芸術の都はパリだけじゃない!!美大生必見!フランスの地方都市ナントとは?

はじめまして。精華大学日本画科卒のわだもえです。私は3年前からフランスに住んでいて、作家活動をしながらデザイン学校に通っています。こんな風に自己紹介すると、必ずこう聞き返されます。「え、パリに住んでるの?!」フランスといえば、もちろんパリ。美しい町並み、ロマンチックな情景が似合う街、それが巴里。エッフェルタワー、フランス映画、パリコレ、おしゃれなカフェetc… 死ぬまでに絶対に行ってみたい!!って思ってる人結構居るんじゃないでしょうか。確かにパリは憧れの街ですが、私はパリに住んでいる訳ではありません。私が住んでいるのは、パリよりも小さくて静かで、しかし世界有数の一大アートプロジェクトで町おこしに成功した都市です。 美大生もしくは美大を卒業した方必見!あなたは、ナントという都市を知っていますか?

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フランスならやっぱりパリ?

フランスの首都、そして芸術の都、パリ。
この街は、世界で一番多くの観光客が訪れる街です。今年ももちろん観光客数世界No.1、ヨーロッパ随一の大都市であり、たくさんの外国人が住むメトロポリタンシティです。

もっとも美術を学ぶ者ならば、人生で一度は訪れたい場所でもあります。
ポンピドゥーはいつでも最先端の現代美術がお目にかかれるし、ルーブル美術館なら言わずもがなダヴィンチにドラクロワにミケランジェロ、オルセー美術館ならルノワール、セザンヌにゴッホの絵が見れる。

しかし私はナントという地方都市に住んでいます。奈良の旧称:南都と同じ名前のナント。
高校で世界史Bを取っていた方ならチラっと聞いた事のある名前かもしれません。
「ナントの勅令」、この単語覚えていますか?
そう、それと同じナントです。



新たな芸術都市、ナントとは?


  • ©Franc Tomp/LVAN

ナントはフランス北西にある都市です。パリシャルルドゴール駅から出ている特急列車•TGVでも約2時間で行けますし、飛行機なら約30分です。
交通機関も充実していて治安も悪くありません。それゆえに旅行もしやすく、フランスで住みやすい街ランキングとヨーロッパで住みやすい街ランキングの両方で1位を獲得した事のある街でもあります。
ガレットやビスケットが名物で、中心街には大きなお城•ブルターニュ公爵城がある美しい街です。

そして実はこのナントという街、芸術文化によって大きな成功を収めた都市として有名です。


毎年この街にはたくさんの観光客で溢れ還りますが、ほとんどがヨーロッパから来た方達であり、アジアでの知名度はまだまだありません。(それでも中国からの観光客はじわじわと増えています。)

ナントはここ10年で文化都市として有名になりました。それゆえ知名度が未だに低い街ですが、これから有名になっていくのは間違いありません。なぜなら毎年様々なアートの催しが休み無く開催されており、注目を集めているからです。

去年はブルターニュ公爵城にてサムライ展が開催され、現代美術家•会田誠氏の作品展示も相まって大変話題になりました。

ナントは歴史ある街ですが、先ほどにも書いた通り“アートの街”として有名になったのはつい最近のことです。
かつて工業や貿易で有名だったナントは、これらの産業が衰退した後にかつての
活気を取り戻す策として芸術文化に力を入れはじめました。


  • この機会仕掛けの象もその一環として制作されたものです。フランスのパフォーマンス集団:ラ•マシンが制作しました。こんな大きくて素敵な象さん(乗れます!)が歩き回ったりします。

  • こちらは仏中友好50周年記念として制作された竜馬(麒麟?)です。普段は北京に居ますが、今年は特別に来仏し、ナントを練り歩きました。

  • 出典:© Franck Tomps / LVAN
  • 『STELLER』 こんなダイナミックなインスタレーションがナントの街中や郊外に設置されます。

退屈させない、街ぐるみの芸術祭

そしてこの街が観光客招致に成功した最も大きな理由はある一つのアートイベント、その名もLE VOYAGE À NANTE(ル•ボヤージュ•ア•ナント)です。

LE VOYAGE À NANTE(ル•ボヤージュ•ア•ナント)は、街を上げての一大プロジェクトであり、2012年から毎年夏に開催されています。 このアートイベントに関わったアーティストやデザイナー達は、すべて現代美術やデザインの最前線に居る人達で、設置された作品はとにかく圧倒的迫力を持つものばかりです。

『le nit』
こんなかわいいコンセプトバー“Le nit”(ル•ニ)も、一昨年から開かれました。



このアートイベントの大きな目的はで観光客を呼ぶこと、そして“本物の芸術”に触れる機会を作ることです。
”芸術は難しくて変なもの”。そう思ってる方はフランスにもたくさん居ますが、ナントボヤージュで展示されてる作品は、考えるよりもまず、“面白い!”と思わせるようなものばかりです。その面白さに圧倒されるような作品も多く、故に普段美術館に行かないような人たちも楽しめるものばかりです。

また今年は「コンセプトバー」ならぬ「コンセプトパーク」が数々設置されました。


  • 出典:© Franck Tomps / LVAN
  • 『On va marcher sur la lune』 月面を模した遊び場で、後ろに吊るされた地球が見えます。

このアートプロジェクトは大人から子供まで誰でも楽しめるものとなっております。
なぜならフランスは出生率が高く、とても子供が多い国です。また移民を幅広く受け入れている国でもあるので、誰でも一丸となって楽しめる機会を設けることは、とても重要なことなのです。



また、招致されるアーティストは現代美術の最前線で活躍している人たちばかりです。
その新鮮さ、目を剥くような大胆さはナントボヤージュが大きな成功を収めた要因の一つとも言えるでしょう。
多くの作品はバーやレストランが集まっている場所の近くに展示されており、ル•ボヤージュ•ア•ナントの期間中は展示作品のすぐ側で食事やお茶が楽しめます。
美術館よりも刺激的で、子供が思う存分はしゃげるし、親も退屈しない場所。
若い人たちにとってはデートやおしゃべりしやすいオシャレな、年配の方には孫を連れ回す言い訳に出来る所。
誰でもが退屈せずに、芸術を楽しめる場所として計算されつくしたアートプロジェクト、それがル•ボヤージュ•ア•ナントです。



実はこのアートイベント、日本人作家も参加しています。


  • ギャラリーHUBでの展覧会『SOLO GROUP SHOW』より 出典:http://www.nantes.fr/home.html

これはTaturo Atzu氏の作品。Taturo Atzuという名前はTatzu Nishi氏が数多く持つアーティスト名の一つで、今回ギャラリーHUBでの展示は”彼ら”のグループエキシビジョンです。
Tatzu Nishi氏はドイツを拠点に活躍する日本人アーティストで、ル•ボヤージュ•ア•ナントが始まる前からナント市に招致され、定期的に展示を行っているアーティストです。
“日常性”をアートで見せるという彼の手法はとてもユニークで、多くの人の目を惹きます。

地域に根付きながら、最新の芸術を楽しめるイベントはそうそうありません。
もしも刺激的な芸術体験に飢えてるなら、一度ナントに行ってみてはどうでしょうか。
パリとはひと味もふた味も違うフランスを楽しめるはずです!


このイベントは残念ながら夏限定ですが、他の季節でも様々な催しがあります。
2016年も開催予定らしいので、来年あたりフランスに行こうかなと考えている方はナントにも是非来てみてください!



執筆:和田萌恵

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STUDENT WRITER

わだもえ / WADA MOE

フランスのナント在住。京都精華大学日本画科出身。画家、イラストレータ、デザイナー。趣味は旅行。色んな国に行ってます。