ベルリン、「音楽以外何をして生計を立てているんですか」と聞かれない街。

group Aという二人組のバンドでヴァイオリン、カセットテープを使ったコラージュ、映像制作などを担当しているSayaka Botanicが、ロンドンの美大時代、ベルリンでの音楽活動を眺め、ヨーロッパの活動で思うこと。

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はじめまして。group Aという二人組でヴァイオリン、カセットテープを使ったコラージュ、映像制作などを担当しているSayaka Botanicです。 東京で4年間の活動を経て 2016年、今年の頭にベルリンに活動拠点をうつし 音楽活動をしています。 イギリスのUniversity of Arts/London Collage of Fashionのテキスタイル科を卒業し、そのままロンドンでファッションレーベルで制作の仕事をしていました。 バンドの相棒となるTommi Tokyoと出会ったのは2012年の東京。 それから、あれよあれよといつの間にか人生で最も予期していなかったこと「バンドを組む」を経て時が経ち、遠くドイツまでやってきています。


  • バンドgroup Aのアーティスト写真。




どういったジャンルの音楽を作っているの、という質問が一番答えにくいけれど、group Aはこんなバンドです。

ボーカルとアナログシンセ、アナログドラムマシーンでビートを作るTommi Tokyoと ヴァイオリン、カセットテープのコラージュをその上から乗っけるSayaka Botanicの二人組。二人とも70-80年代のドイツ産電子音楽が好き という一点以外影響を受けた音楽がほとんど全くばらばらで、決して混ざり合わない要素がふたつ戦っているような。 Tommiは今まで作ってきたすべての音源のジャケットやマーチャンダイズのデザイン、私はライブで使用する映像を作ったりしています。CDやカセットテープのジャケットも一枚一枚 自分たちで紙を折り布を縫い付け ライブの衣装も手作りしています。手間も時間もかかれど、理想郷のような、遠くどこかへ行ってしまえるような 空間全体を作り出していたい といつも思って活動しています。

1週間の予定が1ヶ月に。ベルリンの街にただよう自由さと居心地の良さ

遡ること7年、初めてベルリンを訪れたときのこと。 街にただよう雰囲気の自由さにおどろき、暮らしている人たちのかもし出す自由さにおどろき、あまりの居心地のよさに1週間の予定が ずるずると1か月近く居座りました。(腰を据えて暮らし始めて この自由は長い歴史のなかで市民が勝ち取ったものであること・彼らが大切に守っているものであることを知るわけですが)。

そして昨年、ヨーロッパツアーをするなかで春と秋 二回ベルリンに足を踏み入れ 三ヶ月後にはバンドごと引っ越してきてしまったのです。

壁があった頃の西側と東側で建物の雰囲気が違ったりするのも面白い。

我が家は今にも崩れそうな東側のAltbau (第二次世界大戦前に建てられた家)です。



誰かが命を込めて作ったものに、きちんと支払われるものがある

音楽や絵やなにか ものを作りながら生きるのには場所と時間と、対象に向き合う余裕と、必要なものばかりになりますが ベルリンはなんとも活動がしやすい場所です。

もうすっかり高くなってしまった、とみんなが愚痴る家賃も東京やロンドンに比べれば半額近いし、なにより至る場所にヴェニューがある、イベントがある。
ちょっと人を辿ればおもしろい場所にたどり着けるところ、アンダーグラウンドシーンの多様さ、いい意味でポップカルチャーとアンダーグラウンドの境界線が崩れているところ 等々等々………

近郊のLeipzigやポルトガルのリスボンに新たなシーンがある、とベルリンを離れていく友人も多いですが 大都市のはずなのに ほどよく野暮ったく、良いか悪いかはまた別の話 「愚直に一つのことをやり続けていいよ」と赦されているような気分になるところも愛すべき点で。

なにより一番は「作る側がプライオリティである」という意識を音楽や芸術全般に関わる人が当たり前のように持っていること と思います。
日本ではどうしても、お金を動かす仕掛ける側の力が一番に働きがち。作る側は完全にそれを無視し身を削るか、すり寄ってみるか、どっちにしろ身を削る必要にせまられることが多い気がするのです。

ベルリンで暮らす人々がもつ、謎の「みんなで協力しあおう」という精神もあいまって、誰かが命を込めて作ったものに対価としてきちんと支払われるものがあるということ (それぞれへの敬意や愛情なんかも含めて)。
ヨーロッパに根付くこの文化というか伝統はあまりに自然で、職業・生業の一つとしてミュージシャンやアーティストが存在していることになんの気負いや違和感もないこと 改めて嬉しくなったりします。

生まれ育った愛すべき日本も、私が人生のなかなかに重要な時期を過ごし、重要な教育を受けたイギリスも島国。ヨーロッパという広大な大陸と広大な空の下で起こっていることは、日本のそれとは大きく違ったりもします。

ベルリンでの活動や芸術へのまなざしを少し紹介した初回はこのあたりでおしまいにして、これから、そんないろいろを 綴っていけたらと思います。

(2016年11月4日)

(執筆/Sayaka Botanic)

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OTONA WRITER

Sayaka Botanic / Sayaka Botanic

2012年よりTommi Tokyo (Synth,Vocals,Visuals)とともにgroup Aとして活動。ヴァイオリン、カセットテープを使ったサウンドコラージュ、映像制作を担当。 そのほかは、時折 Albino Soundとのデュオ Albino Botanicでヴァイオリンを弾いたり Kohhei Matsuda(BO NINGEN)と即興演奏の会をしたりしています。