2020年、東京発。世界を驚かせるアイデアを募集【前編】

芸術文化の夢がふくらむ。アーツカウンシル東京の「Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募」は、分野を問わず、経験が浅い人でも大規模なアートイベントが開けるチャンスだ。舞台は、世界から注目を集める2020年の東京。この公募の魅力や意義について、アーツカウンシル東京の機構長・三好勝則さんにお話を聞いた。

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芸術文化のチカラで2020年を盛り上げる

アーツカウンシル東京は、東京のさまざまな芸術活動を支援している組織です。活動経費の助成や環境整備のお手伝いなどのほか、アートイベントを主催することもあります。そのひとつが、2020年の4月から9月までの期間に、「Tokyo Tokyo FESTIVAL」として東京で芸術文化プログラムをたくさん開催しましょうという事業。今回、この「Tokyo Tokyo FESTIVAL」で行うプログラムの一部について、企画を広く募集することになりました。

2020年はオリンピック・パラリンピック東京大会が開催される年です。近代オリンピック憲章ではもともと、スポーツと同列で芸術文化が謳われている。つまり、スポーツで参加する人もいれば、芸術文化で参加する人もいるのがオリンピックというわけです。そういう前提がありつつ、東京が世界から注目を浴びる2020年が、何十年も先までみなさんの記憶に残るような年になってほしい。そんな想いが基盤になって、「Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募」は立ち上げられました。

東京を盛り上げる芸術活動として、「これはぜひ2020年にやるべきだ」と思える企画を一般の人から提案してもらうという、まったく新しい試みなのです。


  • 共催事業のひとつである「TOKYO数寄フェス」。上野恩賜公園と周辺文化施設を舞台に、アート作品の展示やコンサートを展開。写真は2016年開催の様子




他ジャンルのアーティストやベテランと組めるチャンス

広くいろいろな人からの提案を受けられるように、分野はほとんど限定していません。いわゆる芸術文化と呼ばれるものであれば、食文化まで含めて幅広い活動領域で、かつ誰でも応募できるというのが特徴のひとつです。開催地が東京でさえあれば、東京に住んでいない人でもかまいません。海外からの応募もOKですし、外国人の方も応募できます。

特に、今までは小さい規模でしかやっていない、もう少し大きな規模でやってみたいという若い人たちにとっては非常に大きなチャンスになると思っています。また「Tokyo Tokyo FESTIVAL企画公募」は、提案してもらった企画をアーツカウンシル東京や東京都も一緒になって練り上げていくため、我々も意見したり、手伝いをしながら、みんなでつくり上げていくというのもほかの事業にはない特徴です。


  • 今年度、「東京文化プログラム助成:市民創造文化活動支援」で助成した「エレクトロニコス・ファンタスティコス!〜本祭I:家電雷鳴篇〜」 Photo: Mao Yamamoto

企画内容によっては、我々がさまざまな業界に「こういう企画があるから一緒にやりませんか」と声をかけて人を集めることもできます。たとえば、美術だけをやってきた人が、音楽や演劇や舞踊といった、他ジャンルの人と一緒に作品づくりをしたいというケース。自分たちの力だけでは声をかけるのが難しくても、私たちがプロジェクトに入ることでそれが可能になるかもしれません。また、それによって、より大きなつながりが生まれていくことも期待しています。たくさんの人とつながりながら芸術作品をつくっていくための、新しいシステムになるかもしれませんね。

まだ経験が浅い人であっても、問題意識やなにが壁になっているのかということがちゃんとわかっていれば、魅力的な提案ができるはずです。「ここまでは自分たちでできるけど、ここから先は一緒にやってもらいたい」という提案でもかまいません。どういう人と一緒にやりたいのか、実現のためになにが必要なのか、それによってどのくらいのお金がかかるのか……そういうことがきちんと練り上げられた企画であれば、採択される可能性は大いにあります。




さまざまな規制や制限を超える可能性も

企画が採択されることで得られるメリットはさまざまですが、やはりいちばん大きいのは、世界中の人に自分のアイデアや表現をアピールする絶好のチャンスだということです。世界の人たちに見てもらうことを前提にしていますので、非常に大きな舞台が用意されていると捉えてください。


  • 今秋に開催された「フェスティバル/トーキョー17」のオープニングプログラム「Toky Toki Saru(トキ トキ サル)」 Photo:Takashi Fujikawa (Alloposidae)

主催はアーツカウンシル東京と東京都ですが、企画者名は必ず明示します。ひとりでもいいし、グループでもいい。表現形態も実にさまざまなものがあると思います。ただ、「実現可能性のあるもの」というのを要件にしています。たとえば、「ロケットに乗って月でパフォーマンスします」というのは、2020年時点の技術を考えると現実的に難しいでしょう。

一方で、「通常だと法律の規制があって実現できない」という場合、どういう目的で規制がすでにあって、実現するためにはどういう壁があるのかという点が明確になれば、規制を取り払う可能性もあります。たとえば、「目立ちたいから渋谷のスクランブル交差点でやりたいんです」というのでは難しい。そうではなくて、なぜ渋谷のスクランブル交差点でやることに意味があるのかをきちんと説明できて、なおかつそのときにどういう課題が生まれるのかということをある程度わかったうえで提案していただければ、実現できる方法を一緒に考えていけると思っています。

選考の手順としては、アイデアを選り分けたうえで、実現可能性を検討し、一緒にリサーチをして考えていくという流れです。その結果、「これは今の段階では難しい」となる場合があるかもしれませんが、まずはアイデアを提案してもらうことが重要だと考えています。




今、世界が求めているものはなにか?

企画を練るにあたって、「今、世界はなにを求めているのか」ということをぜひ考えてほしいですね。なぜ今、その表現を世界に向けて発信したいのか、あるいは訴えたいと考えているのか。抽象的な言い方になってしまいますが、「こんなものをやったら受けがいいんじゃないか」とか、「最近話題になったことをもうちょっとふくらませてみよう」というものよりも、世界の人に「こんなにすごいことを考えている人が東京にいるんだ」と思わせるような企画を求めているのです。

ここでいう「世界」というのは決して「地球上の人間全員」という意味ではなく、たとえば結果として東京の人に喜んでもらえるものでもかまいません。とにかく、世界が注目するなかでなにをするべきかを考えていただきたい。それは、自分たちが今まで積み上げてきたものかもしれないし、あるいはまったく違うものかもしれない。いろんな分野の人と組んで、一緒につくり上げていくことで新しいものが生まれてくるかもしれない。表現活動として、2020年になにがしたいのかをしっかりと考えてほしいと思っています。

後編に続く


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▼Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募

◎応募書類受付期間
2018年2月1日(木)~2月28日(水)

◎募集内容
1.対象分野
音楽・演劇・舞踊・美術・写真・文学・メディア芸術(映像、マンガ、アニメ、ゲームなど)・伝統芸能・芸能・生活文化(茶道、華道、書道、食文化など)・ファッション・建築・特定のジャンルにとらわれない芸術活動(複合)等

2.期待する企画内容
以下のような目的をもった企画を募集します。

・インパクトある芸術創造
国際都市東京を世界にアピールできるクオリティがあり、21世紀の芸術文化を牽引する挑戦を感じる。また、芸術性・話題性があり、国内外への発信力がある。

・あらゆる人々が参加できる
世代、国籍、障害などを超え、誰でも参加できる。また参加の仕方やプログラムに工夫があり、参加者にとっても記憶に残る体験を提供できる。

・アートの可能性を拡げる
社会課題に向き合うことで、アートの新しい可能性を拡げることにチャレンジしている。また、アートの視点を活かしたユニークな社会に対する問題(課題)提起力・発見がある。

3.事業規模
委託事業費の限度額は数百万円から2億円を超えない範囲
※協賛金や自己資金など、他の収入を含めた事業規模についてはこの限りではありません。

4.実施場所
東京都内

5.対象期間
2019年秋から2020年9月までの間に実施・終了する企画

6.応募について
個人・グループ・団体・法人(NPO・実行委員会・企業等)の方々、基本的にどなたでもご応募いただけます。

7.対象とならない活動
・宗教的又は政治的な宣伝・主張を目的とするもの
・展示物、制作物等の販売活動を主な目的とするもの

特設サイト:http://ttf-koubo.jp

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撮影:広川智基/聞き手・執筆:平林理奈

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