JAGDA School 2015とは?
第一線で活躍するグラフィックデザイナーが講師となって、参加者のポートフォリオを直接
講評。1クラスにつき、講師6名が参加者18名と2時間みっちり向き合います。
JAGDA School 2015に参加してみて
1回目では6つのテーブルに2人ずつ、計12人の学生がポートフォリオを持って参加しました。(各テーブル3人、計18人の申し込みで満席だったところ、インフルエンザ等により。直前キャンセルが多く、最終的に12人が参加。)
講師陣は、居山浩二さん(イヤマデザイン)、色部義昭さん(日本デザインセンター)、カイシトモヤさん(room-composite)、川上恵莉子さん(ドラフト)、小林洋介さん(Kitchen Sink.)、原野賢太郎さん(博報堂)の6人のデザイナーの方。1人のデザイナーが2人の学生と対面し、それぞれのポートフォリオを講評。20分後、次のデザイナーが2人の学生を講評。それを6回繰り返していきます。
美大生の就活に欠かせないポートフォリオは、自分の制作や考えを会社の方に伝える大事な手段の1つになっています。
しかし、ポートフォリオのつくり方は人それぞれで正しいつくり方などありません。このJAGDA Schoolでは現役のデザイナーの方々が自分のポートフォリオを講評してくださる充実したイベントでした。
1人のデザイナーに対して、自分がプレゼンできる時間は数分間と限られていますが、そのなかで、参加学生はポートフォリオを基に一生懸命自分のブックや作品を説明して、講評を聞き、ポートフォリオのづくりの面から、デザインやご自分の仕事のことなど様々なお話を学生の方にして下さっていました。普段の授業では1人の先生の講評しか聞けませんが、このイベントは、同時に6人の現役デザイナーの方々のお話が聞けるとても貴重な機会になっています。来年も開催の予定とのことなので、ぜひみなさんも参加してみて下さい!
カイシトモヤさんに聴く、ポートフォリオのポイント「見せ方を考えること」
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カイシトモヤ
1975年・兵庫県生まれ。
関西大学社会学部・大阪デザイナー専門学校卒業。
公告プロダクションでデザイナーとして4年間勤務後、
2004年独立。
日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員。東京造形大学グラフィックデザイン専攻領域助教。今回のJAGDA School 2015には講師として参加された。
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ーー2015年のJAGDAスクールの印象はどうでしたか?
東京以外の地域からの参加者が多い印象があってそれはすごく嬉しかったですね。東京の美大のポートフォリオはすごく力があり、刺激になると思うので、他校の学生がどんなことを考え、どんなブックをつくっているかを見るだけでも勉強になるイベントだと思います。
ーー学生のポートフォリオを見てカイシさんが何を感じましたか?
作品が良いのに、ブックで余計なことをしているケースが多いと思いました。ブックはデザインで一番重要で、ブックの中身を説明してくれる子もいるけど、結局ブック自体が説明能力やコミュニケーション能力を持たないと魅力的なものにはならない。だから説明がないと成立しないブックはやっぱりつくっちゃダメだと思います。
ーーポートフォリオ自体をデザインするってことですね。
そうですね。例えば「写真が本当はこの色じゃない」と言うけれど、僕らが見るのはそれしかないからどうしようもない。逆に言えば、自信の無い作品も写真の撮り方やインパクトのあるデザインなどブックのつくり方次第で良い作品に見 せられるとも思います。結局、相手に視覚伝達をすることは、見せ方を考えることだと思うんです。ポートフォリオの考え方は一生付いてまわるので、例えば企画をプレゼンする時にポスターはこういうものをつくると提示するのも全てポートフォリオの延長で、そこで伝えられる能力がないときついと思います。だから就職用のポートフォリオは見せ方を考えることのファーストステップなので、一過性の勉強ではなくて見せ方という点で学べば良いと思います。
ーーカイシさん自身ポートフォリオを作られた経験はありますか?
デザイン事務所に就職するときにつくりました。学校の課題と、自主制作の作品を集めた2冊に分けてました。課題以外の作品を多く入れて、厚みや量を作るのは意識しました。また紹介する作品も会社によって分けていました。良いポートフォリオはつくった人が誰か見えるものだと思うんです。実際に必要な部分は全体の1/10か1/5かもしれないし、そのコアな部分をつくって展開した方が良いと思います。面の作業も大事ですが、ここが大事、ここはいらないという風に漫然たる情報の中に優劣を付ける情報の編集を戦略的に行うことが必要だと思います。
ーーJAGDA Schoolでは学生とデザイナーが密になって会話するのがすごいと感じました。
学校の課題は、1人の先生の価値基準で1年間判断されるけど、その価値観は絶対ではなくて違う分野の声を聞くことがすごく大事だと思うんです。だから先生からダメと言われた作品が他の人からは良いと思われるかもしれないし。
それって痛快だなと思いました。
執筆:坂口和巳
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