草間彌生がニューヨーク・チリ・台湾で大フィーバー!

今年86歳になった日本を誇る現代美術作家、草間彌生氏。彼女は近年も数多くの作品を世に生み出しつづけていますが、同時に、それらの作品が世界各地で展示され、広く楽しまれ、その勢いが止まる気配はありません。チリで開催されている展示「Obsession Infinita」を紹介しながら、その草間彌生の勢いに迫ってみたいと思います。

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南米チリで13万人以上の来場を記録した驚くべき草間彌生展!

ある日、スペイン語の授業中に、
私が美大を卒業していることを知っている先生が、
嬉々として語りかけてきました。
※私は現在チリ在住5ヶ月目、絶賛スペイン語の勉強中


「日本人のアーティスト、名前はややこしくて忘れてしまったけど、来週から展示が始まるって噂になっているわよ!」

ネットで検索したらすぐにわかりました。チリで初開催の草間彌生さんの展示。会期が始まる前から、スペイン語の先生(別にアートが特段好きなわけではないはず)が知っているなんてすごいなぁ‥‥! 


家から徒歩圏内にある美術館で開催されるというから、週末の昼過ぎ、お散歩がてら美術館に向かったのですが‥‥、チケット売り場を探しても、見つからない。

係の人に聞いてみると、
「朝一番にこないと、チケットはないわよ」と。
なにやら、午前中早い時間にチケットはなくなるのだというのです。


  • 朝9:45頃、すでに美術館には長蛇の列(写真左にもずっと伸びる‥‥)


  • お目当は、チリ初の草間彌生展。

気を取り直し、日曜日の朝9時半。美術館に足を運んでみると、そこには噂通りの長蛇の列ができていました。列に並んで手に入れた整理券、配られたのは11:30〜12:00のチケットでした。直島の地中美術館じゃないんだから‥‥!
驚くべきことに、客層が非常に幅広く、小さい子供連れのファミリー層から高校生や大学生と思われる若いカップル、両親世代の大人まで。展示が無料だということも追い風となり、毎週末長蛇の列ができる人気展となっていたのでした。


  • 本展のタイトル「Obsesión Infinita」

3月から始まったチリでの草間彌生展「Obsession Infinita」は、会期3ヶ月を通じて13.5万人以上の来場者を記録。残念ながら私のリサーチ力では、他の展示の来場者数との比較はできませんが、各種ウェブニュースで大きく取り上げられていることからも、非常に人気の高い展示であることが伺えます。この来場者数を後押ししたのが、学校だったそう。うち2万2千人以上は、学校が美術教育の一環として、授業の時間をつかって学生と共に訪れたというのです。



草間彌生の変遷を学生時代から追える網羅的な展示


  • 入り口で渡される丸いシールで真っ白の部屋を埋め尽くす参加型インスタレーション

  • 暗闇にブラックライトで光るカラフルなドット柄

展示内容は、草間彌生氏が1948年に京都で美術の勉強を始めたころの、非常に若い作品に始まり、100を超える絵画作品・映像作品・インスタレーション作品が集いました。また、人気の秘密は数多くの写真スポット。会場内の作品のうち4つのインスタレーションで撮影が可能。思い思いに作品のなかで写真を取り、FacebookやInstagramなどのSNSで写真を投稿することで、話題は一気に広がりました。
私自身、松本市美術館での草間彌生コレクションなども観た経験がありますが、近年制作したペインティング作品の数に改めて驚かされます。たとえば今回このチリの展示では、【2012年】に描かれたペインティングが20点以上。いずれも非常にビビッドで飽きさせない作品の数々。底知れぬ制作のエネルギーに、世界が評価するアーティストの強さを感じずにはいられませんでした。



Instagramの#yayoikusamaで気づいた、世界各地での展示!


  • Instagramのハッシュタグ #YAYOIKUSAMA

帰宅するなり、やはり私もInstagramで投稿したくなり、作品のなかで撮影した写真をアップしました。#yayoikusamaをくっつけて。そこで初めて気がついたのです。#yayoikusamaで投稿されている他の画像をみると、ユーザー参加型のインスタレーション作品の画像が、チリではすでに壁が埋め尽くされてカラフルになっていたはずなのに、投稿された別の写真上ではまだ白い空間が残っている。

「わ!リアルタイムにチリ以外からも似た展示の写真があがってきている!!」と、それらの写真を見てようやく気づいたのでした。

チリ・サンチャゴ以外に、Instagramで数多く投稿されていたのはアメリカ・ニューヨークからの投稿。調べてみると、ニューヨークチェルシー街にあるギャラリーDavid Zwirnerでも、展示「YAYOI KUSAMA GIVE ME LOVE」が開催されていました。

さらに、草間彌生氏のオフィシャルサイト(http://www.yayoi-kusama.jp/e/information/)を訪れてみると‥‥!


  • http://www.yayoi-kusama.jp/e/information/

(草間彌生オフィシャルサイト Informationページより)
6.jun.2015-30.aug.2015
KUSAMA YAYOI, A Dream I Dreamed
National Taiwan Museum of Fine Arts

12.jun.2015-9.aug.2015
YAYOI KUSAMA: INFINITY THEORY
Garage Museum of Contemporary Art, Moscow

9.may.2015-13.jun.2015
YAYOI KUSAMA GIVE ME LOVE
David Zwirner, New York

7.mar.2015-7.jun.2015
Yayoi Kusama. Obsession Infinita [ Infinite Obsession]
Fundación CorpArtes, Santiago, Chili


ということで、モスクワとサンチャゴは重なっていないものの、同時期に世界4都市での展示が開催されていました。そして、Instagramなどを通じて各展示の内容を見ていると‥‥、やはり2010年以降にたくさん描いているペインティングの作品が、チリに負けず劣らず数多く展示されているのです。恐るべし80歳代の現役アーティスト。一体1年に何作品作っているんだろうと、好奇心が湧きました。

SNSを通じ、地球のあちこちで草間彌生の作品を楽しむ様子がシェアされる様子は、草間彌生の大フィーバーに感じられます。世界に誇る草間彌生氏。言語の壁を越えて、世界各地で愛される彼女の作品を見ながら、やはり改めてその作品の揺るがない強さと信念を感じました。

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OTONA WRITER

natsumiueno / natsumiueno

編集者/メディエイター。美大での4年間は「アートと世の中を繋ぐ人になる」ことを目標に、フリーペーパーPARTNERを編集してみたり、展覧会THE SIXの運営をしてみたり、就活アート展『美ナビ展』の企画書をつくったりしてすごしました。現在チリ・サンチャゴ在住。ウェブメディアPARTNERの編集、記事執筆など。