ロフトがアワードにかける想いとは -「いいもの」を色んな人が上書きを繰り返し、もっと「いいもの」にしていく-

昨年話題となったコンテスト「LOFT & Fab Award」が、今年も開催されています。前回となる第1回目の開催は「使う人が作る人」というコンセプトのもとに、生活者自らが「デザインする・つくる」という選択肢を得る、という発想がきっかけとなっているそうです。第2回目となる今年は3Dプリンタープロダクトのマーケットプレイスとして活動する「Rinkak」とのコラボレーションにより、更に充実したアワードを目指しています。そんなアワードに対するLOFTの想いを、LOFT& 菅井進さんに伺ってきました。

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菅井 進
役職:渋谷ロフト・LOFT&担当
1956年生。大学卒業後、西武百貨店入社。心斎橋パルコで販売促進や西武百貨店つかしん店開店プロジェクトを経て、梅田ロフトの販売促進部へ移動。1996年8月8日、株式会社ロフトが西武百貨店より分社化独立と同時に、転籍。心斎橋店、池袋店の館長を歴任後、本社営業企画部を担当。その後、LOFTの新業態「LOFT&」の立ち上げを行う。

[LOFT&とは]
クリエイターや他業態とコラボレーションすることで、新たなことを生み出していくプロジェクト。マスプロダクツ(大量生産品)を扱う既存の「ロフト」業態に対し、同業態ではワンオフ(単品生産品)やマスプロダクツのカスタマイズなどの切り口で、"ここにしかない"生活雑貨の新たな可能性を探っていくLOFTの新業態。

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  • LOFT & Fab Award 2014 応募作品

ーアワードを開催するにあたり、どういったきっかけがあったんですか?

「LOFT&」は、FabLabShibuyaとの協業によって、日本ではじめてデジタル加工ができる工房スペースを商業施設の中に導入しました。
その意図は、従来のものづくりが大量生産や決められたデザインでつくられているため、(雑貨に関しても)消費者の現代社会におけるポジショニングが受け身になってきています。

しかし、本来自分の欲しいものや自分で使うものは、自分でつくるというのが自然なのではないでしょうか。「もの」が生み出す消費者とのギャップは、社会が成熟化するなかで、消費者の欲求として再度表出しつつあると考えています。

そこで、「もの」を探して売るという小売から「もの」を生み出していくトライアルとして、デジタル加工工房である「&Fab」を設置し、その上で、距離的に遠くの人も含めた活動をする、知ってもらう、参加してもらう、という目的で、「LOFT & Fab Award」を立ち上げました。

従来のアワードのような「デザイン」「技術」を競うのではなくて、どれだけ「暮らしに役立つ」生活雑貨をうみだせるか、という着眼点で作品を募り、ロフトの考える新しいものづくりの場として開催しました。

ーロフトの提案する「もの」のありかたの一環として、アワードを開催されるのですね。
 では、「ものづくり」がロフトにもたらしたものはなんでしょうか?


(良し悪しは別として)小売としての会社の規模が大きくなるに従って、自らものを作るようになってきました。川上にさかのぼり源流となるものに注目したり、最前線をリードするデザイナーに依頼したり、ロフトの雑貨に対する考え方は「自ら(ロフト)の手で商品を作る」に移行しつつあります。

しかし、そういうプロセスもバイヤー視点であったり、メーカー視点であったり、プロデザイナーの視点でつくるだけなので、やはり押し付け感のような、こちらが用意したものの中から消費者が選んで買う状況にあります。

そうではなくて、ものづくりのプロセスに消費者が加わることによって、小売のパラダイムがかわっていくというか……カタストロフというか(笑)変容していく小売、というものができるのではないか、と考えています。
前回のアワードで掲げたキャッチコピーである「使う人が作る人」は、そういったものづくりへの思いを言葉にしたものです。

でも、そういった変化は突然起こるのではなく、自然に長い年月かけて徐々に変容していくものなので、長くコツコツ続けることによって、将来的に大きな流れに結びつくと考えています。だから、1回目に続き2回目もやるし、3回目もやりたいです。

ーアワードの継続を通じて、消費者と小売の関係が変化していく。来年、再来年と、集まる作品もどんどん変化していきそうですね。第1回の開催をうけて、集まった作品に対してどのような可能性を感じましたか?

まだまだ「すぐに販売できる」といったものはありません。
(前回開催時も)いいものがあったら商品化してみたい、という目的はありましたが、作品が魅力的で素晴らしくても、それをすぐ商品化するためにクリアしなければいけないハードルはたくさんあります。

例えば強度を踏まえたクオリティや生産のコスト、プロダクトとしてのオリジナリティなど、そういうのをちゃんとクリアにして、本当の商品化ができていきます。


ーロフトの考えるものづくりの流れと消費者の間には、まだまだギャップがあるんですね。「長い年月かけて徐々に変容していく」ことなので、まだ時代的にそこまできてないということなんでしょうか?

いままでのものづくりでは、商品の基準はメーカーが責任を負っていましたが、個人が作ったものを他人に売るとなると、その個人が責任を負うことになってしまいます。とてもじゃないですが、個人でその基準や責任を持つことはまだまだ難しい。

もちろん、色んな技術が進歩してできるようになってきていますが、社会的に「3Dプリンターでつくったものがすぐに売れますよ」といった時代にまでは到達していません。そこは今後の課題になってくる部分です。


  • LOFT & Fab Award 2014 審査風景

ーなるほど。ロフトのものづくりは消費者と一緒にステップアップしていくものなんですね。最後に、本アワードにロフトが期待するものとはなんでしょうか?
 
権威ある賞にしたい、といった思いはありません。他にもデジタルファブリケーションの技術や価値を競うアワードはいっぱいあります。ただ、モノづくりとか、暮らしに役立つ雑貨をつくるというクオリティを高い水準で、「素人が頑張ってつくったもの」という次元から、「本当につかえる」ものがここから生まれていく、そういった部分に期待しています。

デザインや商品設計など、今まで一部の企業の人が権利を独占していましたが、これからは「いいもの」を色んな人が上書きを繰り返し、もっと「いいもの」にしていく。そんな力をFabは持っています。そういう視点の作品が集まればいいなと思っております。

▼LOFT & Fab Award 2015

<募集概要>
UVプリンター、レーザーカッター、3Dプリンターで生み出した「暮らしに役立つ生活雑貨」

【UVプリンター部門】
UVプリンターを効果的に活用して作られた作品が対象
既存の商品に対しデジタル加工によるカスタマイズを加えることで、商品の魅力や価値を高めた作品も対象

【3Dプリンター部門 Powered by Rinkak 】
3Dプリンターを活用したものづくりマーケットプレイス「Rinkak」が主体となり審査
3Dプリンターを効果的に活用して作られた作品が対象
既存の商品にデジタル加工を施し、別の用途を持たせるアップサイクル作品も対象

<締切>
2015年08月31日 (月)

<賞金>
・最優秀賞(1点) 賞金10万円
・UVプリンター部門賞(1点) 賞金5万円
・レーザーカッター部門賞(1点) 賞金 5万円
・3Dプリンター部門賞(1点) 賞金5万円


詳細はこちら

LOFT & Fab Award 2015
くらしをたのしくするアイデア  http://loftandfab.com



執筆 中木村俊臣

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