【名古屋造形大学 造形学科 グラフィックデザインコース 植村葵さん】
「これは、あなたの知らない終わりの話たち そして、これから知る物語」
この作品はあの有名な推理小説家、江戸川乱歩のオマージュ作品。作者の植村さんが通っていた美術予備校の、展覧会に向けて制作した作品です。
その年の展覧会のテーマが「ん」であり、彼女は五十音順の終わりの文字である「ん」と絡め、そこで人間が壊れていく物語や人間の終焉の物語を多く執筆していた江戸川乱歩をモチーフに作品を制作しました。彼女自身、彼のファンであり、「(江戸川乱歩の作品は)おかしな人ばっかりが出てくるけど、ちょっとだけ自分の内側に心当たりがある不思議な感じ……。」と江戸川乱歩への思いを教えてくれました。
植村さんを推薦した、PARTNER編集部の田中優帆さんは「私が展覧会で彼女の作品に出会った時に、造形の美しさに純粋に目を惹かれると同時に、乱歩の作品を読んだことのない私でも小説の独特な美しい世界観を感じられた。」と言っています。私も田中さんと同じく、江戸川乱歩の作品を読んだことはありませんが、彼女の作品には見た人の目をふと止めてしまう魅力を感じ、興味が湧きました。植村さんのこの作品達は、多くの人が江戸川乱歩ワールドに足を踏み入れるためのきっかけとなるでしょう。
【多摩美術大学 美術学部 絵画学科油画専攻 4年生 近藤拓丸さん】
「この作品は日本画の友人と合同で展示しようとして制作したものです。また、描かれているのも合同で展示をした友人本人です。鑑賞者にとって、キュビズムは日本画の友人の描いたものと対象的なものとして映ったかもしれません。」
近藤さんの作品は、対象物をカメラで撮影し、それを切り取り、コラージュしたものを基に油彩で描いた、ピカソのキュビズムを再現した作品です。キュビズムとは、20世紀初頭にパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによっておこされた現代美術における大きな動向で、ひとつの視点から対象物を見て絵を描くことを否定し、様々な視点から対象物を見て、その形をひとつの画面に収めたものです。
近藤さんを推薦したPARTNER編集部の小倉裕香さんは「この作品は、ピカソのキュビズムを高い技術力で再現、かつ同じようにまねるのではなく、自分のオリジナリティも加えていることに魅力があると感じた。」と語っています。
「まねる」と「オリジナリティ」……何だか対象的な言葉が出てきましたが、近藤さん曰く「まねること、模倣することは、人が学習することにおいて大事な機能のひとつだと思います。ただ、最近思うのは主体的な意識あっての『まねび』だとおもうのです。」とのこと。単純にまねをして制作をするのではなく、自分と向き合った上でまねをすることで、オリジナリティが見えてくる。これが、クリエイターとしてまだ未熟者な美大生にとって、大切な「まねび」なのですね。
以上、PARTNER36号のPARTNER GALLERYからご紹介しました。
特集「+α」いかがでしたでしょうか?
「まねる」とは、……なかなか勇気のいることですね。ですがこれが出来るのは、きっと美大生という学生期間ならではの特権。まね方次第でどんどん自分の経験値は上がり、糧となるでしょう。
フリーマガジンの誌面では作品の推薦者であるPARTNER編集部田中優帆さん、小倉裕香さんのさらに詳しいコメントも掲載されているので要チェックです!
ぜひぜひ、お手にとってみてくださいね!
執筆:菊地真由(PARTNER編集部 東北支部)
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