世界を目指す美大生必見! 「海外」で展示するときに覚えておいて欲しいコト

こんにちは!シンガポール在住4年目、キュレーターの得本真子(写真家)です。先日、ついに念願の初個展を東京で開催することができました。常夏の国、シンガポールでコツコツと準備を進めていたのですが、日本と違ったアート事情にとまどうことが多くありました。今回は、海外で展示準備をする際に気づいた「3つのこと」をみなさんにシェアしていきたいと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1. 作品のサイズを世界基準で考えよう

筆者がまず始めにぶち当たった関門は、作品のサイズ決めでした。日本と違い、サイズ表示もインチやセンチなどさまざま。そして呼び名も日本語とは大きくかけ離れていました。

国際規格のA3サイズで写真をプリントしよう!とプロラボに注文しに行ったところ、「35mmフィルムで撮ったものなので左右をカットしなければならないよ」とオーナーにアドバイスをもらいました。たしかに、35mmフィルムの縦横比率は1.5、そしてA3サイズの比率は1.4のため、左右をカットしなければなりません。しかし、その他のサイズである六つ切りや四つ切りだと、これからさらに左右をカットしなければなりません。多少のトリミングに目をつぶり、やっぱり一般的なサイズであるA4でプリントしたほうがいいかなと悩んでいると、オーナーにこう言われました。

「ぴったりなサイズをインチで探してみたら?」

1インチ=2.54センチメートルという規格は、日本ではあまりなじみの少ないサイズ規格です。しかし、インチを使ってみると写真サイズの幅がぐっと広がり、A3サイズに近い大きさで比率1.5の12×18インチサイズを選ぶことができました。カメラの規格によって比率もまちまちですが、できるだけ作品をカットしなくてよいサイズを選んだほうが作品もより生き生きしてきますよね。

ちなみに、海外の製品はサイズ表記がおおざっぱなことが多いです(特にインチ表記)。
表記されているから……と信じ込んで額を購入し、あとで泣きをみることにならないよう(筆者は泣きました)、現物のサイズを自分の手で測ってから購入することを強くオススメします!




2. 日本の展示方法が世界で通用するとは限らなかった!

写真を展示する際によく使用される「木製パネル」。周りに枠がないので作品の広がりを感じ、厚みがあって立体的ですよね。

筆者は木製パネルを入手するべく、シンガポールにある画材屋さんの集まったビル「Bras Brasah Complex」に行ってみました。

なかでも「Art friend」という画材屋さんは、シンガポールに4店舗もあり、品揃えも抜群です。マレーシアやベトナムなどにも店舗を構えています。

1軒、2軒とお店をめぐりましたが、目当ての木製パネルはどこにもありません。お店のスタッフに木製パネルの写真を見せてみるも、「こんなものは見たことがない」という返事ばかり。よくよく話を聞くと、シンガポールでは代わりにキャンバスの木枠に写真を貼ることが人気なのだとか。
この手法だと、伸縮性のあるフォトキャンバス地に写真をプリントしないといけず、プリント代がはかなり跳ね上がります。

しかし、高級感は得られるため、シンガポールでは結婚式で飾るアート写真といった、特別な写真を飾る際に広く使われているようでした。

日本では主流の展示方法でも、海外では取り扱いがない場合もあるんですね。作品を作ってしまってから頭を抱えないよう、あらかじめ展示方法を確認してから、制作に取りかかった方がよいかもしれませんね!



3. 作品制作時には、その国の人柄に合わせて交渉をしよう

最後に大切なのはここ!日本にいるとついつい忘れてしまいがちなこと。それは、「日本人のあたりまえ」が海外では通用しない場合があるということです。

「期限を決めてお金を払ったのだから、絶対その日には仕上がるだろう」
「このサイズでお願いしたのだから、ちょっきりそのサイズでプリントができるだろう」
「お店の人が大丈夫といっていたから、もちろん大丈夫だろう……。」

海外の人の仕事をまったく信用できないということではありませんが、安心しきってしまうのはとてもキケンです!

実は、筆者は何回も痛い思いをしました。確認を何度も取ったり、値段の交渉をしたり、期日よりも早めに仕上げてもらったり……、念には念を入れて、その国の人柄に合ったコミュニケーションを心がけましょう。



海外で展示会の準備をする際に気づいたことを3つまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。美術を志す者なら誰しも夢見る海外での展示。その夢が叶うときに大きな落とし穴にひっかからないよう、日本での当たり前が海外では違う場合があるということを頭の隅に入れておくと、スムーズに準備を進めることができますよ!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

OTONA WRITER

得本真子 / TOKUMOTO NAOKO

日本工学院八王子専門学校および東京工科大学メディア学部卒。シンガポール5年目の写真家&ウェブデザイナー。DTPデザインもやってます。ポジティブなアートが大好きな奄美出身の変わり者。過去にクラウドファンディングサイトCAMPFIREにて資金を集め、個展を開催したことも。 なんでもやりたい、なんでも好き!な自他共に認める(オタク)です。