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イラストレーター
飛永 雄大
1986年生まれ。東京都出身。日本デザイン専門学校イラストレーション専攻卒業、同グラフィックデザイン研究科修了。2013年よりクリエイティブユニット『16bit.』に参加。鉛筆による細密描写や、ベジェ曲線・パスによる平面的なキャラクターイラストレーションを制作している。
http://takehirotobinaga.16bit.co.jp/
http://16bit.co.jp
http://agenthamyak.com/artists/takehiro-tobinaga
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Adobe Remixプロジェクト。それは、Adobeの有名な「A」のマークを、アーティストが様々な手法を用いて表現するプロジェクト。クリエイターにとってのAdobeというテーマを、2Dから3D、アニメーションから立体インスタレーションまで、自由に表現する。これまでにGMUNKやSagmeister & Walshなど、世界の錚々たるクリエイターが参加し、作り上げた作品は全世界のAdobeクリエイターのもとに紹介されてきた。
そんな世界的プロジェクトに、日本人で初めて白羽の矢が立ったのが、東京を拠点に活動するイラストレーターの飛永雄大さん。切り絵のアニメーションでAdobeのクリエイティビティを見事に表現している。
>> Adobe Remixプロジェクト「車輪ノ再発明」
——飛永さんが最初に絵を志したきっかけは?
飛永:絵を描くこと自体は元々好きで、学校の授業中、教科書に絵を描いていたタイプでした。本格的に絵を描きだしたのは高校卒業後、専門学校に入ってから。日本デザイン専門学校のイラストレーション科に進学し、基本的なスタイルや画材の使い方、デッサンなどを学びました。
——デジタルでのイラストレーションは在学中に始められたんですか?
飛永:専門学校時代はアナログで描いていました。というのも、僕はイラスト科なんですが、パソコンの置いてある教室をグラフィック科が主に使用していたのであまり使う機会がなかったんです。なので卒業後に自分でMacを買って、おもにIllustratorとPhotoshopを独学で習得していきました。
——キャリアについて教えてください。専門学校に行かれた後は?
飛永:専門卒業後はずっと、アルバイトをしながら絵を書き溜めていました。アルバイト先は映画館です。たまたま、映写技師の先輩がやっている会社でグラフィックできる人を探しているという話を聞いて、いま在籍している映像とグラフィックのプロダクション「16ビット」にアルバイトで入社しました。会社の仕事ではクライアントワークを手がけているので、自分の作風で仕事をしているという感じではないですね。
——個人クリエイターとして活動した最初の仕事は?
飛永:僕はずっと篭って絵を書いていたので、実は2015年の「Adobe MakeIt Campaign」が最初のクリエイターとしての仕事でした。熊野古道に入り込んで、現地で得たインスピレーションを元にイラストを描き、森の中に設置したライトボックスに展示するというプロジェクトです。
「Adobe MakeIt Campaign」
——美しい森から飛永さんがインスピレーションを受けているのが伝わってくる映像作品でした。
飛永:熊野には10日間滞在しました。最初の二日間はインスピレーションがひらめく場所をひたすら探して、あとの期間は閉じこもって絵を描くという。熊野のエリアが想像していたよりも広くて、ロケーションだけでも大変でしたが、仕上がりは満足しています。
——このプロジェクトを始めたきっかけは?
飛永:アジアのクリエイティブネットワークのサイト「Ubies.net」に自分が描いた絵を掲載していたのがきっかけです。USのクリエイティブエージェンシーの担当者が絵を見て、「このアーティストを探せ!」となったらしく、いま僕が所属しているエージェント「Agent Hamyak」を通じて突然メールを頂いたんです。
——それはすごいシンデレラ・ストーリーですね。
飛永:AdobeのポートフォリオサイトBehanceもそうですが、海外の人が見ているポートフォリオサイトに掲載することで、外への繋がりが生まれていきました。自分はSNSが苦手なので、ポートフォリオサイトに登録するのは性に合っています。
——今回のAdobe Remixプロジェクトが始まったきっかけを教えてください。
飛永:「Adobe Make It Campaign」を見たUSのAdobeの方から、また突然連絡があって始まりました。
——どのようなコンセプトで制作されたのでしょうか?
飛永:「Adobe Make it」 のキャンペーンで感じたのが、「まわりのもの全てを、自分のインスピレーションやクリエイティブエレメントに変えるのがAdobeだ」ということでした。そこで廃棄物処理場を舞台に、ゴミとして扱われているような古いものも、アイデア次第で新しい価値を生み出すことができるというコンセプトを考えました。タイトルの「車輪の再発明」は、もともとあるものを一から作ろうということ。通常はネガティブな意味で使われる事が多いですが、ここではポジティブな意味で使っています。
——複雑なエレメントが複雑に動くのが魅力ですが、どのように作られていったのでしょうか。
飛永:アニメーションは切り絵をコマ撮りする「カットアウト・アニメーション」という古典的な手法で行っています。まず、僕が絵コンテをアナログで描きました。次に、パーツごとに描いたモチーフをPhotoshopとIllustratorで描いて、それらをプリントアウトして切り抜き、カメラで一コマずつ撮影していくんです。アニメーションの担当は、カットアウトアニメ作家の岡本将徳さん。僕の描いたビジュアルを岡本さんの手作業のコマ撮りによってアニメーションさせました。サウンドは雨森諭司さんによるもので、マテリアルそれぞれの動きにSEを加えていただき、ミニマルな音楽になりました。
——飛永さんが現在取り組んでいるプロジェクトについて教えて下さい。
飛永:9月30日(金)〜10月2日(日)に大阪梅田ハービスホールで行われる『UNKNOWN ASIA ART EXCHANGE OSAKA 2016』に出展者として参加する予定です。
——最後に、これからの夢は?
飛永:特にこうなりたい、これを目指している、ということはありません。ずっと、絵を描くことが続けられればと思っています。
世界を唸らせた、飛永さんのクリエイティブ・ワーク。Adobe Remixプロジェクト「車輪ノ再発明」の制作過程はBehanceにて公開中。ぜひご覧下さい。
(執筆 / 齋藤あきこ)
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