美大を卒業して何やってるの?第2話-ムサビ卒・珍念くんの場合

本文が長いのですぐ本題に入ります、の手羽です。

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この「美大を卒業して何やってるの?」シリーズは、ムサビ日記時代、2007年から「久しぶりに書いてもらおうシリーズ」として続けてきた企画。
美大卒業後、一体彼らは何をし、何を思い、どんな変化が起きているのか。もしくは変わってないのか。
一年に一度、ムサビ日記・美大日記OBOGにリアルな現況を書いてもらうことで、同じ卒業生をずっと追っかける長編ドキュメンタリーにもなってます。
ここにはフツーの美大卒業生しか登場しません。


第1話はこちら。
■美大を卒業して何やってるの?-ムサビ卒・べべつこさんの場合
https://partner-web.jp/article/?id=151


待望の第2話目は、伝説のブログ長文大魔王であり、ガンプラ大好きっ子の武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科インダストリアルデザイン(ID)専攻卒・珍念くんです。
珍念ファンの皆様、お待たせいたしました!

ライター時代も彼の日記は人気があったし(あくまでも日記ね!)、佐藤某氏デザインの某セブンイレブン某セブンカフェを見るたびに、久しぶりシリーズ2012で珍念くんが書いた
■久しぶりに日記を書いてもらおう57 -珍念くん編-
http://bidai.tv/teba/archives/2012/05/57---/
を思い出します。
佐藤某さんもこのブログ読んでたら過ちを犯さなかったのになあ、と。

そんな彼はムサビ日記仲間と結婚しまして、去年子供が生まれました。
手羽が彼の人生の半分を構築したといっても過言ではなく、珍念くんがもっとも感謝しなくちゃいけない人物、それが手羽なのです。


では、魅惑の珍念ワールドをご堪能あれ。

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どうもこんにちは。
2005年度・武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科ID専攻卒
珍念と申します。

某・超大手電機メーカーで、
インハウスデザイナー(一般の企業に社員として籍を置くデザイナー)として
業務用のコーヒーマシンですとか業務用のソフトクリームサーバーですとか
業務用の冷蔵ショーケース(スーパーとかコンビニにある奴ね)ですとかのデザインをしております。
自分で言うのもアレですがデザイン業界でもわりとシブい部類というか
地味なジャンルのデザイナーですね。

あんなのにもデザイナーがいるんだよ!!
「デザインするところあんの?」とか言うなよ!!!!
よく言われるよ!!!!!!



…ええと、
大学卒業後に就職した会社が滅びて今の会社に吸収されたりとかはありましたが、
基本的には同じところで同じ仕事を続けつつ、今年で10年目になります。

遡ること10年前、
大学の半公式?サイトである「ムサビコム」というところでライターをやらせてもらっていた縁で
手羽さんからお誘いを受けて、このたび寄稿させていただくことになりました。
近況ですとか思ってること、美大生活で役に立ったことなど書きたいと思います。

よろしくお願いいたします。


■最近の仕事

会社員的なアレをこなしつつ順調に偉くなっているもののやること自体はあんまり変わらず、
業務用機器のプロダクトデザインという枠でやってきたのですが、
ここ2、3年でGUI(グラフィックユーザーインターフェース)デザインの世界に足を突っ込んでいます。
要は画面の中にあるコンテンツのデザインですね。

業務用機器もタッチパネル化が進んでいて、
周りにやれる人もいないのでじゃあ自分でやるかといった感じで。
10年前の大学時代にはGUIデザインは1週間ほど課題でやった程度だったので
ほとんどゼロからの状態で、仕事と同時進行でGUIの勉強をしました。

新幹線に乗って別の事業場で家電系のGUIデザインをやっている先輩のところに行って
監修ついでにいろいろ教えてもらったり
最初の方はかなり大変でしたが良い経験になっています。

GUIデザインの世界はトンチの利かせどころや開発の進め方なんかも
モノのデザインとはかなり違っていて、
人の心の動きだとか、脳はどう認識するかみたいなのに深く入って考えるのが
とても楽しいし面白いです。

ちなみに今だとGUIをUI(ユーザーインターフェース)とかUX(ユーザーエクスペリエンス)
みたいに言い換えて語るのが流行っているというか、
とりあえずUIだのUXだのいっとけばOKみたいな空気が出ていますが
個人的にはこの風潮があんまり好きではないです。
UIやUXはプロダクトと人間の関わりや接点全般を指す考え方ですが
画面の中「だけ」いじってUI/UXデザイナーでございみたいな人が多すぎに感じるので。
便利な言葉ではあるので良し悪しですけどね。


■美大生活でよかったこと、役に立ったこと

10年経っちゃってるんで大学時代のことを思い出せと言われてもアレなんですが、

ぶっちゃけ大手の企業でプロダクトデザイナーやりたかったら
美大に入っちゃうのが一番ラクチンというか他のルートがほとんど存在しないのが現状かと思います。
そういう意味では、
今の仕事をする上でいちばん役に立ったのは「大学の名前」になっちゃうかもしれませんね。
スキルは社会人になってからも磨けますし。
美大行ってよかった事はたくさんあると思うしたぶん思っている以上にあるんだろうけど、
難しいところで、いつも悩みます。
私生活では、「多少ヘンでも美大卒と言えば許される」、これに尽きます。
美大卒ちょう便利!


逆に少し後悔しているのは、
(矛盾するようですが)もうちょっとちゃんと勉強しとけばよかったということです。

社会に出てからだと、
学生だったころに比べて学習コストが高くなる傾向にあると思います。
仕事も家庭もあるので勉強に充てる時間を捻出するのも大変だし、
壁にぶつかったときに気軽に聞ける人も近くにいません。

ここ数年、仕事半分趣味半分で塗料や色彩学について勉強しているのですが、
実は大学1年生の頃にも色彩学の授業を履修していました。
色については当時も興味がないわけではなかったのですが
入学1日目の新歓で「異常に単位がとりやすい」という噂を聞いて取った、
というのが実際のところで、当然講義もまじめに聞いていませんでした。

教科書に落書きしながら、眠たい話し方をするセンセーだなあ、なんて思ってましたが
当たり前なんですけど色彩学の分野では権威なんですよね。
論文漁ってると普通にバンバン名前出てくるし。
今だからそう思うんであって言ってもしょうがないんですが、
せっかく取ったのにもったいないことしたな、という思いです。
今あの人が近くにいれば、わかんないこと色々聞いたのになあと切に思います。


それと、色の勉強はめちゃくちゃ面白いですよ。

色について調べてると、物理、化学、歴史、言語、数学、地理、生物なんでもでてきます。
論文とかあたっても美術関連だけではなくて本当にいろんな畑の人が色を扱ってるし
例えばちょっと「緑」を調べるだけで植物の光合成とか猿の進化とか古語の「瑞々し」とか
話がどこに行くかわかんなくて本当にエキサイティングです。

色彩関連は、美術関係を生業にするなら勉強しておいて損はないと思います。
オレはお勉強なんかせずにセンス一本でやっていくぜ!という人も
論理を学んでおけばクライアントや上司を説得しやすいですしね。


■おしまいに

昨年、娘が生まれたのですが(超かわいいです)
出産祝いと称して手羽さんがHGUC1/144ネオ・ジオング(くそでかいガンプラ)を
送りつけてきました。

これ http://www.amazon.co.jp/dp/B00KCHRSJM です。
254mm×457mm×864mmの巨大な段ボールを6畳の自室に鎮座させること約1年、
手羽さんからは折に触れ

「早くネオジオングの顔が見たい」

とSNS等で絡まれ
ダンナの実家で初孫へのプレッシャーをかけられる嫁に似た居心地の悪さを体験していましたが
あれから1年、ついに、やっと、いよいよ、








引越しのときに邪魔だったので売りました。

ほんとうにもうしわけありません。

実は本原稿の締め切りを2回ほどブッチしているのですが、
やさしくて純粋な手羽さんはきっと
「梅雨だし、記事に載せるためのネオジオングの塗装に時間がかかっているんだろうな」
と思って笑って待っていてくれていたのではないかと思います。


ごめんなさい、
未組み立て美品の状態で売りました。


結構な額のお金に姿を変えたネオ・ジオングは、
最終的に人の尿意の器(パンパース)となって大いに役に立っております。
パンパース高いんだよ…トイレトレーニングせな…


手羽さん、
パンパースありがとうございました!!!!!



久しぶりすぎて文章がなかなかまとまらず、
最後の方は完全に私信と言い訳になってしまいましたが、
私からは以上になります。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。

最終的に何をいいたいかというと、
美大は楽しかったし、今も楽しいです!



「尿意の器」のフレーズが出た時点でやっとまとまるな、と思った珍念
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久しぶりに「メールを見て絶句する」を経験しました・・。

第2話目は最初から珍念くんと決めてまして。
彼の文章は読みやすいし、こちらの趣旨を理解してくれる人物なので、最初の方に持ってくることで次に書く人の参考になるはずだと信じて。
第1話からの間があいたのは、(オーキャンモードに突入しちゃったのもあるけど)珍念くんの原稿が遅れてるからだったんだけど、心優しい手羽は
「原稿が遅くなってるのは、きっと 『あ。やべ。仕事も子育ても忙しくてネオジオングまだ作ってないや。塗装が終わったら写真撮って原稿送ろう』と思ってるんだろうなあ」
と本気で思ってました。
2回「もう少し待って」メールが来て、「きっと奥さんから怒られながらも頑張って作ってるんだろうなあ。そんなにあわてて塗装する必要なんてないのに(笑)」と本気で思ってました。

そして、昨晩珍念くんから待望のメールが届いたの。


なにが、尿意の器だよ!全然うまくないし!!
しかも
「バナー用意しました。 自分で撮ったやつなので権利関係はだいじょぶです。」
って、何の権利だよ!
なんだよ、これ、ネオジオングの代わりかよっ!


いや、薄々は感じてたよ。
空気読めない手羽でも「邪魔なもの、送っちゃったかな?奥さん、怒ってるかな?」と。
でも、薄々だよ。パンパースぐらい薄々だよ。
作らずに売ってしまうとは思うわけないじゃん。

本当にメールを読んで言葉を失い、動揺しました。
どれくらい動揺したかというと、

無意識にタグを「作品を売る」にチェックいれちゃってたくらい動揺してました(実話)
売ってないし!売られてるし!てか作品でもないし!


ま、過ちを気に病む事は無いよ。
認めて、次の糧にできるのが大人の特権だからね。

本文にとってもいいこと書いてるけど、スルーの方向で。



以上、珍念くんのメールの最後に「引っ越しました」と新しい住所が書かれてたんだけど、これは暗に「新居祝いにデンドロビウム http://www.amazon.co.jp/dp/B00030EU9Y  を送れ」というメッセージなんだな、と受け取った手羽がお送りいたしました。
オッサンを怒らせると怖いよ。
1歳の赤ちゃんぐらい怖いよ。



今日のまとめ
●デンドロビウムの花言葉「わがままな美人」ではなく、「わがままな美大」になってやる

よし、手羽美術大学★開設の野望がまた一歩近づいた!!

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OTONA WRITER

手羽イチロウ / teba ichiro

【美大愛好家】 福岡県出身。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。 2003年より学生ブログサイト「ムサビコム」、2009年より「美大日記」を運営。2007年「ムサビ日記 -リアルな美大の日常を」を出版。三谷幸喜と浦沢直樹とみうらじゅんと羽海野チカとハイキュー!と合体変形ロボットとパシリムとムサビと美大が好きで、シャンプーはマシェリを20年愛用。理想の美大「手羽美術大学★」設立を目指し奮闘中。