ムサビ芸祭史上最大の音楽フェス「オトトヒト」!代表×副代表の直前対談!

武蔵野美術大学の芸術祭で30年以上続いていたステージ企画が昨年度なくなってしまったことは、記憶に新しい。 その危機を乗り越えるべく、一般団体として大型ステージ企画を立案・運営するに至った音楽イベント企画集団『音めがね』。 今回は、その『音めがね』代表・副代表へのインタビューをご紹介します。

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ムロタマユ

東京都出身の興行師。武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科4年。音楽イベント企画集団『音めがね』代表。2013年春・大学内で講演とライヴのイベントを行うべく、『音めがね』を発足し、ヤマザキマリ&とり・みきなど数々の著名アーティストを招致。学外でも『ぐるぐる回る』『廃病院パーティー』などのインディーロックフェスや、ロンドン発祥の『Sofar Sounds Tokyo』など特異なライヴイベントで活躍中。お酒をよく飲み、よく喋る。

田島歩

群馬県出身。武蔵野美術大学造形学部建築学科4年。音楽イベント企画集団『音めがね』の発足に関わり、現在に至る。「オトトヒト」では主に装飾を担当。学外ではオールガールズ劇団『滑走旅団』で脚本・演出・役者など幅広く活動。歌って踊って芝居する。食べ物はなんでも美味しいと感じるのが自慢。

——いつから美大でフェスをやりたい、と思っていましたか?

ムロタ:元々は2012年、私たちが1年生のときに芸術祭執行部の企画部ステージ班に所属していたのが始まりです。当時の野外ステージは、無料で観られる代わりに、出演者から参加費を徴収するシステムが恒例だったんですよ。その出演者は学内外からの公募で。ライヴハウスのレンタル料みたいな……本当のゲストは1日1組だけ。それを初めて知った時にすごく違和感があって。簡単に言えば、黒いな、と(笑)。

田島:その割に、野外ステージの周りって人来なかったんですよ……ゲスト以外の時間に。

ムロタ:そうなんだよね。いろんな美大生に観てもらえるって期待されて、お金をいただいてるのに、広報が下手なのと、ステージの場所が導線から少しずれてるから……。あれは本当にいたたまれない。しかもそれが毎年だってことを、後から知ったっていう。だから、お客さんがちゃんと付加価値にお金を払うイベントに、ゆくゆくはしたいなって思っていて。やっぱり人って、お金出して観たほうがちゃんと観ると思う。イベントやってるとライヴにご招待いただくなんてこともあるけど、お金払ってるときと違うんだよ……集中力とか。

田島:そういう意味では今回の芸祭での音楽フェス「オトトヒト」は、ちゃんと観ようって人がたくさんいてくれるかもって思う。

ムロタ:2012年の自分たちとの約束を今、果たしてる最中なんです。

——そもそも企画部に入る前からもうステージのことだけ考えてたんですか?

ムロタ:いや、特に……春にふと「そういや学園祭って、大抵ステージあるよなあ」って。で、気づいたら一人で執行部の扉を叩いてた。

田島:マユさん、ミュージシャンの知り合いとか結構いたよね。

ムロタ:いや、当時はさほど。でも友達がアーティストと友達、とかはあったな。で、そういうツテとかが活きるんじゃないかなって思って入部して、呼んだのが、チャラン・ポ・ランタンでした。今でこそNHKとかフジロックとか出てるけど、同時はまだちっちゃいイベントに出てるような感じで。あとはちょっと繋がりがあったHARCOさんに、HARCO+カジヒデキ+河野丈洋(ex.GOING UNDER GROUND)という限定ユニットで来てもらうことになったんですけど、結果、すごく豪華になって。ライヴ音源がCD化されて、執行部も私たちの名前もクレジットされました。いい思い出です。



出典:https://www.youtube.com/watch?v=rJI0DIXrMiE

——その時のことが、HARCOさんに『オトトヒト』のオリジナルSEを書き下ろしてもらうことに繋がるんですね。

ムロタ:そもそもの話として、2012年に一緒にやってた油絵の先輩が突然『中野テルヲ(ex.P-MODEL)にSEを書き下ろしてもらいたい!』って息巻いて執行部内で交渉し、成立したのが、オリジナルSEの始まりなんです。思えばあの無茶苦茶な発想力って、ファインっぽい(笑)そのお願い、大それすぎてない?ってふつうは思っちゃうよね。

田島:でも結局、そのSEが芸祭全体のテーマ曲みたいになって、いろんなところで使われたりしたんですよ。

ムロタ:そう、契約以上の仕事になっちゃったのに、快諾して下さって……。まあ、そんな前例ができたので、次にステージ作る時も、過去に出演してもらった人に書き下ろしてもらいたいね、って話にはなっていて。それでHARCOさんにお願いしようと。

田島:今回果たせてよかったですよね。いや、実際よかったし、『オトトヒト』って名前と、HARCOさんの感じがすごく合ってた。

ムロタ:もはやHARCOさんがSE書き下ろすっていう前提ありきで考えた名前でもあったし。3年越しの夢……。来年もし『オトトヒト』がまたできるとしたら、寺田創一さんとか、お願いしてほしい。

田島:わー聴きたい!けれど、本当に夢みたいですよね、今こうやって企画できてるのって。今年は執行部とも仲良くやっていて、みんないい人たちばっかりだし。

ムロタ:ほんとだよ!今年の人たちは、2014年まではテーマがキャラものでいってたけど、今年からはキャラとかはやめて違う感じで行きます、みたいなこと実践してるのも頑張ってると思う。

田島:執行部も、ステージがなくなった去年からちょっとずつ軌道修正してるというか、変わってきてるのかもしれませんね。

——ところで、アーティストってどうやって呼んでるんですか?


田島:清 竜人25とかペトロールズとかどうやって?って、よく友達に聞かれる。

ムロタ:ただメールしただけなんだけどね。じゃあどんなメールテクが?っていうと、別に誰に習ったわけでもないし、それこそオファーメールの書き方とか、ギャラの相場なんて検索しても出てこないし。まあコミュニケーションだし、くらいのメールを書いて出してます。

田島:そうだよね、だから「ふつうにオファー出してたよ」って答えるんですけどね。

ムロタ:ツテがないと呼べないとか、全然そんなことなくて、条件が揃っていればちゃんと話聞いてくれるし引き受けて下さいますよ、みなさんお仕事ですから。

田島:や、でも実際、一介の大学生で、よくわかってなくて変なメール出しちゃうところとかもある、なんて話も聞くじゃないですか。多分、最低限ちゃんとしてたんじゃないですか、企画書とか。

ムロタ:ああ、ギャランティは一番最初に提示する、みたいなのとかかな。ギャラの話をしにくいって思っちゃうのは、まあわかるんだけど、でも、例えば給料のわからないバイトなんて、みんなやらないよね?っていう。まあそういう、相手にとって必要な情報を伝える、というのは、少しは見えている方だとは思います。

——オファーをする上で失敗したことは?

ムロタ:多々ありますよ、言葉足らずで伝達ができてなかったり、対応が後手後手になったりとか……。まだまだ自分の至らなさを痛感することだらけです。

田島:例えばアーティストが特殊な編成だったりすると、打ち合わせを密にやらなくちゃいけないから、ふつう以上にいろんなひとに気を遣ったりするぶん応対が丁寧だったりとか、そういうこともあるでしょうね。そういうきめ細かい感覚とかが、パフォーマンスの熱気に繋がってたりとかもしそうですね。

ムロタ:かもしれないね。だから、私たちは「先方はタマビとムサビの違いもよくわかってない」くらいの前提で、些細なことも的確に伝えられないといけない。私も昔、区別ついてなかったもんなあ、タマビとムサビ(笑)。それにしても最初のころとか、オファーメール出したあとにマネージャーさんに「入り時間は何時ですか?」って言われて、私、『入り時間』って日本語がわからなかった!

田島:そこから(笑)。

ムロタ:で、結局日本語はわかったけど、準備にどのくらかかるか見当がつかないから、いつ頃がいいですか、って聞き返した(笑)でも聞いてよかったのかも。こうやってアーティストさんにいろいろと教えてもらいながら進めることができるのは、大学生ならではなのかなって。すみません、甘えさせてもらってます。

——『オトトヒト』は、日によって個性が出てるラインナップですが、これは狙ってたんですか?


ムロタ:いや、全く。土曜のつもりが月曜に、日曜のつもりが土曜に、とか、どんどん予想外になって……清 竜人25とOmodakaとクリトリック・リスと榊いずみの対バンなんて多分、今後一生観られない組み合わせ(笑)。

田島:でも、どの日もかなり面白いですよね。

ムロタ:ムサビの軽音サークルはもう日曜日アツい!って。ペトロールズとトリプルファイヤーと、あとムサビ卒業生のよだまりえからバスクのスポーツ、BOMBORIの流れ。先輩たちの人気は、やっぱりすごいから。あと、Vampilliaは今、最も美大生が観るべきバンド。真部脩一(ex. 相対性理論)さんが参加してるって時点で明らかに新しい匂いしかしない。とはいえ、月曜日は特にライヴこそ本領!みたいなパフォーマンスの人たちが大集合しちゃったから、割とメディアでの情報が少なくて。VampilliaってCHRISTIAN DADAのランウェイライヴやった人たちだよ、とか言っても、じゃあそれでどういいのか、みたいな話は結局、体感してもらわないと伝えられない。でも、観た人は、100%ショック受けるってのだけは約束できます。
Vampilliaも笹口騒音もオーケストラだし、ゲスバンドなんてツインドラムでトリプルギターになって、そんなのCDよりライヴが最高に決まってるじゃん。で、そこになぜか『ワンピース』『笑ゥせぇるすまん』の田中公平先生がいる、という(笑)。

田島:アーティストの方が、なにより田中公平先生との対バンを一番喜んでるんじゃないかって感じしましたよね(笑)。あれ、うれしかった!

ムロタ:これも偶然なんだけどね。そういうの、おもしろいよね。

——大学生活で企画をやり続けてきたおふたりですが、キュレーターの醍醐味について聞かせてください。


田島:先日、清 竜人25のこと好きだって友達に『オトトヒト』のこと勧めたら、「チケット買うよ。、他にもいい音楽との出会いとかありそうだし」って言ってくれたのが超うれしくて。

ムロタ:わー!めちゃくちゃうれしい、それ!

田島:絶対いい出会いあるよ。約束します!

ムロタ:Twitterとかでもそういう風に言ってくれる人とかちょいちょい見かけるんだけどね、もう、
毎日リツイートしたい。ありがとうございます。

田島:そういうのいいですよねー。

ムロタ:むしろそのためにやってるもんね。そういうので忘れられないエピソードが、2012年の時、芸祭の片付けをしていたら、掃除のおじさんが話しかけてきて「昨日の夜のステージ、たまたま通りかかったんだけど……よかったねえ!ラップっていうの?軽快で。ああいうの、楽しくなっちゃうね。またやってよ!」なんてその時出演してくださっていたイルリメさんの感想言ってくれて。もう、思い出すだけで今でも涙出るよ。

田島:それ!本当、うれしかった!

ムロタ:ご年配の方とかにこそ、ライヴって観てもらいたいなあ。駐輪場でいつもはたらいてくれてるおじさんたちとか来ないかな(笑)。椅子も用意しておくんで。

——最後にひとことお願いします。

田島:装飾のこと全然話せなかったですが、今、毎日放課後残ってずっと絵描いてたりして作ってるので、そこもぜひ、楽しみにしていて欲しいです。入学して、今が一番美大っぽいことやってるような気がします(笑)

ムロタ:美術館へなんとなく知らないアーティストの作品を観に美術館に行く、のと同じように、なんとなく知らないから観に行ってみようっていうノリで「オトトヒト」に来てくれたら嬉しいです。そこでの出会いを、10年後くらいにしみじみ思い出してもらえるような。そういうイベントになったら、本望です。

熱いトークが繰り広げられ、その熱量には終始圧巻でした。
来週末に控えた武蔵野美術大学の芸術祭音楽フェスイベント『オトトヒト』、これは見逃せない予感・・・。
チケットの購入やアーティスト情報など、クオリティの高いサイトも要チェック!!!

公式サイト
http://www.otomegane.com/


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STUDENT WRITER

manami / manami

社会とアートをつなぐことを目標に日々奮闘中。