インドネシアの京都!文化がアート!ジョグジャカルタの芸術とは

伝統的なジャワ美術の中心地、ジョグジャカルタに行ってきました! インドネシアの古都として知られるこの町には、世界最大の仏教遺跡の一つであるボロブドゥールをはじめとした 芸術性に富んだ世界遺産たちが今も鮮やかに生き続けていました。

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ジョグジャカルタってどんなところ?
インドネシアの伝統的なジャワ美術の中心地、ジョグジャカルタ。
バリ島の横、ジャワ島東部に位置しており、オランダからの独立時に臨時の首都だったこともあります。
ジョグジャカルタとはジャワ語で「平和の町」という意味を持ち、現在も王様(スルタン)が王宮に住みながら州知事としての地位を保っている特殊な街です。
近隣には美しいメラピ山とメルバブ山がそびえており、豊かな土壌と雄大な自然に囲まれています。
仏教、ビンドゥー教の衰退、そして今では9割がイスラム教徒という様々な文化と価値観が入り混じっており、「ジャム・カレット」(ゴムのような時間)と言われる、の~んびりとした時間が流れている古都です。


  • 左)遺跡内はもちろんノンスモーキング   右)シヴァ(破壊神)・リンガ

見事なレリーフが咲き誇るプランバナン遺跡(世界遺産)
旅行初日にむかったのは8世紀から9世紀にかけて作られた、インドネシア最大のヒンドゥー教遺跡。(別名ロロジョングラン)
空港から少し車を走らせた街中に突如現れた6つの尖塔!雲の無い日差しの中に尖塔がそびえています。
プランバナンの遺跡群は、メラピ山などから流れ出た火山岩で造られておりレンガ程の大きさにしたものを積み上げ、その後彫刻を施したものと言われています。少しくすんだ灰色をしていますが、日の当たり具合によって白っぽくなったり、陰では少し赤茶が混じったような色に変化して見えます。

この塔の上に釣鐘のようなものが沢山乗っているのが分かるでしょうか?
これは、男性のシンボルマークをかたどったものと考えられており、シヴァ(破壊神)・リンガといいます。
そのシンプルなシンボルとは対照的に、壁面は細緻なレリーフで埋め尽くされています。このレリーフ達は、インドの有名な叙事詩である「ラーマヤナ」の物語について書かれています。
レリーフの彫りがとても深く、彫刻のように見えます。曲線を多く使い、どこかユーモラスにも見えますね。 物語性を持ち、どこまでも続くレリーフはまさに圧巻です。


  • 踊る天女

  • 獅子の神シンハーと願いを叶えるカルパタルの木

  • アガスティア像

  • 肌の露出をひかえる腰巻き(サロン)の着用が必要

一部、像の入っていない塔もありますが、塔の中は天井が高くひんやりとしており、シヴァやヴィシュヌ、ブラフマー、アガスティアなどの神々や神の乗り物であるナンディ(牛)といった様々な像が祀られていました。
ヒンドゥー教において、シヴァは破壊神、ブラフマーは創造神、ヴィシュヌは維持神、を司りこの3最高神によって宇宙の理を示しています。
像の安置されている塔に入る階段は高さがとてもあり、降りる際は身体を斜めにしないと降りれません。神にお尻を向けさせないようにそういった造りになっているとのことです。


  • ラーマヤナ舞踊


夜にはライトアップされた遺跡を背景にラーマヤナ舞踊が行われます。

ガムラン音楽に合わせ、きらびやかな衣装をひるがえし、手足の細やかな独特な踊りが続きます。
ぼやあっと闇に浮かび上がる遺跡を見ながらの舞踊は幻想的で、まるで古代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥りました。
世界遺産をバックに民族舞踊が見れる場所はなかなか珍しいのではないでしょうか。


  • 人形師(ダラン)

  • 影絵芝居(ワヤンクリ)

無形文化遺産ワヤン・クリの世界

10世紀から続く影絵芝居(ワヤンクリ)は、宗教を広める手段として使われていました。しかし、現在では信仰を超えて娯楽として楽しまれています。

牛皮で作った操り人形には細かな穴があいており、ただの影としてではなく身体の輪郭が浮かび上がる工夫が施されています。 支えの棒は多くが水牛の角からできており、熱でゆっくりと曲げて形を作ります。(現在は木製も多くなってきました)

この劇は、人形師(ダラン)が一人で語り、ガムラン音楽に合わせてすべての人形を操作します。ダランのいるスクリーンの裏側は、あの世であると言われており、操り人形の裏側はとってもカラフル。しかし、影絵では色は見えません。あの世は色の付いた美しい世界が広がっており、現世ではそれが白黒にしか見えないというわけです。

王と魔物が戦うシーンでは、「イヤッ」という掛け声とともに人形がクルクルとまわりスクリーン上を駆け巡ります。
ホワンホワンと鳴り響く民族楽器に合わせ、近づいたり遠ざかる細やかな影はとても幻想的でした。 心地よい音楽が続くため、前の席に座っていた方はぐっすりと寝入っていました・・・・。


  • ボロブドゥール外観

  • 階段を登っていく

1000年も密林に埋もれていた謎の仏教遺跡ボロブドゥール(世界遺産)

ジョグジャカルタ観光2日目。待ちに待ったボロブドゥール観光です。思ったよりも規模が大きく、お城のようにそびえる遺跡は圧巻!の一言です。

山の噴火での火山灰に埋もれ、密林の奥深くに忘れ去られていたこの遺跡は、イギリス人提督ラッフルズによって長い1000年もの眠りから覚めました。

サンスクリット語で「ボロ(僧院)」と「ブドゥール (高い丘)」という意味のとおり、まるで要塞のように小高い丘の上にそびえ建っています。
「ボロ(僧院)」という名前がついていますが、本当に僧院だったのか、霊廟なのか、立体曼荼羅なのか建てられた理由は未だに謎のままという不思議な遺跡です。

ピラミッドのようになっているこの遺跡を、ぐるーっと長い回廊を順に上がっていきます。
この構造は仏教の3界を表しているとされ、下から「人間のいる欲界」、「欲は無いが形のある色界」、「欲もなく形もなくなった無色界」を描いています。
一番下の欲界からは無色界は見えず、無色界に行くと欲界は全く見えません。また下の層はジャワ建築様式ですが、上層部はインド様式なんだとか。接着剤等は使われずに積み上げられているというのだから驚きです。


  • 苦しんでいる人々のレリーフ(欲界)

仏陀が生まれ、悟りをひらくまでの話もレリーフになって続いています。仏教の教えなどを施したレリーフは1460面をも超えますが、頂上に行くにつれてレリーフが減り、抽象的なものが増えてきます。


  • 厳かな雰囲気の回廊

  • 右上に大きな仏塔(ストゥーパ)が鎮座している

ボロブドゥールと言えばこの釣鐘状の仏塔(ストゥーパ)をイメージされる人が多いのではないでしょうか?

中には等身大ほどの仏像が置かれており、外層の仏塔から穴の形がひし形、内側になるにつれて正方形のものが増えてきます。
ひし形は不安定な心を表し、正方形は安定した賢者の心、そして真ん中の大きなストゥーパは穴が無く「悟りを開いた無界」へ収束を導いているという理解ができます。

この仏塔は少しくびれて下が広がっており、台座に蓮の模様が入っています。どっしりとした重みのあるデザインが上のとんがりに向かって収束しており、じーっとみているとなんだか愛らしくも感じるフォルムです。
72もあるこのストゥーパたちは整然と並び、仏像は優しく静かに微笑んでいます。遠くに青々とした密林が広がり、計算しつくされた遺跡との対比により仏教の宇宙観を目で感じ取ることができる空間でした。

頂上まで登ると悟りの道が開かれるというこのボロブドゥール、大変見ごたえのある遺跡です。
1000年の眠りから覚めた巨大な遺跡は、今も生き生きとした芸術性に溢れておりビシバシとここが聖域であるという神々しさをも感じさせられます。


  • 木をモチーフにした王様(スルタン)の家系図

  • 名産物のろうけつ染め(バティック)大柄は王族のみ着用が許されていた

  • ロウを塗ったうえから着色していく

  •  ロウを落とす

  • 水の王宮・タマンサリ

  • 街中では今でも馬車(アンドン)が現役

インドネシアのジョグジャカルタは、文化と歴史が芸術を生み、見るものの想像力を掻き立てるなにかがありました。

今回筆者の旅は2泊3日でしたが、もう少しゆっくり見たかった・・・というのが本音です。遺跡を眺めるだけではなく、その時代について更に知ることによって見方も大きく変わってくることがとても面白かったです。

積極的に旅行し、その土地の芸術に触れてみましょう。美大生皆さんの五感も研ぎ澄まされ、活発になること間違いなし!です。

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OTONA WRITER

得本真子 / TOKUMOTO NAOKO

日本工学院八王子専門学校および東京工科大学メディア学部卒。シンガポール5年目の写真家&ウェブデザイナー。DTPデザインもやってます。ポジティブなアートが大好きな奄美出身の変わり者。過去にクラウドファンディングサイトCAMPFIREにて資金を集め、個展を開催したことも。 なんでもやりたい、なんでも好き!な自他共に認める(オタク)です。