【グッドデザインってなんだろう?】G展に行ってきた

文化の日に授業って、文化を軽視してるのか、それとも「文化は特別なことじゃない。日常だ」という美大としての宣言なのか迷うところの手羽です。

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金曜日にグッドデザイン展へ行ってきたのでそのレポートを。

グッドデザインエキシビション2015(G展)
●会場: 東京ミッドタウン内各所
●会期:2015年10月30日(金)-11月4日(水)
●時間:
 10月30日(金): 13:00-20:00
 10月31日(土)-11月3日(火・祝): 11:00-20:00
 11月4日(水): 11:00-17:30
●入場料:1000円(一部入場料不要のエリアあり)


グッドデザイン展は明日までですが最終日は終了が5時半までだし、今日が一番混むんじゃないかしら。
あ、会期中はミッドタウンタワーのエレベータがすごく混むので、上位階で待ち合わせしてる人はいつもより5分ぐらい早めに行動した方がいいっすよ。

今年のビジュアルテーマは「赤いカード」です。


G展は大きく分けて4つのエリアに分かれており、

まずはメイン会場である地下1階のホール。
大型のものが展示されてるし、ステージもあり、見ごたえがあります。

2つめは1階や地下1階アトリウムなどのフリースペース。
車などが展示されてますね。

3つ目は4階で、小さめの家電や雑貨、パッケージなど実物系が豊富に展示されてます。
 

んで4つ目はがデザイン・ラウンジのある5階デザインハブ。建築系のパネルが中心に設置されてて、うーん、見どころとしては一番弱いかも(言ってしまった)
デザイン・ラウンジでは、偶然たまたま会期がかぶってしまった「グッドなデザイン・ラウンジ」やってますんで。今日はラナエクストラクティブさんによるワークショップですよ。

 
ところで。

「グッドデザイン賞」と聞くと、何をイメージしますか?

オサレな雑貨や家電?
はい、それも間違いではないと思います。

3658件中1337件が受賞する、実は思ってるより採択されるのが簡単な賞?
はい。そういう見方もできるかもしれません。

今日は手羽的視点で「グッドデザイン展」を紹介していきます。
 

やはり、グッドデザインというと真っ先に思い浮かぶのが「かっこいいプロダクト製品」でしょうね。私もグッドデザイン展を見に行くようになるまで、そういうものばかり展示されてるもんだと思ってました。素人は行っちゃいけないような、オサレなデザイナーさんだけがいく展覧会。

「でもね」という話です。
  

例えばこれ。
鳥のようなユーモラスな外観にどうしても目がいってしまいますが、これはプラスチック製の「中身が見える」消火器なんですね。審査コメントを見ると外観のことも少し触れてますが、
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持ってみると確かに軽く、女性やお年寄りにも扱いやすいものとなっていると感じた。「持つ」と「握る」という2つの役割を求められていた従来の二股レバーは造形的に一体化され、グリップとしての機能性を明確にしたことで、迷いの無い操作性を実現している
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と、いわゆるかわいい「ガワ」のデザインがグッドデザイン受賞のポイントではないことがはっきりと書かれてます。
 


これはなんだと思いますか?
実は、お子供さんを亡くしたご両親のための分骨用骨壷なんです。
子どもへの愛おしいさを表現した「デザイン」に私はジーンときました。

ピアノシューズもそうですが、ニーズは少ないかもしれないけど必要な人には「もっと洗練されたものがほしい」と思うのは必然であり、それをかなえたことにたいしての「デザイン」がグッドだったと。


これは「パッケージがグッドデザイン」ではなく、「アロマ感覚で使うことができる虫除け線香」「ユーザーの利用シーンが拡がる」点がグッドデザイン。つまり「香りの使い方がグッドデザイン」というわけなのです。

なんとなくわかってきましたかね?
 


スタンプ知育玩具。
これをシャチハタさんが出してるところがポイントじゃないかと。
 


これも受賞企業が「東京国立博物館」なのがポイントかもしれません。
はにゃーーー。
 


これなんかは、日本パッケージクラフト協会さんが取り組んでいる「市販されている商品の空箱を使った紙工作遊び」がグッドデザインを獲ってるんです。
 

これも展示品がスケッチブックだから「スケッチブックがグッドデザイン」と思われるかもしれませんが、彫刻の森美術館とマルマン株式会社さんがやってる教育普及プログラムがグッドデザインであり、
教育普及プログラム [森のスケッチブック-彫刻の森美術館でのスケッチ体験-]
所蔵作品と来館者を繋ぐツールとして、「図案スケッチブックOne Day彫刻の森美術館ver.」がアウトプットされたと。


手羽が今回一番感心したのはこれですね。
トレイ上のパンをカメラで撮影して、その個数と種類を一括識別する装置なんです。

開発の背景が面白いんですよ。引用させてもらいます。
・ベーカリーショップで実験した結果、30種類より100種類程の品揃えの方が単位面積の売上高は約50%上がった。
・裸のパンと包装パンでは、裸のパンの方が売上は3倍になった。
・パンには直接バーコードを付加できない。故に店員は品名と価格を記憶する必要があるため、精算に時間がかかり、店員の教育に多くのコストがかかっている。

これらのデータをクリアするために作られたそうです。
ムサビのパン屋・エミュウにも入るといいですね。


手羽がG展へ行くようになってかれこれ10年ぐらいになるんですが、「この数年で増えたなあ」と感じるものが2つあります。

気のせいかもしれないのだけど、「医療・介護系」です。

義手もそうですが、


糖尿病患者さんが針が触れることなく自己注射を打てる注射、


少し毛色は違いますが、救急救命士さんのために手を使わず素早く簡単に着脱できるよう開発された安全靴。


これも「医療」というにはアレですが、「実感を伴った理解」という目標を達成するため、プラスチック製人体模型ではできなかった臓器の柔らかさを表現した模型です。柔らかさや腸を引っ張り出すと3.8m(成人の二分の一縮尺)もある驚きを体感できるというわけです。
 


こちらは金賞候補になってる電動車いす。

こういう歩行支援系も以前はなかったものです。


「以前より増えたなー」と感じるもうひとつは、コミュニティデザインやソーシャルデザイン系です。
もっと書くなら「地域振興デザイン」かな?




こちらもその一つと考えられます。


「って、そもそもデザインってなんなんよ?!」と感じるかもしれません。
わかりやすい言葉がグッドデザインのサイトにありますので、その文章を(ちょっと長めに)引用させていただきます。
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グッドデザイン賞が考える「デザイン」
世の中では様々な意味合いでデザインという言葉が用いられており、「デザイン」という言葉の解釈は人によって違います。ですが、その多くは

1.名詞としてのデザイン(物事のかたち、アピアランス)
2.動詞としてのデザイン(新たな物事を考え生み出すという行為)

へと集約されるといえます。グッドデザイン賞では、デザインという言葉を特に「2」の動詞として考え、「デザイン」は我々の生活をより豊かにするための「終わりのない継続的な創造的思考活動」と定義します。
デザインを「活動・行為」として見た時、そこに求められるものは「思想や理念」であり、新しく生み出された物事はその「ひとつの解」として位置付けられます。グッドデザイン賞においては「そのひとつの解が目的に対して適切であるか?」ということも問いますが、その解を導き出すにあたり込められた思想や理念、またその解を導き出すまでの方法論にも重きを置き、「今後の社会において創造の連鎖を導くものであるか?」ということも同時に問います。この点がグッドデザイン賞の大きな特徴です。
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産学連携の担当してて、一番多いのが「ロゴのデザインだけしてほしい」「イラストを描いてほしい」という依頼です。大げさではなく平均値で見たら週1ぐらいでお話があります。
「もちろんそれもできなくはないですが、『なぜロゴが必要なのか?』『そこに絵が必要なのか?』『色を変える必要があるのか』を含めて考えるブランディングデザインから取り組むことはできないですか?そうすれば教育研究にもっていけるんですけど」と答えると「????」という顔を先方は必ずされます。つまり、「動詞のデザイン」という発想が一般の方は弱いということですね。

それが「デザイン教育」「美大の学び」ということを知らない方が多く、一般の方や企業の方のデザインリテラシーをもっと高めたいなー、、というのがこの数年の手羽の想いだったりします。



以上、

こんなの作ってるやつにデザインリテラシーがどうとか言われたくないよね、の手羽がお送りいたしました。
もうね。何がアウトでセーフなのかわからなくなってて(えっ)

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。