芸術系大学連携キックオフ会に行ってきた

ビダモンは一回休みの手羽です。今日は「多分ここまでは今書いていいだろう」ってところを。

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昨日は朝1であかりちゃんの小学校へ。

文化系イベントが年によって学芸会→音楽会→展覧会というローテーションで開催されてて、今年は展覧会の年。
あかりちゃんの作品が展示されてるっていうんだから、そりゃ行くしかないっしょ。

しかし、絵以外は見事に全部図画工作キットで使られたもの。
その絵も全学年「花を描く」で面白味が全然ない・・・。自分や家族を描くのはこのご時世いろいろ問題があるのは知ってるけど・・・子どものモチベーションの低さがすごく伝わってくる・・・。
しかも絵が全体的に淡いのは、先生の趣味なのかな・・。
リンクロウの時はもっとガシガシ描いて、「あ、やべ、画用紙が破れちゃった」ぐらいな子が何人もいたんだけど。東京都だから図工専科の先生がいるはずなんだけどなあ。

奥さんと「図画工作に一体何が起きてるんだ!!」と誰もいない体育館で絶叫。
・・というか、なんで誰もいないんだろ?学芸会とか音楽会の年は体育館前に行列ができるくらいなのに・・・そんなにお母さんたちは図工に興味がないのかな?・・というかこの展示だったらむしろ見ない方がいいかもしれない・・。


ちょっと暗い気持ちになりかけながら、急いでこちらへ向かいました。

東京藝術大学!!
藝大さんに行くのは1年ぶりぐらいかな?

午前中は、東京藝術大学・多摩美術大学・女子美術大学・東京造形大学・日本大学芸術学部・武蔵野美術大学、つまり東京5美大+藝大からなる「美術系大学連絡協議会」のワーキングループ会議が開催されました。会場は持ち回りでやってて、前回が日芸さん、今回は藝大さん、次回は女子美さん。

五美大(or四美大)だと五美大展・教務系・庶務系の会議が存在するんですが、この場では志願者状況なども含めた各大学の近況共有、美術文化発展・教育普及などを中心に話し合いを続けています。2013年に締結して今回で16回目。
副学長・学部長クラスの参加なもんで、学事が違うこともあるけど、なかなか皆さん忙しく日程調整が大変な会議でもあり(笑)

しかし、今朝の展覧会の光景見ちゃうと、「このままじゃまずいなあ・・やっぱり美大でなんとかしないと」と思っちゃいますね・・。
 

そして午後からは同じく藝大さんで、あるキックオフ会議が開催されました。 
 

東京藝大・宮田学長の挨拶で始まり、
 

ブリティッシュ・カウンシルの湯浅真奈美さんによる、ロンドン五輪の文化プログラム「カルチュラル・オリンピアード」を中心とした講演。
ブリティッシュ・カウンシルとは、英国政府によって設立された公的な国際文化交流機関で、ムサビにいるとよく聞く名前。長澤学長は「ブリカン」と略してました(笑)湯浅さんの名前もあちこちで見ますね。
カルチュラル・オリンピアードは大成功し、それがオリンピック以降も受け継がれています。

で、その後は、

いわゆる、「大きなロの字」での会議。

参加したのは、愛知県立芸術大学、上野学園大学、沖縄県立芸術大学、金沢美術工芸大学、京都市立芸術大学、国立音楽大学、昭和音楽大学、女子美術大学、洗足学園音楽大学、多摩美術大学、東京音楽大学、東京藝術大学、東京造形大学、東邦音楽大学、桐朋学園大学、日本大学芸術学部、武蔵野音楽大学、武蔵野美術大学の18大学の学長や副学長たち。
・・・凄い(笑)


なんで集まったかというと、オリンピック・パラリンピックを機に、芸術系大学で連携して何ができるか考えましょ、の会のキックオフ。なのでオリンピック・パラリンピック組織委員会、文科省、文化庁、内閣府、東京都の方も参加されてました。


「オリンピックはスポーツの祭典でしょ?芸術系大学は関係ないやん(鼻笑)」
「オリンピックにかこつけて、あわよくば的なアレっすか?(苦笑)」
「東京だけの話でしょ?」

と思ってる方も多いと思います。

ええ。私も昔は完全にそっち派で、「代理店に操られるだけでしょうに。よくいるのよね、そういう軽いノリの人。もっと他にやるべきことあるのにさ」と鼻で笑ってました。
もちろん、
・開会式・閉会式は芸術的要素が強い。
・1964年東京オリンピックではピクトグラム等「デザインの力」が活躍した
・市川崑が1964オリンピックのドキュメント映画を撮ってる
なんてことはわかっているんですが、だといって
「オリンピックだ!芸術の出番だ!」
は無理やりすぎるんじゃないかと。せいぜいあとはCMやユニフォームのデザインぐらいで、うちらとは別世界、筋肉モリモリな人たちの世界にそれは任せればいいじゃん、うちらは誠実に生きようよ、と。


でも2つの理由から「それはちょっと違うんです」と今は言えます。

一つ目の答えは、オリンピック憲章の根本原則にありまして。
オリンピック憲章冒頭を引用します。
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オリンピズムの根本原則
1.オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指すものである。スポーツを文化や教育と融合させるオリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などに基づいた生き方の創造である。
[オリンピック憲章 Olympic Charter 2011年版・日本語より]

=============
オリンピズムが根本として求めてるものは「スポーツを文化や教育と融合させる」ことなんですね。オリンピック憲章の頭も頭、根本原則にそうはっきりとそれが書かれてるんです。スポーツの祭典でもあり、文化や教育の広がりをもたせるための祭典でもあると。

東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会が国際オリンピック委員会本部へ提出した「立候補ファイル」、東京都が平成27年3月31日に発表した「東京文化ビジョン」、文化庁が平成27年7月に発表した「文化プログラムの実施に向けた文化庁の基本構想について」には「何を目的に何をやろうとしてるのか」が書かれた押さえておかなくちゃいけないレポートです。

しかし、これだけのものがとっくに公表されてるのに、このままいくと「聞いてなかった(なんで俺に言わないんだ)」と直前になって文句を言い出し、なにかアラを見つけ、それをひっくり返すのが社会的喜びとなる「いつもの」パターンになりそうな気がしますが・・。


そして二つ目が、恐らくこれほど大きな事業じゃないと芸術系大学が連携する機会はないということ。
「芸術系大学が連携することはいいことだ」とみんな思うけど、「じゃどうやればできるの?」の部分は出てこない。恐らく「えーと、誰かが中心となって声をかけるとか」と。
オリンピックはたった2週間のことだけど(パラを入れると1ヶ月)、「2020」という「必ずやってくる身近な近未来」であり、5年後の自分たちの問題として都市・交通・生活・文化・教育をみんな考えやすくなるはず。芸術系大学が連携し考え実行する、最初で最後のチャンスと言えるかもしれません。他に方法があれば別ですが。

どこかの芸術系大学の式典などで会うことがあっても、会議で、しかもこれらの大学の学長・副学長クラスがひとつのテーブルにそろうことは今回が初めてじゃないかしら。ちなみに上記写真は京都市立芸大の鷲田学長。


ロンドンオリンピックの文化プログラムが11万件(17万件とも18万件とも言われてますが本当は11万件)だったんで、「東京2020は20万件の文化プログラムをやる!」と目標値が決まってます。文化プログラムは前回オリンピック直後から4年間だから、リオが終わり次第スタート・・・ってことはつまり、「オリパラはちょっと先」のことだと思ってるかもしれませんが、来年2016年夏から始まるんです。
なので2015年の今いろんな前調整が急激に動き出してます。


しかし、文化プログラムのディレクターのようなまとめ役と、わかりやすいかっこいいスローガンが欲しいですね。
カルチュラル・オリンピアードのテーマは「Once in a lifetime(一生に一度きり)」とかっこいいけど、日本だと「自己ベスト」とかになっちゃうし・・。
そして、6大学の会議日程を決めるだけでも大変なのに、この数の芸術系大学の調整ができるのかがちょっと不安で・・。


昨日はあくまでもキックオフ。
おいおいこの活動は広がっていくと思いますので。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。