[news] グラフィック1_WALL展グランプリ決定! 6つの壁と向合うススメ

個展開催の権利をかけた公募展グラフィック「1_WALL」展が、現在東京・銀座のガーディアン・ガーデンで開催中です。ポートフォリオ審査による一次審査、そしてそのポートフォリオを介して審査員にプレゼンテーションをする二次審査を経たのち、ファイナリスト6名のみが「1_WALL」展と公開審査へと進みます。ここでグランプリを獲得した一人のアーティストが、一年後の個展開催とパンフレット制作の権利を手に入れることができるのです。

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「1_WALL」展は、ファイナリスト6名が一人一壁面を使って作品を発表するグループ展。会期中の4月1日(水)には、グランプリを決定する公開最終審査が開催されました。その結果とあわせて、今回の第12回グラフィック「1_WALL」展のファイナリストとその作品を紹介します。



【イラストレーションとパターンのあいだ | グラフィックとテキスタイルのあいだ】

今回のファイナリスト6名はキャラクターも問題設定も見事にばらばらでありながら、「〇〇と〇〇のあいだ」やフレーム性の問題から新しいグラフィック表現に切り込んでいく姿勢は共通していました。


「あいだ」というテーマでいうと、唯二さんと鈴木葉音野さんの作品がまず浮かびます。


  • 唯二 Yuiji 「パターンネイション」 パターンとイラストレーションとのあいだなのか、まじわりなのか。

唯二さんはモチーフのフォルムを簡略化するプロセスを見せることで、イラストレーションとパターンの境界に迫る『パターンネイション』を出品。かたつむりという「リアルに見たら気持ち悪いけど、イラストに使われるときには可愛い」モチーフを使い、簡略化されていくプロセスを模索しています。


  • 鈴木葉音野 Haneno Suzuki「PAPER | FABRIC」 紙の情報をのせるメディアとしての一面と物質性の一面とを掛け合わせ、紙を編むという最小限の要素をもとにグラフィックとテキスタイルの

一方、鈴木葉音野さんは紙を編んで様々なビジュアルを作りだす、グラフィックとテキスタイルの狭間のアーティストです。印刷された紙をテキスタイルのように編むことで生まれる新しいパターンと質感を呈示しています。講評では、職人的・システマティックなクールさと自身の表現性の間をさまよっていることも指摘されていました。




【フレームをどこにおくか | 一枚にならないバラバラのものが、まとまる】


  • 松本ミョジ Myoji Matsumoto「わすれたがらない人」 遠いんだろうな〜と思ってたけど、逃げてるのか追いかけてるのかわからなくなってきたよ。

ループする映像と壁に貼られた絵で心象風景を表した、松本ミョジさんの『わすれたがらない人』。その作品からは「どこにも行けなさ」とモラトリアム的ゆるやかな感性が感じられます。さらに松本さんは「展示されているものすべてで一つの絵にみせたい」と語り、独自のフレーム意識を示しました。


  • 堺友里 Yuri Sakai「Elysium」 色々な要素がそこにある事が、それだけで美しさを作っていく。 アンバランスさがバランスを作り、無関係な物がつながりを生み出していく良さを感じていたい。

決選投票にまで残り、わずか一票差で敗れる結果となった堺友里さんは松本さんとは対照的な空間の捉え方で、審査員の間で意見が飛び交いました。キャラクターや図形、文字等、脈絡のないものを構成することで、無関係なもの同士がつながりを生み出していく面白みが魅力の彼女は、今回は『Elysium』と題された作品群を出品しました。一つの作品ではなく複数の平面作品を並べ、壁を埋めています。

個々の作品内でも発揮される彼女の「脈絡のないバラバラなものをうまくまとめ上げてしまう」力は作品群の配置でも評価され、最後の決戦投票まで残りました。バラバラの作品すらうまく纏まるが松本さんとは違い一枚の絵が浮かび上がるわけではない、そんな不思議な空間の使い方が今後の期待につながります。



【大きな議論を呼んだ宮原万智】


  • 宮原万智 Machi Miyahara 「invisible layers」観察から、抽象化 何層も見えないレイヤーを通してある都市(空間)に流れるエネルギーや記憶をドローイングで記録しています

ベルリン在住、都市計画からドローイングを始めた宮原万智さんは「都市(空間)に流れるエネルギーや記憶を記録する」ものとしてドローイングを位置付けています。現代の仮想空間のつながりが強まる中での身体感覚、そしてドイツと日本の記憶などテーマ性が強く、公開審査では審査員からの質問が尽きませんでした。
「1_WALL」展という企画での位置づけの難しさからか、今回決選投票に残ることにはなりませんでしたが、こうした糸や影も用いた独自のドローイングの美しさ・スタイリッシュさと奥深いコンセプトを兼ねそろえた作品は今後も注目となりそうです。




【グランプリを獲得したのは…】


  • Aokid Aokid 「KREUZBERG」 1.Berlinにある一つの地区。 2.断片。世界の断片を並べたりたてかけたりして、軽やかにフラットにスペースに、へ、展開してみる。

第5回・第10回に引き続き今回が3度目のファイナリストとなったAokidさん。彼が3度目の正直として念願のグランプリを獲得しました。チャイルディッシュな、あるいはプリミティブなイラストを描いた白いボードを構築し空間を生み出した『KREUZBERG』を出品。穴があることで観客が能動的に動いて見る必然が生まれ、それが彼のダンス活動という文脈と繋がっています。
1年後の個展も楽しみである彼の作品を、「1_WALL」展で動きながらご鑑賞ください。


グランプリ決定後も、4月16日まで展示は続きます。
グランプリ受賞者のAokidさんもあと一歩だった他の5名も、熾烈な競争を勝ち抜いて進んだ精鋭ばかり。まだ足を運んでいない方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。

そして、グラフィック表現を追究している美大・芸大生のみなさま。次のグランプリはあなたが目指してみてはいかがでしょうか。


《開催概要》
第12回グラフィック「1_WALL」展
会期: 2015年3月23日(月)~4月16日(木)
会場:ガーディアン・ガーデン(東京都中央区銀座7-3-5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F)
時間:11:00~19:00 日曜休館 入場無料

参照元:
http://rcc.recruit.co.jp/gg/exhibition/gg_wall_gr_201504/gg_wall_gr_201504.html

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