■「入試広報」と「大学広報」
大学は非営利組織ではありますが、「広報」が大きな意味をもっています。
「広報やるお金があるならその分学生に還元を」はもっともな話だし、優先すべきことだけど、受験生・学生が集まらなければ大学は運営できない。また、そのためには大学名を広く周知させないといけない。
特に少子化にむかってる今は。
例えば「武蔵野美術大学」は美術業界ではそれなりに知られてる名前だと思うけど、一般の世界では全く知られていません。以前、立川で開催された一般大学がメインの進学相談会にブース(机)を試しに出したら、ムサビブースの前で女子高生に「え?武蔵野美術大学?武蔵野大学のパクリ?超ウケル(笑)」と言われたことがあります(手羽体験談)
ムサビから近い立川でこれですから。
昔は「知らないやつは知らなくていいんだ!」で終わらせてましたが、今は・・・そんなこと言ってる場合じゃないのはご想像の通り。
受験生を集めるための広報を「入試広報」といい、大学名・ブランドを周知させる広報を「大学広報」と言います。
入試広報系の典型例は
●ムサビュー vol.2 −基礎デザイン学科のプレゼンテーションを体感−(7/4開催)
http://www.musabi.ac.jp/topics/20150611_03_03/
等ですね。
「入試広報と大学広報は別物だ!」「いや、一緒の方がいい!」という議論は昔からあり、いろんな大学で部署をくっつけては離し、離してはくっつける歴史がずっと続いてます。
「大学広報は戦略、入試広報は戦術」という解釈をセミナーでよく聞くし、その通りだと思うけど、組織・人・仕事はそううまく分類できないもので・・。
というわけで、今日は「大学広報」の話を。
■いろいろな大学広報1 -プレスリリースを流す-
「大学広報」といってもいろいろな手法があり、大学から発信するものもあれば、そうじゃないものもありまして。
ムサビを例に書いてみましょう。
まずは、「広報がメディアにリリースを流して記事にしてもらう」という手法。
すんごくわかりやすいのはこれです。
●「わらの巨大ゴリラ」を作っちゃう美大って?--ムサビが一足早いオープンキャンパス
http://internetcom.jp/wmnews/20150612/musashino-art-university-open-campus.html
わらアート・黒板ジャック・ハチクロと食いつきがよさそうな話題をうまく盛り込み、最後にオープンキャンパスの話題が入ってる。しかも配信時期はオーキャン直前の6月12日。
こんなにタイミングよく、しかもコンパクトにムサビネタを記者さんが書けるわけがなく(笑)
これは企業でもよくある広報手段で、下記はムサビがリリースを流したわけでなく、企業さんが流していただいたパターン。
●切削RPマシンを活用した先進的な研究事例を披露
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1506/25/news128.html
●ブリヂストン 武蔵野美大とのプロジェクト成果を展示
http://www.gomutimes.co.jp/?p=81833
産学など企業とのコラボをやってるとこういう形で大学名が出ることがあり、通常の大学広報ではアプローチできない層に大学名を周知できます。
新規性があれば多くは無料で記事にしていただいたものですが、お金を出して記事を書いてもらうこともあるわけで、これが「記事広告」ってやつです。
新聞で学長メッセージや大学の活動が大きく見開きで載ってたりしますよね?
よーく上を見ると「記事広告」と書いてあるのがそれだし、受験雑誌には大学がお金を出して大学入試情報を掲載してもらっているのです。受験雑誌はボランティアではないの(笑)
■いろいろな大学広報2 -在学生・卒業生の活躍から-
大学広報の特殊な例としては、「在学生・卒業生の活躍により大学名が出る」パターンがありますね。大学が宣伝したわけでなく「●●大学卒」と表記されることで、大学名が出てくる。
最近だと
●榎木孝明、30日間「不食」生活中!摂取水だけ : 芸能 : スポーツ報知
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20150617-OHT1T50055.html
この話題から「榎木さんってムサビOBなのね。どうりで絵がうまいはずだ」と知った人も多いことでしょうし、「武蔵野美術大」という名前を初めて聞いた人もいるはず。
●ロボットと"平成の侍"が魅せた「師弟対決」 - 話題の動画「YASKAWA BUSHIDO PROJECT」制作秘話 (マイナビニュース) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150612-00000083-mycomj-sci
●後藤友香の約2年ぶり個展は『祝祭』と『喜び』、立体的なペインティングも
http://www.cinra.net/news/20150621-gotoyuka
●押し花アート写真集『flora』- 多田明日香が美しい花々の世界で彩る鮮やかな骨格 | ニュース - ファッションプレス
http://www.fashion-press.net/news/17486
●蒼樹うめ展
http://www.umeten.jp/
などもそうです。あ、蒼樹うめさんはデザイン情報学科卒です。
手羽としては、
●イラストレーター:長岡秀星さんが死去…F1ポスターも - 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20150627k0000e040201000c.html
小学生時代に見た長岡秀星展があまりにも衝撃的で、初めて親に頼んで展覧会の図録を買ってもらいました。もともとイラストや漫画を描くのが好きだったけど、「イラストレータ」という職業を意識したのは長岡秀星さんからなのです。
そんな長岡さんが(中退だけど)ムサビ出身と知ったのは大学職員になってからで、その時は運命のようなものを感じましたね。ご冥福をお祈りいたします。
■いろいろな大学広報3 -聖地巡礼系-
最近増えてきてるのは、マンガ・アニメ、映画・テレビドラマの舞台になることで、大学名が出てくるケース。いわゆる「聖地巡礼系」ですね。
PARTNERでも一度記事になってますな。
●もう読んだ? 美大・芸大が出てくる漫画10選
https://partner-web.jp/article/?id=144
ムサビは「ハチミツとクローバー」「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」が有名ですが、最近だと大学名は出てこないけど、
●かわれて候。|LINE マンガ
https://manga.line.me/product/periodic?id=00005vry
あきらかにムサビと思われる景色が出てきたり(笑)
作者がムサビ卒なのかな?
ももクロの映画「幕が上がる」でもムサビが使われたし、
●『トイレのピエタ』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=ALu12sWr3Rs
こちらの映画予告編冒頭でもムサビのアトリエが出てきます(リリーさんも出演されてますね)
ちなみに手羽にとっての聖地巡礼は「アオイホノオ」の大阪芸術大学さんで、去年勢いで行きました(笑)
●美大ラウンジ(裏)::大阪芸術大学へ行ってきた(ほぼ聖地巡礼)
http://d-lounge.jp/blog/2014/10/7979
個人的には「真面目にコツコツとやってれば、いずれ知れ渡るはず。焦ってマスコミにすり寄っちゃダメだ!チャラチャラするな!!」派だったのだけど、やはりテレビ全国放送の力はすごく、
●桐谷美玲 my generation|NEWS ZERO|「黒板ジャック」驚きのアート
http://www.ntv.co.jp/zero/mygeneration/2015/03/post-83.html
などで紹介された時は、広報に「うちでも黒板ジャックやってほしい」と電話がひっきりなしにかかってきました。恐らく皆さんが想像してる以上の反響だったんです。
この件で考え方が少し変わったけど、「テレビの怖さ」も再確認。
■いろいろな大学広報4 -教育研究成果-
でも一番大学広報としてオーソドックスな方法だけど力を入れたいのは、教員の活躍や教育研究成果から大学名が出ることかもしれません。
「卒業生の活躍」「聖地巡礼」は言ってしまえば「こんな卒業生がいる」「テレビで使われました」の自慢に過ぎず、「だからなんなの?あんたの実力なの?」と聞かれたらギャフンです。
「現在の大学の力」は、やはり教員の活躍や教育研究はどんなことやってるか、から見えてくるわけで。
その黒板ジャックの教職・三澤先生は、
●【Benesse(ベネッセ)教育情報サイト】学びの先にあるもの::武蔵野美術大学造形学部教職課程研究室(1)美術教育は新しい社会をつくるカギ
http://benesse.jp/juken/20150624/p1.html
こんな感じに記事になってるし、空間演出デザイン学科・片山先生は
●片山正通教授の「遊ぶ」ように「仕事」をしよう (CASA BOOKS instigator 2)
http://www.amazon.co.jp/dp/4838727623/ref=cm_sw_r_tw_dp_6YeKvb0EVJKA4
課外講座「instigator」書籍化第2弾、ということでいろいろ紹介されています。
●ニュース:第49回造本装幀コンクール、入賞作品決まる|PJ web news【印刷ジャーナル】
http://www.pjl.co.jp/news/group/2015/06/7690.html
武蔵野美術大学美術館・図書館出版「博物図譜とデジタルアーカイブ特装本」が文部科学大臣賞を獲ったことも、美大としては教育研究成果の一つといえますね。
何が言いたいかというと、「大学広報のいろいろを紹介します」と導入しといて、中身はムサビの大学広報なのが大学広報のコツってこと(笑)
今日のまとめ
●嘘はつかない程度にエグい大学広報を目指す
よし、手羽美術大学★開設の野望がまた一歩近づいた!!
【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。