明日いい絵を描きたいから、少しでも早く上手になりたい。—アーティスト・ドラマーSATOKO

DREAMS COME TRUE、稲葉浩志ら数々の一流アーティストのサポートドラマーでありながら、作家・画家としても注目を集めるSATOKOさん。昨年11月に行った個展では、ドラムとアートを融合させた作品を発表し、会場には多くのファンが詰めかけました。大切な思い出にそっと触れるような、優しい色使いに溢れる作品たちは、一体どこからやってくるのか。SATOKOさんにインタビューを行いました。

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絵画との出会い



絵を描くのは小さい時から好きだったんですけど、覚えてるのは幼稚園の時、「洗えるクレヨン」を使って描いていて、上手く行かなかった部分を洗ったんですね。そしたら先生に「なんで消しちゃうの、アレはもう戻ってこないのよ」ってめちゃくちゃ怒られて。その時に、絵はミスしても直してはならないという覚悟が必要なんだなって思ったのが、最初の記憶ですね。


良い体験を表現するには、絵がぴったりだった




とにかく何にでも興味をもつような子供だったので、最初は絵も詩も、たくさんある興味の中の一つでした。飛び抜けて人より上手だったってわけでもないですし。訳もなく闇雲に描いていましたが、今思うと、ドラムで表現しきれない部分を絵や詩で補っていたのかなと思います。

それに、自分の中にイメージとして残った良い体験を表現するには、絵がぴったりだったんです。ドラムが常に自分の中心にあるのは前提なのですが、どうしてもドラムだと音の長さ、音量のダイナミクス、時間の中の位置、などを決められた時間の中で、追われながらその場で完成させなきゃいけない。だからこそ絵の、完成してもずっと残るところ、時間にとらわれずに一人で描き続けられるところに惹かれました。そしてまた、そういう中から時間に詰め込めるものを探しているのかも知れないですね。

一人でもできることを、あえてたくさんの人と実現したときのエネルギーはすごい




昨年11月に開いた個展「SATOKO exhibition DORAMU TO AATO」では、初めてドラムヘッドに絵を描きました。ドラムヘッドって、もともと音質を変化させるために吹き付けができるようになっていて、ほぼキャンバスと同じなんです。ドラマーがドラムに描くって、ある意味普通すぎるかな?という心配もあったんですけど、面白かったです。

今回の個展のために、初めてクラウドファンディングを使ってみたんですが、一人でもできることを、あえてたくさんの人と実現したときのエネルギーはすごいと思いました。クラウドファンディングを通してみんなで作ったリトグラフはやっぱり特別で、お客様の見る目も違うし、絵がドヤ顔になれる感じというか、それが本当に素敵でしたね。



自分が無条件に「いい」と思うものでいい




すごくセンスがいい人ってキラキラしているから羨ましいんだけど、例えばその人の絵を100人に見せたとしたら、そのうちの一人はなんとも思わなかったりする。“万人に愛されるとたった一人に愛されない可能性が生まれて、たった一人に愛されると万人に愛されない可能性が生まれてしまう”ということですね。だからこそ理屈抜きで自分が「これだ」って思えるものをやるしかない。それが世に言う「降りてくる」ってことなんじゃないかな。たとえ何にもならなかったとしても繋がっていくものは必ずあるから、その絵を描いたっていう事実は、素晴らしいことだと思うんです。

それに、描いたものも大事なんですけど、見てくれた人が何を思うかも大事。子供ができなくて悩んでいた方が、小さな恐竜の赤ちゃんの絵を気に入ってくれたことがあって。私ができることはほんの小さなことなんですけど、自分の絵が誰かの癒しになったり、誰かにとっての一番になれるかもしれないことが嬉しかったですね。


明日いい絵を描きたいから、少しでも早く上手になりたい



ドラムも絵も、頭の中である程度考えてから本番に挑んでいます。ドラムって音が大きいから、叩きたくなったらスタジオまで行かなくちゃいけない。すぐに鳴らせないからこそ、想像で補ってきました。クリエイターには理詰めのタイプとひらめきのタイプがいると思うんですけど、私は後者ですね。「こういう表現が素晴らしい」みたいなことは考えず、パッと思いついたものを落とし込んでいます。想像通りのものがピンとくるものになるとは限らないので、わざと起き抜けに描くなど、自分を鈍らせる工夫もしています。

悩みやすいなら、丸とか三角とか、最初に描くものを決めておけばいいんじゃないかな。まずひたすら目を描いて、うまくできたらそこに生き物を仕上げていく、という方法を続けている方もいらっしゃいます。

私は、特別な場合を除いて、必ず顔の角度は左向きと決めています。角度を決めると、経験値が上がるからうまくなる。明日いい絵を描きたいから、少しでも早く上手になりたいんです。


◆ SATOKO

1982年9月10日生まれ。 13歳でドラムを始め、様々なバンドやセッションに参加し始める。2003年からFUZZY CONTROLの活動を開始。ドラムコーラスと作詞を担当し、レコーディング、ライブ活動を行うと同時に、ドラムのワークショップを全国各地で展開。その傍ら、DREAMS COME TRUE、吉川晃司、DAITA、稲葉浩志、花澤香菜等、多数のアーティストのサポートも行っている。左利きのため、変形セットを操る。2013年には自身初の書籍「たった、少しの覚悟で冒険するドラゴン」(光文社)を出版。2015年からは各地で絵画個展を開催。作家、画家としても活動の幅を広げている。執筆活動にも力を注いでいる。

-HP
http://satoko-drum.com/
-twitter
https://twitter.com/fc_satoko
-絵本「たった、少しの覚悟で冒険するドラゴン」
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%9F%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%81%E5%B0%91%E3%81%97%E3%81%AE%E8%A6%9A%E6%82%9F%E3%81%A7%E5%86%92%E9%99%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3-SATOKO/dp/4334901956


(執筆・梅本 智子)

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