深夜2時でも楽しかったから“イラスト”を仕事にした|イラストレーター 川合翔子

ソーシャルデザインに興味があった大学生活。デザイナーとしてキャリアスタートするも、偶然頼まれたイラストレーターという仕事に心奪われる。フリーランスとして生きていこうと決断するまでに、そう時間はかからなかった。ひらめきと勢いで活動の幅を広げる、若手イラストレーターの現在地。

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川合翔子 Shoko Kawai:イラストレーター
1990年東京生まれ。2013年ロンドン大学ゴールドスミス校デザイン学部卒業。2018年からフリーのイラストレーターとして活動を開始し、現在では雑誌や書籍、企業のwebサイトなどのイラストを担当する。



プリ帳で進路を決めました

父がデザイナーということもあり、小学生の頃からイラレを使って自分の年賀状を作るなど、デザインに慣れ親しむ環境はありましたが、特に美術の成績が良いタイプではありませんでした。

小学校〜高校2年生までの11年間はNHK東京児童合唱団に所属していて、青春時代は音楽の方が身近な存在でした。しかし、楽譜が読めないという致命傷もあり(笑)、音楽を極める道には進みませんでした。

高校後の進路を決めたきっかけは「プリ帳」でした。当時雑誌の切り抜きやシールを使ってプリ帳をデザインすることに熱中していたので、「そうだ!エディトリアルデザインだ!」とひらめき、美大への進学を考え始めました。それと同時に、当時洋モノの映画や雑誌の世界に強く憧れていたこともあり、最終的には海外でデザインを学ぶという進路を選びました。


 
海外の美大留学のための専門学校へ

「海外留学」、「デザイン」とインターネットで検索して出てきたのが、その後進学した日本外国語専門学校でした。この学校には海外の美大進学用のコースがあり、午前は英語の授業、午後はファインアートとデザインの授業を受けます。一年かけて入学に必要な英語のスコアを取得し、審査用のポートフォリオを作ることができる日本でも珍しい専門学校です。

周りの人が大学に行くなか専門学校に進むことに対しては、「自分は海外の大学に進学する」という出口がはっきりと見えていたので特に不安はなかったですね。クラスメイトも一度大学を出た人や社会人の人など様々でとても楽しい環境でした。


 
デザイン思考に方向転換

専門学校での課題を通して、色やかたちでビジュアルを作るグラフィックデザインではなく、ジャンルを問わず問題解決のアイデアを考えるデザイン思考に興味があるということがわかり、先生から紹介して頂いたデザイン思考を学べるロンドン大学ゴールドスミス校デザイン学部に進学しました。

大学では例えば、「LGBTやベジタリアンなどのマイノリティのグループを一つ選び、彼らの考え方が世の中の多数派になった時、モノやシステムがどう変化するか体験できるモノを作りなさい」という課題が出ました。

私は、昔ながらのジェンダー観をなくし、性別によって子供の扱いを変えない教育を行っているスウェーデンのエガリアという幼稚園を選び、ジェンダーが存在しない世界では、言葉や服装、家族構成がどう変化するかを考え、小さい子供がその世界の言葉を覚える時に使う単語パズルをデザインしました。

今では色とりどりのランドセルも、かつては赤=女の子、黒=男の子が当たり前でした。 デザイナーが選ぶ色一つで世の中のステレオタイプは変化するように、デザインは社会に大きな影響力を持っています。この頃から社会的なテーマに関わるデザインに興味を持つようになりました。



ソーシャルデザインから徐々にイラストに目覚める

大学卒業後のある日Facebookで流れてきた投稿でNPO法人issue+designの親子健康手帳*を知り、大学で学んだデザインに似ているなと思いすぐに連絡をし、帰国後にインターンを開始しました。その後お誘いを頂きフルタイムで働き始めることになりました。

issue+designでは、防災や子育てなど地域の社会課題をモノやイベント、サービスを企画・制作することで解決するソーシャルデザインと呼ばれる分野に携わり、リサーチや企画、チラシやロゴ制作などのグラフィックデザインにも挑戦させて頂きました。

2年ほど経った頃、簡単なイラストをお願いされたことがありました。深夜の作業だったのにもかかわらず、どう描いたらわかりやすいか、おもしろいか、かわいいか、などと考えるのが楽しく、この時にイラストに目覚めました。その後、インスタで作品を発信したりするなど、仕事以外の時間で個人のイラストの活動を始めるようになりました。



いよいよ(ようやく?)イラストレーターに!

2016年に開催された「TOKYO ART BOOK FAIR」に参加した際、自分の描いた作品を褒めてもらえることがとても嬉しくて、それがまたイラストを続けたいと思う原動力になりました。自分が100%楽しんで取り組めるのはイラストだと確信しました。それを仕事にできたら最高!じゃあまずは1年間チャレンジしてみよう!と、勢いでイラストレーターになる覚悟を決めました。

しばらくは自分のスタイルがわからず悩んだのですが、悩むよりまずは描こう!と、「100人斬り」と称して毎日人のイラストを描いてインスタにアップしていきました。描いていく中で自分の好きな顔や、自分のテイストが徐々に掴めてきました。

そして、2018年の年始にフリーランスとして独立。年賀状と称しポートフォリオを知り合いに送り、実績もない状態で(笑)「イラストレーターになりました!」と宣言しました。すると、周りの人たちがそれを知って動いてくれて。宣言することの大事さを学びました。実績が増えてきたのでこれからもお知らせしていかねば!と思っています。

 


独立してみて思ったこと

独立すると「自分の商品は何か」「どういう人に求められているか」を直に知るので、全てが勉強になります。経済的には不安定ですが、日々の生活や人間関係など全てが仕事にいきるので、フリーランスになって良かったなと感じています。

第一線で活躍されているイラストレーターさんは独自のスタイルや世界観、圧倒的な技術を確立されていて、自分もそういった実力をしっかりつけなければ!と思っています。(焦っています)(笑)

issue+designでの経験から医療や教育などの社会課題に興味が強いので、そういった一見固めなテーマをわかりやすくおもしろく伝えられるイラストにも挑戦していきたいなと思っています。



学生へ ひとことアドバイス

独立した時に、最初のお仕事をもらえるのは友人であることが多いと思います。ぜひ、お友達は大切にしてください!(笑)



海外留学を考える方へのアドバイス

大学受験の際、なかなか大学側から合否連絡が来ず宙ぶらりんな状態が数週間続きました。ヨーロッパの大学を受ける場合、願書を登録したり、合否を確認するサイト(UCAS)があるのですが、そのサイトを確認したところ不合格となっていたんです。しかし、諦めきれずに直接大学に確認したところ、大学側の手違いで実は合格していたということが判明しました(笑)。慌てて渡航の準備をし、なんとか入学できることに。日本に比べラフなところがあるので、反応がないときは積極的に行動した方が良いです!


川合翔子 | Portfolio |instagram


取材:ebichileco

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OTONA WRITER

ebichileco / ebichileco

ebichileco(えびちりこ) 一般社団法人TEKITO DESIGN Lab 代表理事/クリエイティブデザイナー 立教大学社会学部を卒業後、商社系IT企業勤務。2015年チリに移住し、デザイナー活動を開始。「社会課題をデザインの力で創造的に解決させる」を軸に、 行政・企業・個人など様々なパートナーと組みながら、事業を展開している。