2020年、東京発。世界を驚かせるアイデアを募集【後編】

世界に向けて自分のアイデアを発信できる「Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募」。そのポイントについて、前編に続きアーツカウンシル東京の機構長・三好勝則さんにお話を伺った。特に若い人にとっては、この公募へのチャレンジは将来アート活動を続けていくための大きな足がかりになるだろう。

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前編はこちら


ふだんアートに触れていない人にも届けたい

芸術文化というものは、特定の人たちに向けて、特定の場所にあるものと捉えられがちです。美術作品は美術館に行けば見られるけれど、行かない人にとっては接点がない。劇場では毎日のように演劇公演が行われていますが、残念ながら一度も観劇したことがない人も少なくないと思います。


  • 2017年9月30日(土)〜10月1日(日)に開催された「六本木アートナイト2017」。写真は多数あるプログラムのひとつ、ナウィン・ラワンチャイクンによる「OKのまつり」

芸術文化の根本的な価値というものは、言葉でいくら並べても伝わらないんです。アートが好きで、日常的に触れている人を大切にすることももちろん大事なのですが、普段自分には縁がないと思っている人にも「こんなにおもしろいことをやっているんだ」と感じてもらいたい。そういう現象が街のいたるところで生まれることは、街の住みやすさにもつながると思います。

「住みやすさ」というのは、もちろんバリアフリー的な意味合いもあります。でもそれだけではなくて、「この街にはいろんな楽しいことがあるよね」と感じてもらえるようにすることが、まさに「街づくり」なのではないでしょうか。そのなかで、アーティスト同士の新しいコミュニティが生まれることもあるでしょう。2020年の「Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募」はそういった芸術文化の高揚を、みなさんに感じてもらうためにやろうとしていることなんです。


  • 毎年秋に、茶道に馴染みのない初心者や、外国人などから上級者まで一般の方を対象にした大規模な茶会「東京大茶会」を開催。写真は2017年開催時の様子

世界から注目を集めるというのも大きな特徴ではあるのですが、東京にいる人たちにも「芸術文化っていいね」「あんなことをやってる人たちがいるんだ、じゃあ今度見に行ってみよう」と感じてほしいですね。ですから公募する企画に関しても、より多くの人に芸術文化というものを感じ取ってもらえるもののほうが、評価としては高くなるだろうと予想しています。

あくまで内容優先で審査しますが、実施する企画の数は20〜30件を想定しています。大規模で派手なものだけではなく、規模が小さくても、新しい発想が埋め込まれているものであれば採択される可能性は十分にあります。そうすると大中小、いろんな規模のものが出てくるでしょうから、ある程度の数が揃ったほうがいいのではないかという考え方です。もちろん、いい案がたくさんあれば、もっと多くの企画が実現できるかもしれません。


  • 2017年11月開催の「MUTEK.JP」は「東京文化プログラム助成:気運醸成プロジェクト支援」の枠組みでサポートを行った MUTEK.JP/Photo:SHIGEO GOMI, RYU KASAI




ベテランのアーティストにはない自由な発想を

アイデアを実現するために、自分以外の人とどうやってつながり、いかにして巻き込んでいくか。そういうノウハウは、当然、経験が多ければ多いほどわかってくるわけですよね。ところが今回の公募では、さまざまな人の手を借りることができる体制があらかじめ用意されているわけですから、経験のない人でも、ベテランの人と同じようなことができるかもしれない。

経験を重ねると、企画段階で「これは実現できないだろうな」と判断してしまうことも多くなってくるものですが、若い人は経験が浅い分、それこそ“世界初”になるような新鮮なアイデアを提供してくれるだろうと期待しているんです。

通常のコンペの場合、内容がほぼ固まっていて、応募者が実施できるかを評価します。でも今回は企画を実際にかたちにするわけですから、それを成し遂げる力をつけていけるかどうかも判断していく必要があります。提案内容でその人がもつ発想力と遂行力をさぐり、我々が一緒になってそれを実現していく。短期的な評価ではなく、時間をかけていろいろと経験してもらいながら、文化の担い手を育てていくという側面ももった事業なのです。




将来の活動へとつながるターニングポイント

今回の事業によって、助成事業だけではカバーしきれない領域にも手が届くのではないかと考えています。というのも、多くのアーティストの方とお話しするなかでよく感じるのが、これまでに大きな転機があった、ジャンプアップしたという経験をお持ちの方が多いんですよね。「Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募」は、そういうジャンプアップができるきっかけになるでしょう。

表現活動を長く続けていきたいのなら、今なにがほしいのか、自分に不足している力はなんなのかをしっかりと認識したうえで、場合によってはまったく新しいジャンルに踏み込んでみる。企画を考えること自体が自分を見つめ直す機会になると思いますし、もし企画が実現されれば、人生の非常に大きなターニングポイントになるでしょう。そこから、将来の活動につながる道が開けていくはずです。

初めての試みなので、企画者だけではなく、私たちにとってもステップアップになると思います。一緒に取り組めば、より大きなことができる。その重要性をみなさんにもっと知ってもらえれば、東京の芸術文化はもっと盛んになっていくはずです。

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▼Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募

◎応募書類受付期間
2018年2月1日(木)~2月28日(水)

◎募集内容
1.対象分野
音楽・演劇・舞踊・美術・写真・文学・メディア芸術(映像、マンガ、アニメ、ゲームなど)・伝統芸能・芸能・生活文化(茶道、華道、書道、食文化など)・ファッション・建築・特定のジャンルにとらわれない芸術活動(複合)等

2.期待する企画内容
以下のような目的をもった企画を募集します。

・インパクトある芸術創造
国際都市東京を世界にアピールできるクオリティがあり、21世紀の芸術文化を牽引する挑戦を感じる。また、芸術性・話題性があり、国内外への発信力がある。

・あらゆる人々が参加できる
世代、国籍、障害などを超え、誰でも参加できる。また参加の仕方やプログラムに工夫があり、参加者にとっても記憶に残る体験を提供できる。

・アートの可能性を拡げる
社会課題に向き合うことで、アートの新しい可能性を拡げることにチャレンジしている。また、アートの視点を活かしたユニークな社会に対する問題(課題)提起力・発見がある。

3.事業規模
委託事業費の限度額は数百万円から2億円を超えない範囲
※協賛金や自己資金など、他の収入を含めた事業規模についてはこの限りではありません。

4.実施場所
東京都内

5.対象期間
2019年秋から2020年9月までの間に実施・終了する企画

6.応募について
個人・グループ・団体・法人(NPO・実行委員会・企業等)の方々、基本的にどなたでもご応募いただけます。

7.対象とならない活動
・宗教的又は政治的な宣伝・主張を目的とするもの
・展示物、制作物等の販売活動を主な目的とするもの

特設サイト:http://ttf-koubo.jp

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撮影:広川智基/聞き手・執筆:平林理奈

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