60年代からグラフィックデザイナーとしてキャリアを始め、70年代から「コラージュ」による作品制作を手がけてきた横尾忠則の膨大な作品群のうち、「コラージュ」をめぐる実験性が先鋭的にあらわれた80年代末〜90年代始めの時期の作品を展示しています。
日本を代表する美術家横尾忠則は、アメリカでポップカルチャーやカウンターカルチャーが興隆した時期に、それらをいち早く現地で実体験し、その衝撃を自身の作品や著作を通じて日本国内に紹介しました。青年時代より、三島由紀夫、ビートルズ、アンディ・ウォーホールといった歴史的なアイコンをはじめ錚々たる文化人たちとの交流を持ちながら、本業である画業のほかに、俳優、アニメーション監督、写真家、テレビタレントとして活動するなど、稀有なセルフヒストリーを紡いでいます。近年では、文学作品を発表しており、約半世紀に渡るジャンルを超えた横断的な創作活動は現在も続いています。
グラフィックデザイナーとして隆盛を極めていた80年代の初頭に、横尾忠則はNYの近代美術館で開催されたピカソの大回顧展に衝撃を受けたことががきっかけとなり画家宣言をしました。「何を描くか」という、モチーフ探求の時期を経て、本展ではあらゆる技法上の実験を試み、「いかに描くか」を追求していた頃の作品を鑑賞できます。約2年毎に制作手法を変えていた時期の、アナログ作業〜手描き〜コンピューター・グラフィックスと異なる制作手法によるコラージュ作品 が、それぞれ、「多次元絵画」「〈滝〉のシリーズ」「テクナメーション」として、3部構成による展示です。
横尾忠則の創作上の意識は、最終的には、「いかに生きるか」「人生全てを作品として提出する」というに至り、芸術と人生を統合する生き方を前面に打ち出す態度を表明しています。そうした意識の変遷とともに、多様な制作スタイルを実践し続けるキャリアのなかでも、コラージュによる制作手法は一貫しており、それは単なる一技法であることを超えて、自身の思考や生き方そのものとして位置づけています。横尾忠則は本展に寄せて、コラージュについて以下のように述べています。
「もともとわれわれは日常生活のなかで毎日コラージュをしているのだ。頭のなかを次から次へとかけめぐる想念そのものがコラージュ的である。われわれの頭のなかは常に非論理的なイメージが、ぶつかり合い交錯しあっている。ひとつのまとまった考えに没頭することはなかなか難しい。〜中略〜考えること自体がコラージュである。いや生きることはコラージュそのものかもしれない」
「考えること自体がコラージュ、生きることはコラージュそのもの」という言葉どおりに、その作家人生を通じてカット&ペーストを実践し続ける横尾忠則のコラージュ作品を鑑賞する貴重な展示を、是非この機会にご覧ください。
参考文献:「横尾忠則展 カット&ペーストー切った張ったの大立ち回り 公式図録」 2015年 横尾忠則美術館発行、 「ぼくなりの遊び方、行き方 横尾忠則自伝」 2015年筑摩書房発行
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開催概要:「横尾忠則展 カット&ペースト 切った貼ったの大立ち回り」
場所:横尾忠則現代美術館
日時:〜7月20日(月)
10:00~18:00(入場は17:30まで)
展覧会開催中の金・土曜日は10:00~20:00(入場は19:30まで)
月曜日休館(祝日の場合は翌日)
入館料:《一般》700(560)円《大学生》550(440)円 《高校生・65歳以上》350(280)円 《中学生以下》無料
※( )内は20名以上の団体および前売料金(高校生、65歳以上は前売なし)
※障がいのある方とその介護の方(1名)は各当日料金の半額(65歳以上除く)
※割引を受けられる方は、証明できるものをご持参のうえ、会期中美術館窓口で入場券をお買い求めください
詳細:http://www.ytmoca.jp/exhibitions/2015/04/post-3.html
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転載元:KABlog 「横尾忠則展 カット&ペースト 切った貼ったの大立ち回り」
執筆:Reiji Isoi.
本記事は「KABlog」から提供を受けております。
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