芸術系大学 女性教育・研究者シンポジウム「女性のアーティスト・研究者はどのようにキャリアを築いていけばよいのか?」に行ってきた

2018年5月27日(日)

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5月26日(土)、午前中は

あかりちゃんの運動会へ。
リンクロウから数えて11年、手羽にとっても最後の小学校運動会でした。

リンクロウの時と比べたら「騎馬戦や組体操が無くなった」「明日やるかどうか学校からメールで流れてくるようになった」という変化もあるけど、一番大きいのは手羽が一年で一番嫌なパパ業務だった「場所取り」が無くなったことです。
朝並ぶのはまだいいんですよ。でも正門開いたと同時に走り出すパパさんの中で、どうしても手羽は走ることができなくて。子供への愛情度を試されてる気がするけど「そこまでして運動会で場所取りしてビデオ撮りたいか?」と。毎年運動会の朝は憂鬱でした(笑)
でも去年から全席立ち見になり、ゴール付近とか一番いい場所は「学年優先スペース」になって、競技してる学年の親御さんが代わる代わる入るようになったのです。手羽が夢見てた状態。こっちの方が合理的。

ただ、そうなったらなったで寂しいのは「自分の子供の学年の時しか見なくなる」ってことで。
シート敷いてのんびりしながら他の学年の競技も見て、知らない児童でも頑張ってる子がいたら拍手して応援したりするのが醍醐味だったんだけど、それが完全になくなりました。子供の競技が終わるとササっと後ろに下がってビデオチェックしてる人の多さといったら。
小学校の運動会って「地域の運動会」でもあり、長い目で見たらはたしてどっちがいいんだろう、と。ビデオカメラが地域を壊してるのかもしれない。


今年はあかりちゃんはリレー選手に選ばれなかったので(手羽家全員、太ってるわりには足が速いんです)、午後はほとんど競技がなく、手羽はこちらへ行ってきました。

東京藝術大学!
久しぶり・・と書こうと思ったけど3月にもアソシエイツ発表会で来てるんでそうでもなかった。

まずは恒例の学内張り紙チェック。


  • さすがグローバル校!


  • 帝都芸術大学剣道部が舞台の「君が描く空」という小説。


  • さすが講師陣が豪華・・。


  • 26日からこちらの展覧会も始まりました。仕事で7月中に藝大へ行く機会があるんで今日はパス。

この画像を見るたびに兵器ブリオンを思い出してしまうHUNTER×HUNTERファンは多いはず。


で、藝大に何しにきたかというと、

東京藝術大学 ダイバーシティ推進室主催の
芸術系大学 女性教育・研究者シンポジウム「女性のアーティスト・研究者はどのようにキャリアを築いていけばよいのか?」
を聴講しにきたのです。
藝大の岡本先生、女子美の内山先生は芸術系大学コンソーシアムでお世話になってるし、そこにムサビから内田あぐり先生が登壇するっと聞いて行かない美大愛好家はいないっしょ。個人的に昔から気になってる疑問もあるし。

さすがダイバーシティ推進室主催だけあって臨時託児ルームが用意されてました。


第1部は

東京藝術大学理事・ダイバーシティ推進室長で、クローズアップ現代のキャスターをされてた国谷 裕子さんによる講演「今、女性の活躍に向けて伝えたいこと」

ポイントとなるのがやはりSDGs
SDGsとは、2015年国連サミットにおいて加盟国193か国が全会一致で2030年までの15年間で達成するために掲げた目標です。手羽もちょっと前に勉強したばかり。

最近この図をよく見かけるんじゃないでしょうか。

日本が極めて遅れていると言われてるのが、持続可能性等の他に「ジェンダー問題」があります。
ジェンダーギャップ指数(男女平等指数)で日本は2010年に世界144カ国中94位でした。これを上げようとしてるけど、2016年は114位と更に順位を下げています。ちなみに1位がアイスランドで中国が100位。中国より下なんです。また、世界20ヶ国の主要企業の女性役員比率はヨーロッパは約20~40%なのに対し、日本はなんとダントツ最下位の3%。日本も頑張っているんだろうけど、それ以上に海外の方が解決にむけて真剣に取り組んでいるってことですね。

ただアメリカの女性役員比率は18%で既に頭打ちになっていて、何が壁になっているのかスタンフォード大学が研究したところ、結婚・育児の両立の難しさの他に「職場での評価(考課)方法」がポイントがなっていることが見えてきたそう。
男性上司が男性部下を考課する時は「これがいけなかった。あれが良かった」とかなり具体的なアドバイスをする一方、女性部下には傷つけたくない優しい気持ちから「スムーズにできたね」とあいまいな表現を使う傾向にある。これが裏目となって、女性部下が「自分の強み」を理解しにくい状況になり、「やりがい」「期待されている感覚」が薄くなって女性本人の中に「管理職になりたくない」という気持ちが生まれてきてるのも一つの原因なんだとか。また「リーダー」の定義がそもそも女性には不利にできているのも関係してる。

ダイバーシティの世界では、ハーバード大学・ロザベス・モス・カンター教授による「黄金の3割」理論が有名です。「構成人数の30%を少数派(マイノリティ)が占めると意思決定に影響力を持つようになる」と言われており、日本も「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」と高らかに宣言しています。あと2年、はたして3割を超えることはできるのだろうか・・・というお話。

さすがプロというか、この難しい話を時間どおりに話されてました。

第2部は岡本先生司会で、ムサビ・内田あぐり先生、女子美・内山博子先生、東京音楽大の岡田敦子先生、桐朋学園大学の金子仁美先生、そして藝大から熊倉純子先生と福中冬子先生によるパネルディスカッション。

最初に岡本先生から芸術に関する興味深いデータを見せてもらいました。

藝大の教員女性比率は43%だけど、上位職(専任講師・准教授・教授)における女性率は20.8%。

シンポジウムに参加してる大学の上位職割合はこうなります。
ちなみに美術系大学の女性学生の割合はどこも7割ぐらい。学科によっては8割超えるところもあり、学生の男女バランスはとっくにそうなってるのに、教員の男女バランスはまだまだこんな感じなのです。


また、作家として見た場合も


  • 東京の有名現代ギャラリーに所属する女性作家の割合はこうなります。


  • これは日本だけじゃなくドイツのアート界も女子学生が55%なのに対し、女性教授は18%。


  • 海外美術館の収蔵作品における女性作家割合もこんな感じ

音楽だと、

「アメリカでヒットした楽曲の女性アーティストの割合」というデータがあります。

こういうデータを見たあとに、登壇者が一人ずつ自己紹介もかねて自分のキャリアの話をされました。

こちらは東京音大・岡田先生のデータですが、日本の私立音大の女性比は69%なんだそう。
美術系大学とほとんど割合的には変わらないんですね。

と自己紹介が終わったところで1時間経過。

ここからディスカッション・・・てな展開。

手羽はこの後行かなくちゃいけないところがあって途中退席したから最後まで聞けてないのですが、恐らくあの流れと残り時間考えると多分女性のキャリアの話ではなく、「美大・音大の現状、問題点、今後学生に求める力」を話して終わったんじゃないかと推測してますがどうだったかしら。


あ、そうだ。
男女参画ってことだと、月曜に東京工業大学に打ち合わせに行ったんですが、その会議室の中に

「会議は17:15まで」というポスターが貼られてたんです。
大学は教員含めた会議だと授業の関係で「18時からミーティング」とかが時々発生します。手羽は家の都合で週に2日ぐらい早く帰らないといけなくて、先にわかってたら対応できるんだけど急に決まると先に帰るしかなく。んでそこで結構大事なことが決まることがあってね。
こんなポジションなのに打ち合わせに出れなくてほんと申し訳ないっすと思いつつも「・・・黄金の3割か・・」と思ったり。

最初に書いた手羽が持ってる疑問っていうのが、「なんでアート・デザイン系審査員は男性ばかりなんだろ?」でして。不思議に思ったこと、ありません?

例えば、若い人を対象とした現在募集中のコンペでパっと手羽が思いつくものを見ていくと、シェル美術賞2018とミッドタウンアワードのアートコンペは5人中2人が女性だけど、ミッドタウンアワードのデザインコンペは5人中1人、第19回 グラフィック「1_WALL」コクヨデザインアワードFACE 2019 損保ジャパン日本興亜美術賞も5人中1人だし、シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションにいたっては特別審査員含めて7名全員男性です。
第14回ピンクリボンデザイン大賞みたいな乳がんがテーマのコンペだと6人中4人が女性になるけど、審査員長は男性だったりします(たまたまだと思いますが)。
美大生の7割が女性でターゲットがそのあたりの世代なら女性比率を上げるべきなのに、なんでだろう、と。「美大教員上位職が男性ばかり」ってのも少なからず関係してるとは思いますが。
このあたり、もう一度ちゃんと調べてみるかな。

審査員を普通に決めると男性ばかりになっちゃうんで「女性を1人ぐらい入れたいよね」で「●人中1人」と数字になりやすい、という話を聞いたことがあります。
でも、「審査員にお願いできるような知名度の高い女性プロダクトデザイナーの名前を挙げろ」と言われたら・・・すいません、私も柴田文江さんぐらいしか思いつかないんで批判は全くできないのだけど、にしてももう少しいてもいいんじゃないかと。
手羽が学生時代よりも美大の女性比率が上がってるから、もう10年ぐらいしたら審査員の半分ぐらいが女性ってことになるのかな。
このあたりのことも聞きたかったので、次回あればまた参加させてください。
あ、次回は登壇者4名ぐらいでいいんじゃないかと(笑)


以上、途中で退席して内田先生からシンポジウム直前にもらった日経日本画大賞展の招待券をもって上野の森美術館にむかったら

5時で閉館してた手羽がお送りいたしました(涙)

手羽は泣きながら六本木に車を走らせるのであった。
26日の話はもう少し続く!


そうそう。
隣に座ってた女性からいきなり「ムサビの方ですよね?もしかして手羽さん?」と聞かれ「え。あ、そうですけど」と答えたら「私、2015年のムサビの卒業生で卒業制作の時、手羽さんのブログで作品が紹介されたんです」というビックリイベントも発生してました。現在は作家活動をされてるそうで、登壇されてる先生方とつながりがあるわけじゃないけど気になって参加されたんだとか。
世の中、狭い・・。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。