【全国9大学のデザイン教育・研究を紹介】デザインハブ企画展「ゼミ展」が始まった!

2018年9月4日(火)

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現在ミッドタウン・デザインハブで開催してる異色の展示を紹介します。


東京ミッドタウン・デザインハブ第74回企画展「ゼミ展」

●会期:2018年 9月1日(土)~9月24日(月・祝)11:00 - 19:00
●会場:東京ミッドタウン・デザインハブ(ミッドタウン・タワー5F)
●主催:東京ミッドタウン・デザインハブ(構成機関/公益財団法人日本デザイン振興会、
公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会、武蔵野美術大学デザイン・ラウンジ)


■関連イベント「ゼミ展ギャラリーツアー&レセプション」
参加校9校の課題担当教員または出展学生によるギャラリーツアー。
ギャラリーツアーの後、先生や学生を交えてのレセプション兼交流会も開催します。
●日時:9月9日(日)14:00-
●会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
●参加費無料(要申込)
→申込URL: http://ptix.at/tPhgn6

「デザイン」という言葉は幅が広く、普段使われる「意匠」「造形表現」の他に、ビジネスはもちろん、生活や社会をよりよくするために全ての人が活用できる「知」であり「考え方」も意味します。
そのため、デザインの領域や活用範囲の広がりと共に、美術系大学や専門学校以外でもデザインを教える教育機関が増えてますが、学生たちが実際にどのようにデザインを学んでいるのか、具体的な学びの過程や内容を知る機会はまだ多くありません。

てなわけで、本展覧会では様々な領域の「デザイン」を教育・研究している全国の大学9校が参加し、各校で実際に行われている課題内容と、学生作品の一部を紹介することになりました。
「ゼミ展」というタイトルですが、ニュアンスとしては「大学紹介ではなく、特色あるデザイン教育授業を紹介する展示」と受け取ってもらえれば。

では、今回参加してる大学を紹介していきます。
あ、「デザインハブで9大学10ゼミを紹介」だから美大が中心の展示と思われそうだけど、実は純粋な美術系大学・学部は5つだけだったりしますよ。


■京都工芸繊維大学工芸科学部デザイン・建築学課程中野デザイン研究室

●課題名・担当教員:「映画ポスターデザイン、フォントデザイン」中野仁人
映画ポスターは、学生たちが互いにクライアントとなって、それぞれ映画タイトルを提案し、籤で選ばれたタイトルの映画ポスターをデザインする。その際、映画の内容を理解し、既成のポスターに拘らない、図像、タイトルロゴを提案し、映画の魅力を引き出すものとする。
フォントデザインは、ボディタイプとしても使用可能な和文フォントをデザインする。その上で、フォントの良さが最も際立つ活用例を展開する。


■慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス石川初研究室

●課題名・担当教員:「風景を切り取るツールの獲得」石川初
「風景(ランドスケープ)」は単に所与の環境としてあるのではなく、私たちを取り巻く環境とそれを眺める人との関係において現れるものである。そうであるなら、風景の中でこれまで鑑賞されてこなかった対象を発見したり、それを採集して分類し名付けたりする行為はすぐれて創造的なランドスケープの提案である。このような意識のもと、目の前の風景に向き合い、それを独自の視点で切り取るトレーニングとなる様々な課題が出され、制作活動を行った。



■慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス鳴川肇研究室

●課題名・担当教員:「移動住居の設計・開発(4人用ジオデシックドームテント)」鳴川肇
ノースフェース(ゴールドウィン)から依頼されたジオデシックドームテントのデザイン・開発。素人が短時間で組み立てられる。地震、台風に耐えられる。中で人が歩き回れる。
これらを実現して移動住宅として通用するドームテントを設計する課題設定を行った。



■女子美術大学芸術学部デザイン・工芸学科ヴィジュアルデザイン専攻

●課題名・担当教員:「視点と行動と発見」林規章
視覚から起こる訴求や役割を明解にしてグラフィックコミュニケーションを視覚化。
言葉やイメージを超えたところに表現があることを実証していく。最終表現として展覧会やイベントを想定し、表現の機能を探る。



■多摩美術大学Pacific Rim Project

●課題名・担当教員:「Pacific Rim 11:Future Craft」「Pacific Rim 12:Eco Reserch Lab.」
和田達也、デヴィット・モカルスキ

Pacific Rim 11:タイ北部の美的文化と伝統を体現する工芸に焦点を当てると同時に、破棄されるバナナやホテイアオイの繊維の再利用に関するプロダクトを提案。
Pacific Rim 12:コスタリカにて自然界に見出されるデザイン要素、生態系と動植物の持続可能性バランスを調査・分析し、観念化とコラボレーションによる提案を実施。



■東京藝術大学美術学部デザイン科

●課題名・担当教員:「くらす」(2年生実技課題) 出題・指導/橋本和幸、指導/石田和人、藤木武史、山田勇魚、町田美菜穂
「豊かな暮らし」をテーマに空間デザイン(ジャンルは問わない)を提案すること。
大きさ約900×900mm以上、高さ自由。素材及び造形の探求。空間とモノと人の関係の理解。
空間デザインを提案する力を養う。
1.「豊かな暮らし」をテーマに空間デザイン(家具や照明なども可)を提案すること。
2.想定する空間は必ず任意に想定し、その場をよく調べること。
3.インテリアデザイン、ランドスケープデザイン、建築、照明、アートなどのジャンルは問わな
い。


■東京工芸大学広告&ソーシャルデザイン研究室

●課題名・担当教員:「社会問題を可視化して、社会に拡散するアイデアを考える。」福島治
SDGs※をテーマとして研究、制作を行っている。本展では前期課題の制作物を展示。
前期はSDGsにある17項目から自分が関心のある社会問題を選び、それを具体的に伝えるデータ
を探し、インフォグラフィックスで表現する。
※「持続可能な開発目標」の略称。17のゴール・169のターゲットから構成されている。



■東北大学工学部建築・社会環境工学科都市・建築学コース建築設計D(7セメスター授業)

●課題名・担当教員:「アブダビに美術館を設計する」浅子佳英、五十嵐太郎、藤山真美子
Tate ModernもしくはMoMAの分館がアブダビ・サディヤット島に建設されることとし、どちらかを選択し設計を行う。サディヤット島は、昨年オープンしたルーヴル・アブダビをはじめ、多くの美術館・博物館が著名建築家らによって計画されている。近年、アブダビに限らず、美術館は観光客と切り離せないものになっており、この現状を観察し、新たな美術館の在り方を提案する。



■法政大学デザイン工学部システムデザイン学科インタフェースデザイン研究室

●課題名・担当教員:「物理的要件と造形美のアブダクション的調和と実践」土屋雅人
「デザイン工学の視点から新しい価値を創造する」ことを標榜しているシステムデザイン学科では、物理的要件を満たしつつ美しいフォルムを追求する造形課題を行っている。アイデア検討の試行錯誤の中で、与えられた物理的要件を満たす設計解をアブダクション(仮説推論)的に構築し、美しさとの調和を図ったコンポジション(構図)を創出する。



■武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科

●課題名・担当教員:「基礎実習」・「表現実習」十時啓悦、伊藤真一、稲田真一、大村俊二、鈴木洋、田中桂太、中原俊三郎、西川聡、山中一宏、鈴木純子
●課題紹介:
クラフト、インダストリアル、インテリアのすべての領域に共通する造形、色彩、構成の感覚や、考え方、伝え方などを学ぶことを目的として、「基礎実習」と「表現実習」という授業を行なっている。
二つの授業は、学生たちに大きく二つのメリットがあり、一つ目は、将来の方向性を決めていく学生にとって、様々なモノづくりを実際の制作を通じて学ぶことで、専門に分かれてからの造形に対する考え方を広げてくれ、二つ目は、将来の進路を決める際に、先輩と直接話をし、教員や作家、プロのデザイナーと直接話をすることで、自分に合った専門領域をしっかりと考え決断することが出来る。


ムサビが一番ゼミっぽくないですね(笑)
でも「特色ある授業」ってことだと、「クラフト+工業デザイン+インテリア」を一色単にした工芸工業デザイン学科ほど特色ある学科はないわけで、その基礎実習をセレクトさせてもらいました。

展示なのでどうしてもアウトプットに目がいってしまうけど、その授業の課題テーマやアプローチ、プロセスなどを見ると、「ああ、考えることがデザインなんだな・・」とわかってもらえるんじゃないかと。

今回は1回目のゼミ展。
テストケースみたいなもので、各大学によって「ゼミ」の考え方が違うことがわかったり、私たちもいろいろ勉強になりました。第2回、3回と続けていくとこの展覧会の特徴が出てくるんじゃないかと思っているので、来年もやる時にはぜひ他大学さんも参加ください。
・・・今気が付いたけど、東京造形大さんは参加してないのね・・・声はかかってるはずなんだけどなあ・・・。



ところで。
藝大が10月にこういう展覧会をやります。
幼稚園から大学まで美術教育の流れを体感する展覧会- 全国美術・教育リサーチプロジェクト2018 -「 美術の授業ってなんだろう?」
「幼稚園から大学まで、どのような『美術の授業』が行われているのか?」を見せる展覧会で、ムサビも協力させていただいてます。
今までずっとバラバラにやってたけど、「美術・デザイン教育プロセスやスキルのアーカイブ化・共有化」の必要性や面白さをみんな感じてるのかもしれません。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。