【さあ跳べ、ここがロドス島だ】美大新入生に6つのアドバイス

2021年4月6日(火)

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昨日4月5日は多摩美術大学、武蔵野美術大学、そして東京造形大の入学式でした。
こちらはタマビ入学式の事前撮影動画。

ん。なんかどっかで見たことがある人だ。
 

 
ご入学おめでとうございます!

新入生はワクワクと同時に不安を抱えてると思うので、今日は多くの美大新入生が疑問に感じるであろうことに答えていきます。
「●●があると便利」「あの授業を取れ」みたいな話は学生さんに聞いてもらった方が早いので、手羽は「考え方」「捉え方」を中心に。
 

 
(1)オリエンテーションって聞かなくちゃいけないの?
ムサビとタマビの新入生向けオリエンテーション日程はこちら。
武蔵野美術大学| 2021年度 オリエンテーション日程
多摩美術大学|2021 年度 美術学部 新入生オリエンテーションについて
ご覧のとおり、しばらくはオリエンテーション、略してオリエンがずーーーーと続きます。これはどの大学も。
美大のカリキュラムは複雑なので1回の説明で単位の仕組みや履修方法等を理解できる人は少ないはず。私も1年の時は全然理解できなくてチンプンカンプンでした。コロナでオリエンが動画になったりしましたが、こっちの方が何度も見れるし、良かったかもしれませんね。

教職オリエン、学芸員オリエン、奨学金説明会等は大学によって「出席することが申し込み必須条件」というケースもあるので、もらった資料をよく確認して、それでもわからなかったら担当部署に聞いてみましょ。

あ。そうそう。健康診断も大事。
「美大生で健康診断ってかっこ悪くね?」と思うかもしれませんが、奨学金申請などで健康診断証明書が必要になってくるんです。外部医療機関で受けるとそれなりにお金がかかりますよ。

 
(2)アルバイトはいつからやればいい?
よく美大は「絵を描いてればいいんでしょ?いいなー」と言われますが、実技以外に教養科目などの座学授業も普通にあるんで、むしろ総合大学よりも忙しいと思った方がいいです。
「総合大学の座学授業が実技になったのが美大」ではなく「総合大学の座学授業に実技授業がプラスされてるのが美大」という解釈が正解。またデザイン系は課題(宿題)も出るのでかなり最初は大変なはず。

なので、大学の様子がわかるまで・・・特殊な美大のカリキュラムやシステムをなんとなくわかるまで・・・できればゴールデンウイークぐらいまで・・欲をいうなら夏までは、アルバイト等「動かせない夜の予定」はいれない方がいいです。
授業でグループワークをやってる時は授業後もグループで打ち合わせをやったりするんで、せめて「午後7時ぐらいまで大学にいるかもしれない」というスケジュールで考えた方がいいかも。


  • 去年はあまりできなかった課外講座やワークショップ説明会も今年はどんどんやるはず。

 
(3)友達ができるか心配なんですが・・
入学式など初日でグループができてたとしたら、恐らくそれは美術予備校仲間。その日のうちに新しい友達ができる方がすくないので心配する必要はありません。
今は事前にLineで友達ができてたりするけど、焦る必要は全くなく、自然と作っていけばいいだけ。特にデザイン系はグループワークショップが多いから、嫌でも仲間ができちゃう。

というのも、美大では「友達を作りたい」と思ってるなら、それほど苦労はしない大学なんです。
美大授業の特徴でもある「課題発見」「企画・構想」「制作」「発表」「講評」というシステムは、自分の考えや表現をみんなに知らせたり、意見を聴いたり、同じ釜の飯を食べることになるんで、コミュニケーションが自然と発生し、仲間ができる仕組みになってるのね。
なおかつ総合大学だとサークルやゼミ以外はたまり場がないけど、美大だとグループワークが多くあるし、制作は演習室・アトリエ・工房でみんなで長時間使うから、通常の大学よりも友達を作りやすい環境だとも言えるのです。
よく私が書いてることですが、最近になって「アクティブラーニング」だの「ラーニング・コモンズ」だの「思考力・判断力・表現力等の育成」と叫ばれるようになりましたが、美大はそんなこと昔からやってるんですよね。

共通してるのは、「自分からドアをノックしないとダメ」「自分から情報を集めにいかないと気が付かない」ってこと。
「リア充」という言葉がバカにされる傾向にありますが、すでに「美大生」という存在が世の中的には「リア充」なわけで(笑)、美大においてはなにかとリア充の方が面白いはずだし、なにより得。高い学費を払ってるんだから、4年間大学とその環境を使い倒して、仲間を作って楽しんだ方がいいと思いません?使い倒すには美大っていい大学なんですよ。


  • 他美大の学生さんと交流を持ちたいなら、五美術大学交流展もありますね

  
(4)じゃ友達作れるように頑張ります。
さっきと逆のこと書きますが、無理やり友達を作る必要もないとも思っています。

というのも、友達作りにはリスクを伴うからです。
高校まで自分の周りにいたのは「同じ地域で自分と同じ年代に同じような環境で育った人」だったはずだけど、大学では一気に出身地域・年齢・思考・価値観の全然違う人たちと出会うことになります。特に美大は。育ってきた環境が違うからすれ違いは仕方ない。
それが大学で学ぶ良さではあるんだけど、ほんとに広い社会には様々な人がいるわけで、すごく仲良くなった人に裏切られたり、実は「やばい人たち」だったり「何かの勧誘」だったり、様々なケースに遭遇する機会が増えるということでもあります。

今の学生さんは私たちの頃より「外に出ていく」「周りとつながろうとする」意識や能力が高くて本当に感心するんだけど、その能力に合わせた「もしもの場合の免疫力」ができてるかというと、ちと疑問で。

人を信用しすぎるといけないこともある。でも、人を信用しなければ友達ができない。
なので、心の中に「この部分までなら裏切られても大丈夫」というスペースを作っておいて、「この人は大丈夫だな」と思ったら次のステップに移行する、というDMZ的な考え方を持つと後で何か起きたときに自分の気持ちが楽になります。そうすることである程度「うん。これは想定内(笑)」で終わらせることができ、自分が傷つく部分を減らせる、と。
「友達がいなくたってなんとかなる」という気持ちも必要だし、大事な友達は無理やり作ろうとしなくても自然とできるものです。

ちなみに手羽は「ぼっち飯」という言葉が大嫌いで。
「ぼっちがさびしい」とメディアが言い出したから、「ぼっち」という言葉が生まれたから、なんか変な感じになってるけど、別に普通のことですよ。美大だったら一人でご飯食ってても「あいつ1人で飯食ってるぜww」て思う人は少ないし、ファイン系なんかだとむしろ「一人で飯食わせてくれよ」という人の方が多いんじゃないかしら。そういう人の集まりが美大のような気もするんだけどね。


  • 今年はみんなぼっち飯推奨。

 
(5)●●ってSNSに学生が書いてたけど
かなりマメに美大情報をチェックしてますが、学生さんの書き込み情報は間違えてることがほんと多いんですよ。日程や時間はほんとよく間違ってる(笑)
以前より出所がわからない情報を信じやすくなってる気がするので、必ず公式情報・出所を確認しましょう。

また、「大学はなんもしてくれないところ」という30年前ぐらいの先入観で叩いてる情報も多く、確かにそういうところが残ってる部分もあるけど、今の大学は理がかなってれば意外とすぐに動いてくれるし、ちゃんとした手続きをふめば意外とちゃんと答えてくれます。
逆に思い込みでSNSとかで騒いでる方が動きにくくなるんですよね。「騒ぎたい、叩きたいから」ではなく「変えたい」という気持ちがあるなら大学に早くアプローチした方がいいです。半分ぐらいは誤解かもしれないし、そんな簡単なことじゃないかもしれません。でもそれを学ぶのも勉強。
先ほど「大学とその環境を使い倒して、仲間を作って楽しんだ方がいい」と書きましたが、そのためにも「大学は何もしてくれない」ではなく「大学はいろいろやってくれるかもしれない」を思考や行動のスタート地点にした方がいい方向に動くと思います。

また、「ないなら自分で作ればよくね?」という気持ちも美大OBとしてはあります。
「去年、入学式がなかったから」とタマビの学生さんが

新2年生用に入学式の看板を作ってましたが、これってすごくクリエイティブな行動だと感じました。
 
  
(6)ホームルームとかありますか?
高校までだと帰りのホームルームで翌月のスケジュール表をもらったり、「明日はこれを持ってくるように」と指示が出てましたよね。でも大学では基本的に4月のオリエンで配られたもの、授業中に言われたこと、それと掲示板情報などが全てで、毎日のショートホームルームのようなものは存在しません。
「聞いてない」ではなく「書いてるのを見てない」「授業に参加してなかったから」だったりするんです。オリエン期間にもらったプリントは大事に保管し、掲示板を毎日見る習慣つけた方がいいよ。

全体的に言えることですが、大学の対応には「未成年対応」「大人対応」があります。
「大学生といっても未成年だったり、成人であっても社会に出ていない人、『学校』というカテゴリーにまだ所属してる人たち」という考え方が未成年対応。
「大学生なんだから大人と一緒の扱いします」が大人対応。
大学のスタンスは基本的に「大人対応」であり、「高校までと違って自由。自分で判断しなさい。ただし、責任は自分で負いなさい」です。ここがわかっていれば大丈夫。

ただ。
徐々に「外圧」で「未成年対応」の範囲が広がっている気はしてます。
例えば、成績表を在学生保護者に送る大学が増えました。最初聞いた時は「え。そんなの高校までの話じゃないの??大学がそこまでやる?!」と思ったけど今や普通のことだし、在学生保護者向け説明会をやったりも普通ですね。
「コロナ対応で入学式に保護者は参加できない」とアナウンスをすると「なんで学費払ってるのに参加できないんだ!」と苦情の電話がいろんな大学であったそうです。

「昔に比べて学生が・・」というより「大学はサービス業」と言われるようになってからで、「学生だけじゃなくステークホルダーの満足度を上げる」のは当然ですが、本当にこの風潮を学生さんや保護者の方は望んでるのかな、と思ったりもしないこともないこともないです。

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。