い・ろ・は・すをめぐる冒険

目標が達成されると、気分はよろし。 ライターとして仕事を始めて5年ほどか。いつか泊まり込みで取材ができたらいいなぁ、とぼんやり考えていた。私生活で遠出はしたくないが、仕事で遠くに行きたいんだ。 先日、そんな望みが叶った。それを報告する「コラムニストの憂鬱」特別編。 時折、足を伸ばすのは良きこと。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今回の目的は、富山県にある「北陸コカ・コーラボトリング 砺波工場」そこで「い・ろ・は・す」の製造過程を取材することが第一、で。
次点に、名物やレジャーを堪能し富山の魅力をディスカバー。そんな役得な仕事であった。

出張の朝は早く、11時に新高岡駅集合である。そーなると朝7時に事務所を出る計算だ。普段の生活は日中逆転している。遅刻は絶対にできないので完徹で出発。
「新幹線で寝ればいいか」
と気軽に考えていたが、初めての出張とあって気分は緊張。新幹線では一睡もできず、新高岡に到着してしまった。

「い・ろ・は・すツアー御一行」と書かれたボードを持っているPR担当者を発見し、合流。数名のライターと共に、シャトルバスへと乗り込む。
バスに揺られながら「コレ、金田一の世界観だったら大変なことが起こるやつだ。ランダムに集められたライター陣は、過去の何か因縁があるんだ」
とくだらないことを思った。

駅を離れるほどに、窓から見える景色は情景へと変わる。美しい田園が心をときめきへと運ぶ。東京から随分と遠くに来たことを実感する。
そんなことを考えていると、最初の目的地「農家レストラン大門」に到着した。ここで頂くのは、大門素麺をはじめとした「ゆべす」「よごし」「具入り丸揚げ」「根菜いとこ煮」などの富山県砺波市の伝統料理。普段、雑な食生活をしている僕にとってはたまらない優しいメニューである。どれも美味しくて感激、同時にこーいった料理も愛せるようになった自分を想う。高校生の頃合いだったら「焼肉弁当食べてー」と駄々をこねていただろう。
伝統家屋で美しい木々を横目に、色とりどりの地元の食材を食す。正に地上の楽園。

腹を満たしバスに戻り、50分間のドライブ。カーブが多く、アップダウンの激しい山道を進む。若干の車酔いに悩まされつつ到着したのが「桂湖ビジターセンター」ここではカヌーを体験した。
係員「6月の初旬が一番いいんですよ。気温もちょうど良いし、夏になってくると虫もでるんでね」と話す。
いやはや「一番」と言うだけあって、素晴らしい環境であった。大学のボート部の合宿にも使われる桂湖は波も静か、カヌーデビューにはもっぱらなコンディション。しかし、僕は筋肉痛を恐れてカヌーの乗船を拒否。代わりにボートに乗り、桂湖を楽しむ。空気が美味しいとは、正にこのこと。新鮮で冷たい空気を口内一杯に吸い込む、口内炎にしみる。

続いて向かったのが、ツアーの目玉「北陸コカ・コーラボトリング 砺波工場」5万坪の広大な土地に170名が働く。現在、80種類のコカ・コーラ製品を作っている。そのなかの一つが「い・ろ・は・す」なんだ。
説明を受けてから「では製造ラインを見に来ましょう」と掛け声。衛生管理のため、全身を防護服で包む。「流石!」と思ったのは防護服のズボンを裾をしめる紐。やりすぎではないか、と想うほどに気を使っている。ここまでする覚悟があるから、口に入れる製品を作っても良いのだろう。工場内に入ってからも大変で。手を消毒し、全身に強力な風を当ててホコリを飛ばす。そんな工程を数回行なったのちに、やっと製造ラインへ入れた。
なかは、蒸し暑く、機械音が鳴り止まない。
中身 採水→殺菌
ボトル プリフォーム→ボトル形成→殺菌→フィラー・キャッパー→ラベル付→箱詰め
止まることない機械が「い・ろ・は・す」を生み続けている。いや、すごい光景であった。
製造ラインから戻り、着替えていると、コカ・コーラの方が「こんなに苦労して作られてる、い・ろ・は・すが120円で飲めっていいでしょ」と言った。僕は「いやホントその通り」と思った。
長い取材を終える。

工場を後にし、今回のホテル「富士第一ホテル」へ。部屋に荷物を置き、ご当地ラーメン「富山ブラック」を食しに街中へ。読んで字のごとく、黒々としたスープが特徴のラーメンである。ハードな仕事をする人の塩分補給が主たる目的のラーメン。本日、完徹取材をした僕にピッタリのラーメン。
無我夢中で食べるが、思った以上に醤油味が濃くなくて。そこが残念ではあったが、味は非常に満足できるものであった。
夜遊びすることもなく、早々就寝。

次の日。11時にホテルをチェックアウトし「富山県美術館」に向かった。実はココ、8月26日オープン。今はプレオープンの段階で、数点の展示と屋上の遊戯を楽しめるのみ。そんな半熟状態にも関わらず、大勢の人で賑わっていた。何もないホワイトキューブを見るのも、なかなか貴重な体験。「開館前に来てよかったなぁ」とつぶやく。
展示されていた「ありえない美術館ができるまで」の概要を見ると内藤廣氏、永井一正氏、三宅一生氏、佐藤卓氏の名前が。デザイン業界のアベンジャーズが中核メンバーなんだ。キーワードは「アート」「デザイン」「子供」
遊園地、映画館などのエンタメ施設とも戦える、現在型の美術館になりそーな予感。

屋上で佐藤卓氏が作った巨大なトランポリンで寝ていると、新幹線の時間が迫っているではないか。急いでタクシーに乗り込み、富山駅へ。
車内で「い・ろ・は・す」を飲みつつ初出張の祝杯。こうして「い・ろ・は・す」をめぐる冒険は幕を閉じた。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

ヨシムラヒロム / Hiromu Yoshimura

中野区観光大使やっています。最近、29歳になりました!趣味は読書です。