一見地味なコレクションが美術館において持つ役割、MOMATの藤田嗣治コレクションを考える

1952年に日本初の国立美術館として開館し、2012年にはコレクションのリニューアルも行われた東京国立近代美術館。9月19日から開催されている「MOMATコレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」では、コレクションのなかから、藤田嗣治の全所蔵作品が公開されている。日本ではつい、世界中から借り出してきてキュレーションされた企画展に目がいきがちだが、本展は美術館にとってのコレクション展の位置づけや役割を考えるヒントが詰まっている。9日(金)に青山ブックスクールで開催されるイベント「東京国立近代美術館から学ぶ 藤田嗣治と戦争画のABC~画家たちが描いた戦争」を合わせて紹介しよう。

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戦後70年、藤田嗣治の戦争画と向き合うにふさわしい展示
東京国立近代美術館にて12月13日まで開催中


戦後70年にあたる今年。あちこちで戦争の記憶を風化させないための企画がされている。
美術館も例外ではない。東京国立近代美術館では、9月19日より、同美術館が所蔵する藤田嗣治の全作品25点と特別出品の1点、計26点が展示されている。

なかでも、藤田の戦争画14点の一挙展示は初の機会。絵画作品だけではない。藤田が監督をつとめた貴重な映画もギャラリー内で常時上映され、藤田旧蔵の挿絵本や藤田の言葉を伝える当時の雑誌などの展示もされ、藤田のしごとがさまざまな側面から紹介される。

藤田嗣治は1920年代、パリで成功を収めた。藤田といえば、「乳白色の肌」と呼ばれるしっとりしたツヤ消しの画肌に、墨色の線描を用いて裸婦や猫を描くタイプの作品で広く知られている。これは、異国の地で日本人の持つエキゾチックな魅力を最大限活かそうと考えた末、浮世絵などを参考にして藤田が編み出した画風だった。


パリで活躍していた藤田は、1933年20年ぶりに日本に戻り、1937年に日中戦争が始まると、戦争画を制作しはじめた。なぜだったのか。戦後フランスに渡り、何を考えていたのか。藤田をめぐるさまざまな問いは、いまもわたしたちに未解決のまま残されている。

ぜひ、展示に足を運び、彼と彼の作品に向き合ってみてほしい。


▼展示開催概要

会場:東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー(4F)
会期:9月19日(土)~12月13日(日)
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)※入館時間は閉館30分前まで
休室日:月曜日
※ただし、9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)、11月23日(月・祝)は開館、
 9月24日(木)、10月13日(火)、11月24日(火)は休館
無料観覧日:10月4日(日)、11月1日(日)、11月3日(火・文化の日)、12月6日(日)
詳細はこちら
藤田嗣治の作品の画像などもこちらのサイトでご覧いただけます。



日本ではなかなかスポットの当たらない所蔵作品展
美術館にとってのコレクション展の位置づけや役割とは?


2012年のリニューアルにより大きく変身した東京国立近代美術館所蔵作品展「MOMATコレクション」。MOMATの所蔵作品は約12,500点(2015年7月現在)。2012年にリニューアル工事が行われた所蔵作品展「MOMATコレクション」では、毎回約200点を展示、2~3か月ごとに大きな入れ替えを行っている。長く作品を眠らせることなく多くの作品を循環させているので、私たちは飽きることなく所蔵作品を楽しむことができる。
さらに同美術館は、所蔵作品・重要文化財を中心としたハイライトコーナーや、日本画に特化した部屋、企画展と連動したテーマ展示など、さまざまな角度からコレクションに触れることができるよう、数多くの工夫がなされ、年間20万人が訪れる人気コレクションとなっている。

「所蔵品展っていつ行っても一緒でしょ?」というイメージを覆される。



この展示から学び尽くそう!
同館美術課長の蔵屋美香さんに藤田嗣治と戦争がを学ぶ


展示をみて満足してしまってはもったいない。
展示を「きっかけ」にして、もっと深く学んでみてはどうだろう?


青山ブックスクールでは、来週9日(金)に、藤田嗣治と戦争画について学べる機会がある。講師は同館美術課長の蔵屋美香さんだ。
イベントではまず、藤田嗣治を入口にMOMATが所蔵する戦争画の表現の特徴を広く探る。また、いわゆる「戦争画」を太平洋戦争期に描かれた日本の作品のみに限らず、ルネサンス絵画や浮世絵・錦絵など古今東西の戦争表現の中に置いてみることで、新しい視点から藤田らの描いた作品を捉え直す。
加えて、今回の企画を手がかりとして、美術館にとってのコレクション展の位置づけや役割についても考えていく機会ともなりそうだ。

コレクションに向き合い、藤田嗣治に向き合って展示を企画した彼女に学ぶ、戦争画、藤田嗣治、そしてコレクション展の役割。展示を見てから参加すれば(いや、逆もいいかもしれない)、きっと学びは何倍にも膨れ上がるだろう。

蔵屋美香さんより
「戦争画」ってご存知でしょうか。何となく聞いたことがあるぐらいでしょうか。あるいは「タブーとして隠された名画なんでしょ?」とお思いでしょうか。「画家たちがこぞって戦争に協力したショッキングなできごとだ」「いや、藤田だけはこっそり反戦の意志を示した」といった意見をお持ちでしょうか。

今回は、まず藤田嗣治を中心に、作品の数々をじっくり観察することで、太平洋戦争期の戦争画表現の特徴を探ります。加えて、レオナルド・ダ・ヴィンチなど藤田が憧れたヨーロッパの絵画や、日本の浮世絵・錦絵といった、古今東西の戦争表現と比較することで、日本の戦争画の位置付けを考えます。
 こうした作業を経ると、きっとこれまでとは異なる新しい視点から戦争画の表現を、そして社会とアーティストとの関係を、考えることができると思います。

また、今回の「特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」は、コレクションの持てる力を最大に活かすことを目的として企画されたもの。一見地味なコレクションが美術館において持つ役割についても、みなさんと一緒に考えたいと思います。


※引用元:青山ブックセンターサイト イベント・講座情報内より
※蔵屋美香さんプロフィールはこちら




▼イベント開催概要

会場:青山ブックセンター本店 小教室
日程:2015年10月9日 (金) 19:00~21:00(開場18:30~)
料金:2,700円(税込)
定員:45名
詳細はこちら

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