映像とともに展示した。都市のなかで自らを生きいきと進化させ、人間との共存を続けるスーパーラットたちに見出したのは、自分たち自身の肖像であり、放射線汚染後を生きる日本人の姿だった。



気合い100連発
2011年 ビデオ
2011年5月、福島県相馬市で知り合った若者たちと、 100連発の気合いを入れた様子を収めた映像作品。相馬市は東日本大震災の被災地であり、家を流され、大事な人を失った彼らは、放射能の恐怖のなか、壊滅した街で約2ヶ月間を過ごしていた。報道が集中した被災地と違って、外からのボランティア不足が続いていたが、福島第一原発が近いことも影響していたのだろう。被災者でありながら、自ら救援活動や復興作業にもずっと携わってきた彼らによるリアルな叫びは、すべてアドリブ、一発撮りで収録された。



LEVEL 7 feat.『明日の神話』
REAL TIMES 2011年ビデオ (11分11秒)
渋谷駅にある岡本太郎の壁画《明日の神話》右下にある隙間に、原発事故を描いた絵をゲリラ設置したプロジェクト。原子炉建屋からドクロ型の黒い煙が上がる様子を壁画と同じタッチで紙に描き、それを塩ビ板に貼ったものを、連続した壁画の一部として自然に見えるように設置した。通行人が撮影した画像がネット上で拡散され、匿名の行為として議論を巻き起こす。個展「REAL TIMES」にて、作品として発表。



REAL TIMES
REAL TIMES 2011年ビデオ (11分11秒)
〈3.11〉から1ヶ月後の4月11日、原発事故によって無人の街となった警戒区域に入り込み、福島第一原発から約700メートルにある東京電力敷地内展望台に登頂した。東京電力発表の放射線量は、199マイクロシーベルト/毎時。正門付近に車を停めて、片道約20分のトレッキングで向かう。初日の出のスポットとしてPRされていた展望台からは、白煙を上げる4号機建屋と、大量の汚染水が流れ出た太平洋が見えた。そして、展望台で広げた白旗に赤いスプレーで日の丸を描き、それを放射能マークへと改変。月面やエベレストなど「到達困難」な場所での慣例に倣い、その旗を掲げた。タイトルは、「まさに、いま」という意味の「リアル・タイム」、映画「モダン・タイムス」よろしく「リアルな時代」、そしてニューヨーク・タイムズなどのメディアをもじり、警戒区域内での報道が皆無だった当時の状況に対して、「現実の報道」という3つの意味を併せ持たせた。



▼開催概要

chim↑pom10周年&『ディズニー美術』(KUNST ARZT)刊行記念企画
岡本光博 × chim↑pom 稲岡求 × 作田知樹
アウトを言い渡されたアート
―社会に切り込むアーティストたち。アートを前進させるには。


日程:2016年1月16日 (土)
時間:18:00~20:00
開場:17:30~
料金:1,944円(税込)
定員:110名様
会場:本店 大教室
詳細:http://www.aoyamabc.jp/culture/outart/

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