アートも好き、英語も好き。たどり着いたのは「アート×翻訳」

日英翻訳にも色々な仕事がありますが、アートと英語に興味があった四大卒業生である私。ひょんなことから新卒で海外へ飛び立ち、ドイツ・ベルリンでフリーランスのアート専門の翻訳家として活動することになりました。その経緯と、アート翻訳の難しさ、その面白さをご紹介します。

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アートのバックグラウンドなし。それでも始めてみた「アート翻訳」

はじめまして、アート翻訳家のwasabiです。私は現在アートが盛んなことで有名なドイツの都市、ベルリンに住んでいます。普段は自身のブログ「WSBI」でベルリンのアート関連情報を始め、フリーランサーとしての日常や移住情報を毎日更新する傍ら、私とパートナーで立ち上げたアート翻訳グループ、「Calico Translations」でアート関連の翻訳をしています。私自身は普通の四年制大学の外国語学部を卒業した、ただの「英語とアートが好きな人」であって、アートを専門的に勉強したわけではありませんし、アートと英語がどのように結びつけられるか等、考えた事もありませんでした。しかし、とある小さなきっかけから「アート×翻訳」というキーワードを見つける事ができたのです。


「アート翻訳」では実際に何を翻訳するのか? 

私達が専門としているのは主に「アーティスト・ステートメント」の翻訳です。海外での展示はもちろん、最近は日本国内だけの展示だとしても英語の翻訳は必要不可欠になってきています。最初にこの事に気づかせてくれたのは東京造形大学に通う友人から、彼女のステートメント翻訳を頼まれた事がきっかけでした。そこから彼女の友達や、もともと知り合いが多かった音楽やイベント関係の友人へと口コミで広がっていき、定期的に仕事が来るようになったのです。最近はアーティスト・ステートメントの翻訳以外にも、映像作品内の翻訳、海外のアーティスト・イン・レジデンスに応募したいアーティストに向けた英語のカバーレター代筆、日本に脚本を売り込みたい海外の役者から頼まれる脚本翻訳等、仕事の幅も広がってきています。



アート翻訳の難しさと面白さ

基本的には日本語のステートメントを英語へと翻訳することが多いのですが、日本語と英語の考え方の違いが面白いのと同時に、そこは頭を悩ませる部分でもあります。日本語のステートメントは「詩」のように、それ自体がアートなのではないかと思う程繊細な文体や言い回し、悪く言えば曖昧な表現で書かれているものも多くあります。一方、英語のステートメントでは主語をはっきりさせ、自分の「思い」よりも「主張」をはっきりと書くのが主流。日本語から英語に翻訳する際はなるべくアーティストの伝えたいオリジナルのニュアンスを壊さないよう、でも読者に伝わるようにできるだけはっきりと「主張」が見えるような英文に訳すことを心がけています。ステートメントを翻訳していて一番難しいのは、英文を考える事よりもむしろ日本語で書かれたステートメントのその詩的な表現の裏側にあるアーティストの考え方や空気感をとらえ、それをどのように英語という良くも悪くもはっきりとした構造の言語に置き換えるかに尽きますが、これが上手くできたときはとても気持ちが良いです!


  • 私たちが制作した作品

  • 私たちが制作した作品


言語と非言語アートの関係を探る私の今とこれから

作品にもよりますが、基本的にアーティスト・ステートメントというものは作品展示の際にアーティストが不在のときに代わりに作品の説明をしてくれる、作品の理解のために大変重要な存在です。ステートメントとは、言い換えれば絵画などの「非言語」で表現された媒体を、ステートメントという「言語」によって理解を補助する形で表現する代弁者と言えます。
だからこそ、Calico Translationsでは翻訳家として日々勉強するだけではなく、自分たちでもアート活動をしながらアーティストの目線を忘れないように心がけています。パートナーであるHiroは日本語も英語もネイティブであるダブルという生い立ちやアメリカの大学でアートを専攻してきたバックグラウンドを活かして、翻訳に携わりながら自身のステッカー制作にも力をいれています。私も「言語と自由」をテーマにしたZINEの制作や、映像作品の共同制作など様々なメディアを使ってアートと言語の関係を探っている日々です。今後もPARTNER上でアートと翻訳について、そしてベルリンのアートシーンについても執筆予定ですので、是非チェックしてもらえたら光栄です。


→Calico Translations http://calicotranslations.com/
→ブログWSBI http://wsbi.net/

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OTONA WRITER

wasabi / wasabi

ベルリンでフリーランスの翻訳家・ライターとしてアーティスト・ステートメントの日英翻訳や移住情報の発信をしています。現地のアート情報や空気感が伝わる文章を発信していきます。掲載媒体はブログ「WSBI」、ドイツ大使館公式ブログ「YOUNG GERMANY」、外国人向けの日本文化情報サイト「Tadaima Japan」他。