【デザインの本質】インターンシップ演習2016を終えて3

2016年12月20日(火)

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インターンシップ演習2016を終えて1
【今年のプレゼント発表】インターンシップ演習2016を終えて2


学生さんに伝えたいメッセージは変わってないので、ベースとなる部分は3,4年前からほとんど変えてません。でも、それを説明するためのネタは毎年新しいものを使うようにしてて、今年はこの数年では一番ネタ自体を変えた年かも。

去年「もう少し手羽自身の話を聞きたかった」という声があったので、といって自分の話をこれ以上長くしても(自己紹介を30分ぐらいやってるしw)仕方ないから、今年自分が体験したことを紹介しました。
今日はその話を。


今年、手羽が「この人はすごいなあ・・」と感じた人が一人います。
それは

視覚伝達デザイン学科の齋藤啓子教授です。愛称ピノさん。
全国の「冒険遊び場」のさきがけとなった世田谷区経堂「こども天国」の運営に学生時代かかわったことがきっかけとなり、地域を結ぶ造形・表現活動のワークショップ企画運営などコミュニティデザイナーとして活躍されてる方。
小平市とムサビの活動には必ずといっていいほど齋藤先生が関係してて、「異才たちのアート展」「けやき青年教室」「小平市公共施設マネジメント」「みんなでつくる音楽祭」「まちで楽しむ」など書き出すときりがありません。
 

 
「小平市とムサビの活動」と書きましたが、社会連携チームが関係してるものは少なく、そのほとんどが齋藤ゼミによる自主活動で、手羽が知る限り、ムサビの中では齋藤ゼミの学生さんが一番積極的にあちこちにでかけて、社会とつながる活動してるんじゃないかと。


んで、齋藤先生を「すごい人だなあ・・」と思った出来事はなにか。


ムサビ北門の前、平沢材木店のすぐ横に

大きな建物ができました。
気になってる学生さんや教職員も多いと思うんだけど、これはなんだか知ってますか?

今年10月にオープンした重症心身障害児(者)施設「緑成会整育園」です。
今まで小川駅前にあったんだけど、この10月に移転してきました。

重症心身障害児(者)施設とは「重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している障害者(児童)の長期入所施設」。担当者の方の言葉をそのまま使うなら「ほぼ寝たきり状態の知的障害者が100人亡くなるまで入居する施設」です。
あ、小児科の通常外来もやってるので、一般の方も利用できますよ。


で、夏ごろに緑成会整育園さんから「ムサビに何か協力してもらえないか」と相談があり、齋藤先生と社会連携チームスタッフと下見に行かせてもらったんです。

工事が終わり引き渡しが済んで、これから備品が搬入されてくる・・・という段階でした。

でも、ムサビとしてどんなことができるんだろ。
私は正直、「1人では動けない知的障害者の方に図工教室もワークショップもできないよなあ・・美大生が壁に絵を描いたり、飾ったりするぐらいしかやれることはないかも・・・」と思ってました。
でも、齋藤先生が普段言いなれてる感じでサラっとこうおっしゃったんです。

「地域の方にこの施設を理解してもらうためのワークショップが必要ですね」

これがほんとショックで。


不動産業界用語に「嫌悪施設」というのがあります。
「これが嫌悪施設です」とはっきりと定義づけはされてませんが、その存在が周囲の人に不快感を与えそうな施設 、周辺不動産価値を下げそうな施設のことを業界用語でそう言ったりします。
例えば下水処理場、火葬場、刑務所、墓地、ガスタンクなど「なくちゃ困るけど隣にあると困る」のもそうだし、風俗店等も嫌悪施設と呼ぶことがあります。
ちなみに手羽は学生時代墓地の近くに住んでたけど、確かにお盆の時期はお線香の匂いですごいことになるけど(笑)、風通しもよくて涼しいし、石でできてるから砂埃も起きず、基本的に静かだから、1年のうちの何日間かを我慢できれば墓地横ってオススメ物件だったりするんですが。

で、最近はこれに保育園や小中学校、障害者施設も入ってきてます。
保育園や小中学校の「音」が話題になってることはご存知のとおり。
夏休みに小学校のラジオ体操に参加したら、グランドの端っこにみんな固まって小さなボリュームでラジオ体操をしてて「ここまで来たか・・・」と思ったもんです。近隣住民から1件連絡があったからだそうで、ニュースは大げさに報道してることが多いけど、現実にそういう光景見ちゃうとほんとショックですよ。

でも、大学も嫌悪施設ではあるんですが「近くに大学があると文化的香りがする」「学生さんが商品を買ってくれたり、アパートを借りたり、労働力になってくれる」こともあり、保育園や小学校ほど「嫌悪施設」と呼ばれることは少ないです。もちろん「音」は問題になることが多いけど。
つまり、嫌悪感は主観的判断やイメージ、時代性に大きく影響するんですね。


普段、学生さんや高校生、場合によっては町長さんにも(笑)「絵を描くだけが美大じゃない!」と偉そうに語ってる手羽だけど、結局「美術ができることは絵を描くこと」という発想しかでてこなかったことに恥ずかしくなりました。
サラっと「地域の方に理解してもらうためのワークショップが必要」とあの場でおっしゃった齋藤先生ってすごいなあ、と。

課題発見・課題解決、これがデザインの本質だし、美術大学の教育の本質だと、改めて気が付かされた出来事だし、少しだけ自分をバージョンアップできた出来事だったんです。日々成長。


続く。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。