ひと夏かぎり。世界から美術ファンが集まる豊島の「檸檬ホテル」インターン

昨年の瀬戸内国際芸術祭で注目を浴びた、豊島に佇むアート作品「檸檬ホテル」。美大生のなかには、「もちろん、もう観にいったよ」という人もいるのでは。「檸檬ホテル」にひと夏滞在し、作品の管理を手伝うインターンの募集がはじまった。他にはないアートと島の魅力をたっぷり吸収できるお仕事だ。今回は、この「檸檬ホテル」について、そして、豊島に5ヶ月滞在したという美大卒業生・鈴木せりさんに聞いた、豊島で長期滞在する魅力について紹介します。

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瀬戸内国際芸術祭で話題になった、豊島に佇むアート作品「檸檬ホテル」

昨年2016年の瀬戸内国際芸術祭に、Soup Stock Tokyoでおなじみの株式会社スマイルズが、企業でありながら作家として、アート作品「檸檬ホテル」を出展した。「生活価値の拡充」を理念に掲げ、妄想と実業をもって新たな価値を提示する、スマイルズらしい素敵な事業だった。このホテルの運営のため、スマイルズの社員がご夫婦で豊島に移住したというから、またすごい。

一軒まるごとアート作品というこの「檸檬ホテル」、アート作品と言っても絵画や彫刻の展示はない。代わりに、 鑑賞者は大切な人と過ごすちょっと特別な体験を持ち帰る。 瀬戸内国際芸術祭が終わった今も、作品は鑑賞可能。さらに、ホテルなので、1日1組限定で宿泊することもできる。



レモン畑に囲まれたこの作品で、「ほほ檸檬」

このアート作品は、築90年の古民家を再構築してつくられた。
敷地内に400坪ものレモン畑が広がるこの土地、古民家前の入り口には島のレモンで草木染めした布がはためき、鑑賞スペースは淡い黄色の光に満たされる。
 


  • 出典:http://lemonhotel.jp/
  • 唐櫃(からと)地区にひっそりと佇むこの看板が目印です


 
チケットを手にしたら檸檬の世界の始まり。イヤホンガイドの指示に従って檸檬ホテルを体験する。


"ここで2名のカップルになりなさい。
相手がいない場合は、訪れるまでしばしここで待つ♡
カップルになったら、イヤホンガイドを1台とり、二人でヘッドホンを装着する。
番号を押して、流れてくる音声に従いなさい。
豊島レモンで草木染めされた黄色い部屋である檸檬写真館で、
あなたは「ほほ檸檬」をすることになる。"


引用元:檸檬ホテルオフィシャルサイト

 
謎に包まれたイントロダクションだが、参加者がインタラクティブに作品に参加し、インスタグラム上には、こんなハッピーな作品がたくさん生まれている。
 



ホテルなので1日1組限定、宿泊もできる

1日1組で貸切り、400坪のレモン畑を占有。レモン色の光に包まれた部屋で眠り、併設されたレモン小屋にて、レモンの木の下で入浴する。
 



 
ひと夏かぎり、豊島に佇むこの作品のインターン募集

アートの島・豊島に佇むこの作品で、ひと夏かぎり、インターンの募集がはじまった。
基本の業務は、檸檬ホテルの作品受付とメンテナンス。日中は、作品を訪れる鑑賞者のご案内、音声ガイドの貸出などの業務をし、宿泊者へのお部屋の準備やおもてなしの業務をする。それに加えて、豊島島内にある他のアート施設での受付業務や島内の民泊体験なども予定されている。このインターン、報酬はない。しかし、滞在中の宿泊費はすべてスマイルズが負担してくれて、 普段の生活では味わえない、その土地ならではの仕事が体験できる。



瀬戸内のアートな島で、アートと自然に囲まれて過ごす時間

瀬戸内の豊島は、本州と四国のちょうど真ん中あたり、小豆島と直島の中間に位置する、自転車でも1時間あれば一周できてしまう小さな島だ。瀬戸内国際芸術祭で盛り上がる瀬戸内の島々にもれず、豊島にも、2010年にオープンした豊島美術館を筆頭に、数多くのアート作品が点在する。
 


 
美大卒業生で、機会があってこの豊島に5ヶ月滞在した鈴木せりさん。彼女はたまたま旅行で訪れた豊島で、その地と作品の数々に惚れ込むと、翌年の瀬戸内国際芸術祭で美術館の施設運営スタッフが募集されていることに気がついた途端、飛びつくようにこの島での暮らしを決めたのだそう。
 


  • 瓦葺きの古い家に暮らす人が多い。 / 撮影鈴木せり


  • 檸檬ホテルがある唐櫃岡エリア / 撮影鈴木せり

 
「コンビニはもちろん、ATMもない。地元にはおいしいパン屋さんが選べるほどあったけど、島の商店にはコンビニにあるようなパンが売っているかどうか。正直、期間限定と決めていたから割り切って楽しめたようなところも当時はありました。しかし今でも、都心では決して味わえないような、夜の暗さだったり、曇りでも雨でも綺麗な空模様だったり、道を歩いていたら車に乗せてくれるおばちゃんだったりを思い出しては懐かしく思っています」
彼女のコメントからは、本当に豊島での時間が充実した時間、素敵な経験だったことが伝わってくる。
 


  • 朝起きてから寝るまでずっとずっと楽しかった、豊島での5ヶ月。 / 撮影鈴木せり

 
「直島・豊島には世界中の著名な作家さんの作品があるので、フランス・アメリカ・中国からと世界中の美術ファンが集まります。そんなグローバルな場所でありながら、離島ならではのめちゃくちゃローカルな感覚が同時に味わえる希少な場所。ほんの少しでも興味を持つならば、きっとたくさんの気づきや風景を持って帰れるかと思います」という鈴木さん。
今回の「檸檬ホテル」でのインターンは、そのインターンの内容はもちろんのこと、短期間ではあるものの、アーティストが持続可能な生活を送っているこの島で暮らし、アートをじっくり体験できる時間として魅力的な気がしてならない。

夏休みの時間を利用して、豊島であなたの生活価値の拠点を見つけてみませんか。



▼インターン概要
ひと夏檸檬、しませんか。

「檸檬ホテル」でのインターン募集。

掲載期間 : 2017年7月10日 〜 2017年7月24日(募集終了)




▼「檸檬ホテル」作品概要
開館時間:10:30−16:30(最終入館受付 16:00)
     ※冬季:12月~2月10:3016:00(最終入館受付 15:30)
休館日:火曜 (月、火が祝日の場合は水曜休館
     ※冬季12月~2月火・水・木曜
鑑賞料:500円税込
住所:〒761-4662 香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃984 豊島 唐櫃岡地区
URL:http://lemonhotel.jp




(執筆:上野なつみ / 取材協力・写真提供:鈴木せり)

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OTONA WRITER

natsumiueno / natsumiueno

編集者/メディエイター。美大での4年間は「アートと世の中を繋ぐ人になる」ことを目標に、フリーペーパーPARTNERを編集してみたり、展覧会THE SIXの運営をしてみたり、就活アート展『美ナビ展』の企画書をつくったりしてすごしました。現在チリ・サンチャゴ在住。ウェブメディアPARTNERの編集、記事執筆など。