【デザインの定義】シンポジウム「日本のデザイン資源を考える」@文化学園大学に行ってきた

2018年1月24日(水)

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1月20日(土)、奥さんから借りた電動自転車をこいで25分、

文化学園大学さんの新都心キャンパスに行ってきました。
手羽家から一番近い美大。
ちなみに女子美杉並キャンパスやタマビ上野毛キャンパス、東京工芸さんは車で約20分、タマビ八王子キャンパスや東京造形さんは高速使えば1時間かからないし、乗り換えも1回ぐらいしかありません。
美大愛好家としてたまたま便利な場所に住んでて、家から一番不便なところにあるのがムサビだったりするんですが(ぼそっ)


ここで文化学園大学さんの紹介を簡単に。
日本で最初にインテリア分野の学科を作った大学。
あ、「文化学園?文化女子大と違うの?」と思った方、正解!
以前は「文化女子大学」でしたが、2011年に「文化学園大学」に名称変更し、2012年に共学化されました。
また、以前小平にキャンパスがあったので文化学園さんとムサビは小平市大学連携協議会仲間ではあるんだけど、2015年に新都心キャンパスへ全面集約され、現在小平キャンパスは学生寮とサークルで使ってるくらいになってます。

新都心キャンパスは新宿駅から徒歩7分という最高の立地にあって、カメラの望遠使わずに撮った景色もこんな感じ。
住所的にはここは渋谷区だから「新宿」ではなく「新都心キャンパス」という名称を使ってるんじゃないかと思いますが、完全に新宿キャンパスです。

甲州街道沿いにあるんで手羽は毎週のように文化学園さんの前を車で通ってます。
でも小平キャンパスは何度か訪問したことがあったんですが、新都心キャンパスに行くのは初めてで。これで関東の美大の全キャンパスを制覇したことになりました。てへ。

今回訪問して初めて気が付いたことがいくつかあって。
文化学園さんは最初の写真の建物だけかと思ってたら、

向かって左側のビルの名前が「新宿文化クイントビル」。
施主が文化学園さんを主体とした5事業者だからこの名称がついたそうだけど、1階には

文化学園服飾博物館があります。
今は「寒さと衣服」という企画展をやってたんで見てきたんだけど、これがすばらしい展示で。簡単に言えば世界の民族衣装等の防寒具が展示されてるわけですが、スタイルとか色味とか東京でもオシャレに着れそうなものばかりで、ファッションを勉強してる人は見といた方がいいっす。

で、文化学園さんはビル1棟の中で全部やってるもんだと思ってたんだけど、

裏側にも建物がいっぱいあることを今回初めて知りました・・。

模型で見ると、白いところが文化学園さんの建物なんです。
甲州街道側からしか見たことなかったら全然知らなくて・・。

あ、「文化学園さん」と書いてきましたが、厳密には「学校法人文化学園の建物」ですね。
というのもこの新都心キャンパスは

学校法人文化学園が運営する「文化学園大学・文化学園大学短期大学部」「文化服装学院」「文化ファッション大学院大学」「文化外国語専門学校」の4つの学校で構成されているんです。

キャンパスを見ながら紹介していきましょう。


  • 国費留学生のための「文化外国語専門学校」。


  • 奥の建物がファッション分野で日本唯一の専門職大学院である「文化ファッション大学院大学」


  • 徒歩1分ぐらいのところに体育館と


  • 学生会館(クラブハウス)があります。


  • 学生会館にはおしゃれなカフェも併設

キャンパスマップではこんな感じ。


さて、いよいよビルの中に入ってみましょう。
甲州街道から向かって左側の建物が文化学園大学さん。

入学相談室。こういうドレスがデーンとあると圧倒されますね。


  • あ、今日は勝手にキモノの日だ。


  • 25日はブランドビジネスモデルの公開発表会があるらしい。

 
そして甲州街道から向かって右側の建物が文化服装学院さん。
うちの奥さんはテキスタイル出身なので「これから文化学園に行くの?それってブンプクのこと?」と聞いてきました。業界では文化服装学院のことを「ブンプク」というらしいし(違ってたらすいません)、大学と専門学校をごっちゃに思ってる人も多いかもしれませんね。

日本で最初に作られた洋裁学校でもあり、美大からも一目置かれる存在にある専門学校です。
卒業著名人はコシノジュンコ・ヒロコ姉妹、高田賢三、NOGO????、ヨウジヤマモト 、ドン小西、皆川明、津森千里、ピーコに清川あさみ、とファッションに全然興味がない、ラウンジスタッフから「ミッドタウンの懇親会でAesopギフトセットが当たった」とメールが届いたので、近くにいたABさんに「エイソップって何?」と聞いてドン引きされるくらいの手羽でさえ知ってる名前ばかり。
また、ファッション雑誌の草分け的存在である『装苑』を1936年から70年間ずっと出し続けてるのはほんとにすごいし(今年から隔月刊になるらしい)、装苑賞も現在活躍されてる方が多く受賞しています。


  • 文化服装学院ファッションデザインコンテストの作品が並んでた。ん。後ろに審査員のコメントが貼ってあるぞ。


  • あ。空デの津村先生だ。

時間は12時。
始まるまでもう少し時間があるから、恒例の学食チェックでもするかな。

あ。ダメなのか・・・。
でも、それもそうですよね。新宿駅から徒歩7分の場所で一般も利用可にしちゃうとそれこそ学生さんが食べられなくなっちゃう。学食を開放するのが今時ではありますが、「ほんとの都心キャンパス」では考え方が違うってこと。

学生ホールでは食事したり、制作したりしてた。
こういう場所で洋服を作ってる姿は新鮮。


ずいぶん前置きが長くなりましたが、美大愛好家なんだからすいません(笑)

文化学園さんに何しにきたかというと、

「—文化庁アーカイブ中核拠点形成モデル事業報告— シンポジウム 日本のデザイン資源を考える」
に参加するためでした。

文化庁からの委託事業として京都工芸繊維大学・文化学園大学・武蔵野美術大学の3大学が、それぞれグラフィックデザイン、ファッションデザイン、プロダクトデザインの現状調査・分析、アーカイブ資料保存・利活用やネットワークづくりを3年間やってきました。
その活動報告が行われたんです。

国立デザインミュージアム構想の話が2012,2013年頃に立ち上がり、これは推測ですが当時の青柳文化庁長官の指示のもと国立のデザイン美術館設置に向けての事前調査という形で始まったのがこの事業なんじゃないかと。
タマビ80周年式典の時に青柳さんが「文化庁長官室の家具を全部深澤直人さんにセレクトしてもらった」と言ってたっけ。それくらいデザイン好きな方だったんで、青柳さんがまだ長官をされていたらもっと早いペースで進んでいたかもしれませんね。
でも、文化庁的には国立アイヌ民族博物館建設が最優先にあり、デザインミュージアムはその次ぐらいじゃないかという噂もあります。だから今は下準備作業。


  • 文化庁芸術文化官の方がご挨拶


  • 京都工芸繊維大学の並木教授より事業紹介、平芳先生がグラフィックデザインの事例・調査報告


  • ムサビの田中正之先生がプロダクトデザイン分野の調査報告と利活用について。


  • 最後に文化学園大学の 田中直人先生がファッションデザインについて

しかし、告知期間が短く、土曜の昼間で、よくこれだけ人が集まるもんだなあ。
後で聞いた話だと大学関係者はそんなに多くなく、研究者などが中心だったそう。あ、日本デザイン振興会の方もいらっしゃってましたね。


すごく興味深い話ばかりだったんですが、全体的に思ったことは2つあって「アーカイブって難しいなあ」「定義付けって難しいあなあ・・・」かな。
すいません。長々書いてきてこんな結論で。

例えば、グラフィックデザインだと多くは広告として作られるものだけど「キリンビールのポスター」で検索してもいろんな年代のものがあるし、言葉だけでは探したい情報にたどり着けない。といって画像を表示させると著作権の問題にぶつかってしまう。
ファッションデザインも恐らく「こどもの着物」というキーワードで検索するだろうけど、資料名は「一つ身」「四つ身」だったりするわけで、正式名称と一緒に通称等を入れておかないと使えないデータベースになってしまう。

また、例えばプロダクトデザインの調査をする前に「てかプロダクトデザインって何?」と定義付けをしないことには調査のしようがない。でも「これです」とはっきり言えるものは存在しないわけで。そもそもムサビの工芸工業デザイン学科にあるのは「インダストリアルデザイン」ですし(笑)
この「答えは一つじゃないけど決めないといけない」作業の大変さをいろんな人が理解してたら、世の中もっと平和になるんだけどなあ、と。美大ってまさにそれを学ぶ場。

「プロダクトデザインとは何か?」をはっきりと定義付けできなかったけど、「プロダクトデザインをコレクションするにはこういう絶対条件と選択条件が必要」と決めたそう。課題発見で終わるんじゃなくて課題解決に向けたこういう前向きな作業大好き。

どうしても公式なアーカイブとなると「間違った情報を出しちゃいけない」というのがあって、そこがなかなか公開に踏み切れない最後の大きなハードルになるけど、大英博物館では公開してるデータベースに「間違ってたら教えてちょ」とメールクリックボタンが各項目についてるそう。今はそういう集合知的な発想のアーカイブで進めていくのがベストですね。

発表のあとは会場レイアウトを変えて「デザイン・アーカイブの現状と課題」のディスカッションが行われました。


冒頭の文化庁の方の言葉をそのまま使うなら、「3年間ほぼ文化庁から丸投げ状態」で実施された事業で大変だったと思いますが、京都繊維さん、文化学園さん、それとムサビ美術館・図書館関係者の皆さん、お疲れ様でした。

この3年間の成果はこちらで公開されていて、それぞれ検索もできます。
アーカイブ中核拠点形成モデル事業 | Core Archive Center Creation Model Project
プロダクトデザイン・データベース
展覧会データベース
デザイン資料所蔵機関
まだ完ぺきではないですが、ここまでのものはまだ存在しないはずなので、どうぞご活用ください。

あ、そうそう。
デジタルアーカイブといえば、ムサビ美術館・図書館がiOSデバイス向けアプリで出してる
MAU M&L 博物図譜
がよく話題になってますね。年に二回ぐらい「これが無料?!」バズってる感じ。

さらに新しいアプリが二つ
MAU-PIAZZA VRムサビキャンパス—芦原義信による初期校舎をめぐる
やきものの在処
公開されてるんで、どうぞよろしくお願いいたします。

文化学園さんの卒展もどうぞよろしくお願いいたします。


以上、前を通るたびに「あ、ここにあったんだ」と思いつつ通り過ぎてた

地方相談会などでお世話になってる「さんぽう」さんを撮影できてうれしかった手羽がお送りいたしました。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。