【サービスの価値】「記憶にございません!」から考える

2019年9月17日(月)

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昨日、初めての体験をしたんです。
美大ネタでは全然ないけど、考えるものがあったので書き残しておきます。


プロフィールに毎回書いてるぐらい、手羽は三谷幸喜好きです。
テレビだとご存知「古畑任三郎」「新選組!(言われるほとつまらなくない)」「真田丸」はもちろんのこと、今でも手羽ベスト1ドラマの「王様のレストラン」。もう1995年の作品なんですね。いまだに暇なときは見てます(笑)

舞台は子供が生まれてからは全然ですが、それまではだいたいチェックしてたし、舞台DVDはほぼ全部持っています。
「巌流島」「笑の大学」でハマり、「12人の優しい日本人」の伏線回収に感動し、「オケピ!」は全曲歌えるぐらい聞いたし、「バッド・ニュース☆グッド・タイミング」はおなかが痛くなるくらい笑い続けたし、2年前ぐらいにテレビで放送してた再々演「君となら」はあかりちゃんもハマりました。

個人的な舞台ベスト1は、

「コンフィダント・絆」です。即答。間違いなく。

笑えるかどうかであれば「バッド・ニュース☆グッド・タイミング」が圧倒しますが、ゴーギャン、ゴッホ、スーラ、シュフネッケルの画家の話であり、感動とのバランスだと「コンフィダント・絆」が好き。
どうしても自分を才能のないシュフネッケルとオーバーラップしてしまい、最後は必ず泣いちゃうんです。

ちなみに舞台美術はいつも空デの堀尾先生が担当されてたし、衣装や照明もムサビOBOGが三谷組を支えています。(最近はわからないけど)
 


エッセイ本「三谷幸喜のありふれた生活」シリーズは全巻持ってるし、映画だと「ラヂオの時間」はチェックしておきたい映画。
ただ・・・ファンとして一応映画のDVDは全部持ってるけど、舞台と比べるといつも「??」とは正直感じてます・・「ギャラクシー街道」は映画館にさえ行ってません・・。

でも4年ぶりの映画新作「記憶にございません!」は、「記憶喪失の総理」という前情報からも三谷組の演者がそろってることからも、三谷幸喜が大得意とする「一度ついた嘘をみんなで必死に隠し、嘘が嘘を呼び大事になる密室劇」な展開が予想され、これは絶対に面白いはずと確信。
・・上記説明をすると、今の若い人はアンジャッシュのコントをイメージするかもしれませんね(笑)

でも、リンクロウ、あかりちゃんはついてきてくれず、奥さんと二人デート状態で新宿の某映画館にやってきたのであった。
 

ここまでが前置きです(えっ)。


ポップコーンとジュースを買い、シートに座る。客層は年齢層高い(笑)
するとスピーカーから「ジー」とノイズ音が聞こえる。気になるといえば気になるけど、CMが流れてる間は聞き流せる程度のノイズで、うしろに座ってるおじさんも奥さんに「え?なんか聞こえるの?」と聞いてるくらい。モスキート音に近く、多分上映中に流れてても問題ないレベル。

CMも終わり、

が流れだし、いよいよ!とテンションが上がったとたんにブチっと映像が止まり、会場が明転。
「機材のトラブルチェックをしますので、いましばらくお待ちください」とアナウンスが入りました。

ポップコーンを食べながら待つ手羽夫婦。
すると20分ぐらいしたら、入り口付近でなんか客とスタッフが揉めてる。
だいたい予想できる展開ですが、「どうなってんのよ」と詰め寄られスタッフが説明したら「ふざけんな!」的なやつ。
そのお客さんは「皆さんに説明しなくていいの?早くやりなさいよ!」と怒ってるけど、「全部聞こえてるって。あんたがそれをさせてないのよ・・」と冷める会場。

そう、人生で初めて「映画館の機材トラブルで上映中止」というのを経験したんです。

しかし、こういうときにスタッフにぶちぎれる客って50代のおじさまとおばさまが多い気がする。JRしかり。こんな大きな映画館で会場スタッフアルバイトさんが機材チェックしてるわけないのは考えりゃわかるし、スタッフを怒ったところで機械が直るわけでもないのに、なんででしょうね。


さて、ここで問題です。

「上映中止になった場合、あなたがスタッフならどういう対応をお客さんにしますか?」
自分事としてちょっと考えてみてください。これすんごく難しい問題。


今回、

招待券を1枚もらいました。
一瞬、仏の手羽も「え?これだけなの?!」と思っちゃった(笑)

奥さんと「交通費の弁償とか考えたら、招待券2枚渡すぐらいがベストじゃない?」と話してて。
確かに人によって交通費を清算してたらとんでもないことになるから、全員が納得しないまでも妥当な対応が「招待券2枚」あたりだろう、と。だから「たったの1枚?皆さんそれで納得するの?!」と。

でもすぐに招待券1枚分を用意してたことを考えると、運営マニュアルがそうなってるものと思われる。考えてみたらコンサートの突然の中止はよく聞くけど、チケットの払い戻しはしても交通費を弁償したってのは聞いたことない。

「なにかここを守る根拠があるんだろうなあ」と帰って調べたら、ちゃんとWEBに書いてありました。

チケットの申し込み規約や約款に書かれてあれば、事業者側の重大な過失がない限り、法的に損害賠償の請求はできないそうです。なるほど、勉強になるなあ。


ほんとに誠実に対応しようとすると、「交通費や駐車場代」「ポップコーンとジュース代」な金銭面はもちろんのこと、「楽しみにしてた映画が見れない」「大事なデートがつぶれた」「3連休真ん中の日曜午前が無駄になった」な金額にできない「経験の価値」も全部弁償しないといけない。
運営側の立場からするとそれは無理。
それが許せないっていうなら映画館なんか行かず家でDVDか配信見てろって話で。

今回「サービスの価値がイコールになるものはなにか?」「サービスを求めるってどういうことか」を考えさせられたし、「公開講座でもちゃんと書いておかなくちゃいけない」ってことを勉強させられました。


以上、とはいっても口が三谷味にすっかりなってたんで我慢できず、

すぐ近くの映画館のチケットをネット予約して、無事に「記憶にございません!」を見れた手羽がお送りいたしました。大人ってこういうこと。
え?内容はどうだったか?えーと、ま、こんなもんかな・・。


「記憶にございません!」が記憶に残る出来事になった1日の話(誰がそんなうまいことを)

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。