案外知らない教育学部の美術!?広く学んで「好き」が見つかる

はじめまして。私は久保村里正(くぼむらりせい)といいます。現在、文教大学教育学部で先生をやっています。私の働いている文教大学というのは埼玉県の越谷市にある大学で、教員養成系の大学の中では、それなりに有名な大学ですが、そこで小学校の先生や中高の美術の先生になりたい学生に向けて、美術教育やデザインについて教えています。これから『PARTNER』では、美術を学ぶ学生さんに向けて、授業や制作のことなどで感じたことを、いろいろ書きたいと思いますのでよろしくお願いします。

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私は大学で美術教育やデザインの先生をやっていますが、先生はただ授業をやっていればよいというのではなく、授業以外にもさまざまな仕事があります。例えば多くの大学では、大学での授業を受験生に知ってもらうために、オープンキャンパスというイベントを行っていますが、そういって機会に、大学の授業内容などを説明したりするのも、先生の仕事一つだったりします。そういった場合、当然、私も先生の一人としてオープンキャンパスに参加し、説明などをしたりするのですが、そこでよく「美大と教育学部の美術とではどう違うのですか?」と、いうような質問を受けます。



美術学部と教育学部の違い、それは重きをおく授業内容と授業数

無論、美術学部と教育学部ではその設置の目的が異なりますので、教育内容が異なるのは当然です。教育学部は教員になるための授業が多くあり、その分、美術の授業は少なくなりますし、特に小学校の教員は国語・算数・理科・社会など全科を教えなくてはなりませんので、卒業までに全体の授業の数も膨大です。また中高の美術の免許を取得する場合には、絵画・彫刻・工芸・デザイン・美術史などの美術に関する授業も用意されていますので、それなりに美術を専門的に学ぶことができますし、教員ではなく美術に関した職に就く人もいます。
一方、美術学部の方は、美術を専門としていますので、大学生として最低限必要な教育内容以外は、美術に関する教育内容が主となります。また多くの美術学部でも中高の美術教員の免許は取得できますので、教員免許を取得しようとすれば、教育学部と同様、美術以外に履修しなくてはならない授業が多くなります。



最大の違いは別のところにある。それは、「深さ」と「広さ」

この様に書くと、単に美術学部と教育学部の違いは美術に関する授業の数だけのように思えますが、最大の違いはそこではありません。それでは最大の違いは何かというと……、それは、美術に対する深さと広さにあるといえます。通常、美術学部の場合は学部の下で、絵画・彫刻・工芸・デザインなどの各領域に分かれ、それを専門に深く学んでいきます。もちろん絵画を専門に学んでいても、他の授業を学ばないわけではありませんが、それは最小限に限られます。
一方、教育学部では絵画・彫刻・工芸・デザインなどの各領域に欠けること無いように万遍なく広く学びます。これは中学校・高校では美術全体を指導しますので、領域によって苦手があったりして指導できないようだと都合が悪いからです。つまり美術学部は専門の技術を高めるため深く学び、教育学部では苦手をなくすために広く学ぶということです。もちろん教育学部の学生も美術を学んでいくうちに好きな領域が出てきますので、それを専門として重点的に学ぶことも可能です。そう考えると教育学部は美術に関して色々やってみたいと思っている人に向いているかもしれませんね。


美術学部と教育学部とでは違いもありますが、同じ美術を学ぶことには違いがありません。細かな授業の内容などは機会があれば詳しく書きたいと思います。ではまた。

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OTONA WRITER

くぼむらりせい / kubomura risei

文教大学で先生をやっております。専門はデザインと美術教育です。バウハウスにおける基礎造形教育やトリックアートなどを研究していますが、絵本やアニメーションなどにも手を広げていたりします。