【なんでオリンピックと芸術?】本題へ入る前に文化プログラムについて

2021年7月19日(月)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

長くなりますが、本題へ入る前に「オリンピック文化プログラム」について説明します。
最初は誰もが「なんでオリンピックと文化芸術なのよ?スポーツの祭典だよ?あんたら全然関係ないんだから文化系はだまってなさい」って思うはずなので(笑)

実は答えはオリンピック憲章にありまして。冒頭を引用します。
-------
オリンピズムの根本原則
1.オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指すものである。スポーツを文化や教育と融合させるオリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などに基づいた生き方の創造である。
[オリンピック憲章 Olympic Charter 2011年版・日本語より]
----------


オリンピズムが根本として求めてるものはスポーツの祭典なんかじゃなく、「スポーツを文化や教育と融合させる」ことであり、オリンピック憲章の頭も頭、根本原則にはっきりとそれが書かれています。

なので以前はオリンピックに「芸術競技」がありました。
建築、彫刻、絵画、音楽、文学の5種目が正式種目として存在し、スポーツをモチーフとした芸術作品のコンペ競技が行われ、日本人も銅メダルを受賞しています。でも作品輸送の難しさや客観的な審査の困難さから「芸術競技」は「芸術展示」(文化プログラム)に移行されてます。
【参考:オリパラこぼれ話:過去の珍しい競技・種目 綱引きや芸術競技なども - 毎日新聞より】


  • 出典:https://mainichi.jp/articles/20190514/mog/00m/050/004000c
  • 毎日新聞|1936年の第11回ベルリン大会の芸術競技で作品が展示された日本ブース。中央は力士の像。左端は銅メダルの鈴木朱雀の作品「古典的競馬」=高田正雄撮影

そうなんです。
実はオリンピックを開催する以上、前回のオリンピック、リオが終わってから日本は芸術系コンテンツ、つまり文化プログラムを国としてやらないといけない決まりなんです。オリンピックで日本が注目されてるからついでに、でなく「文化プログラムはオリンピックの開催成立条件の一つ」なんですね。
あ、なんで文化プログラムについて詳しいかというと、2014年にこういうイベントをムサビで企画しまして、その時に勉強しました(笑)

ちなみにオリンピック文化プログラムで話題になったのは、2012年ロンドン大会です。
2008年の北京五輪終了時からの4年間に「カルチュラル・オリンピアード」を英国全土で実施し、2012年にはフィナーレとして2ヶ月半の大規模な芸術祭「ロンドン2012フェスティバル」を開催して、約12万件のイベント、約4万人のアーティスト、来場者延べ4340万人が参加し大成功をおさめています。(数字は諸説ありますが)

なので文化庁はロンドン大会を超える文化プログラム20万件開催を目標にし、「文化プログラムをたくさんやるには芸術系大学の協力がマストだ!」として生まれたのが「全国芸術系大学コンソーシアム」です。
ロンドン大会では開会式・閉会式のデザインボランティアの80%、コスチュームデザインボランティアの60%がロンドン芸大の学生さんだったと聞いてたんで、私たちも「こりゃ東京藝大や美大も忙しくなるぞ!!」と意気込んでました。

また、スポンサーが絡むとどうしてもできない展示が発生する・・例えば東京大会公式スポンサー(ゴールドパートナー)がアサヒなのでサントリー美術館は関係できなかったり(実話)・・・ので、オリパラではなく「2020年を契機とした」をテーマにして文化プログラムをやろうっ!としてできた仕組みが「beyond2020プログラム」

よし!このばっちりな体制で2020年まで日本全体の文化芸術を盛り上げようぜ!!

・・・というのが、平成29年頃の文化庁の計画でした・・。
その後は皆さんご存じの通りで、コロナで国も自治体も美術館も美大もそれどころじゃなくなり、文化プログラムどころかほんとにオリンピックやるの?ぐらいなことをつい最近までやってましたよね・・。


手羽はチケットは全部外れてたし、市ヶ谷キャンパスの前を走る予定だったマラソンが札幌に決まった2019年11月の段階でオリンピックへの愛情はほとんど無くなってたんだけど(笑)、7月に入ってからちょこちょこ外苑近辺での現代美術系の話題が入ってくるようになり、「あ、文化プログラムをやらなくちゃいけないんだった」と思い出し、2014年頃から自分も関係してたこの動きの集大成が実は今なんだ、と気が付いたと。

てなわけで、手羽が気になってる文化プログラム、東京大会に直接・間接的に関係しそうな展覧会を明日紹介します。


以上、他の店には置いてなかったものが近所のオリンピックにあって、「オリンピックがあってよかった~」とつぶやこうとしたけど、「この文章だけじゃ叩かれる可能性あるな・・」と気が付いた手羽がお送りいたしました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹と西原理恵子とみうらじゅんと羽海野チカと銀魂と合体ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し日夜奮闘中