「ねぇこれ、バズらせてよ!」
と最近、1週間に何回言われるかわかりません。「この企画をバズらせたい」「このイベントをバズらせてほしい」いや、ありがたい。ありがたいことなんです!精一杯がんばりたい。でも、全盛期のイチローでも3割7部8厘、10回打席に出たら、6、7回は外すんです。
全部が全部、ヒットすると思ったら大間違いでして……。
と、突然脈絡もなく悩みごとをぶつけてすみません……。私の名前は塩谷舞です。小学校時代からインターネットにハマり、ネット歴はもう17年、まもなく27歳。今はPR・Web編集者という肩書きのもと、記事を書いたり、広めたり、Webサイトを作ったりして生きています。
ここPARTNERを読む美大生が「バズる」って言葉をどれくらい使ってるか分かりかねるのですが、今や広告・Web業界の人たちはもう、おはようの代わりにバズ〜バズ〜って言ってますよね。意味がわからない方はこちらを参照しておくれ。
私はライター職ですが、イラストレーターにも、漫画家にも、映像作家にも、写真家にも、バズらせ技術が超重要になっている今の時代。
アクセス数を伸ばせる文章。
リツイートを稼げるイラスト。
再生回数が伸びやすい動画。
そんなバズ技術を日々研鑽させまくると、お金が稼げて、生きていける世界になったのです。私自身、そんな評価指標の中で、たくさんの数字を稼ぐことで、お金を稼いで生きています。
私は非常にあざとい人間なので、いくつかのテクニックを複合的に組み合わせてバズったときには「勝った!」とガッツポーズをするわけです。
でもそこで生まれる新作は、1・2日限りで消えていく。ネットは消化・消耗がうずまくブラックホールのよう……。書いては流れ、書いては流れ。刹那的すぎるでしょ。。
うーーーん、そもそも。自分って、何がやりたいんだっけ?
私は、モノを作る人の圧倒的な力に惚れて、その魔法のような実力を地球上に知らしめたいと思って、今の仕事にたどり着きました。
小さなムーブメントを見つけて伝えて、大きな大きなうねりにしたい。あなたが知らない「まだ見ぬ何か」を熱烈に好きになってもらうために、えぐり突き刺さるような言葉を届けたい。100年後の文化史として、鮮やかに残るものを築きたい。そして、地球上にある希望の数をできる限り増やしたい。そのために宣伝屋さんになりました。だから、刹那的に消費されてちゃ、駄目なんだ。
もちろん、数字は大切な大切な指標です。私は食事中も入浴中もアクセス解析を見張り続けているほどに数字中毒……。
ですが、もっと大切にしたいのは、発信した相手の感情にどれだけ訴えかけるか……という「感情の深度」。
軽くないもの。いっときの消費で終わらないもの。相手の深い深い感情部分までドスッと落とせるようなものを、どれだけ生み出せるだろうか?そんなことを忘れないようにしなきゃって思います。
たとえば、前回ここPARTNERで書かせていただいたライゾマティクス・真鍋大度さんのインタビュー。「時代の寵児」でもあるスーパースターは多くを語らず、でもそんな真鍋さんの深い部分にどこまで迫れるか、勝負したかった。
結果、真鍋さんは全力で伝えることに応えてくれて、この記事を読んで、ぐっさり刺さった! という声を聞けた。すごくすごく嬉しかった。
でも、時代を作りたいのならば記事を書くだけじゃもう全然成立しない。ましてや、権威的な雑誌であっても、その文脈から流行を生むことは、随分と難しい時代になってきてしまった。
じゃあ何をすればいいのか? 手段はなんでもいい。イベントを運営したり、コミュニティの管理人になったり、プロモーションのあれこれを考えたり、編集者がやるべきことは、めちゃめちゃ多い。多すぎて、どこから攻めたらいいのか混乱してしまう。
そんなことで悩んでいると、いつも「これじゃん!」と未来を示してくれる先輩が、編集者の佐渡島庸平さん。『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』などの超ヒット作を生み出した編集者であり、コルクの代表取締役でもあり。佐渡島さんはクリエイティブに必要なロマンと、経営に必要なクレバーさを、両方おっそろしいレベルで携えておられる。おっそろしい。おそろしい!(失礼)
佐渡島さんと仕事の打ち合わせをしていると、必ず未来の話になっている。
「塩谷さんは、ネット時代の編集者だね。これからどんな形で仕事をしていくの?」
そこで出てくるご意見がこれまた面白くて、ぜひともみんなに共有したいんだ。
未来の編集者の在り方。
時代に残る作品の生み出し方。
質を高めていくための仕組みの作り方。
そんな話の深堀りは、10月24日の13時から、TOKYO DESIGN WEEK「ソクラテスカフェ」にてディスカッションします。ぜひ来てください!
……「宣伝かよ!」と思いましたか?
そうです、すみません宣伝で……。あざとくてすみません…。でも、あざとさを持ってないと、有象無象が渦巻くインターネットなんてやっていけないから……。純粋なメンタルだともう精神ぐさぐさだから……。
どんなトークになるのか、どう転ぶのかはわかりませんが、「コンテンツ業界ってネットのせいでマネタイズできなくなったよね」だなんてありふれたつまらん話はしないぞ。この先、私たちはどんな編集者になっているのか? どんな仕組みを作っていくのか? どうやって未来に作品を残すのか?
私はデータ解析が苦手ですが、代わりに「将来的にも感動できるものか否か」という自分の嗅覚だけは信じていいんじゃないかと思っています。ハタから見たら不安な指針かもしれないけど、予定調和を繰り返すだけの毎日を過ごすほうがずっと、ストレスフルだ。
不安いっぱい、それ以上に希望いっぱいの会にしたいと思っています。
これからの時代の「働き方」や「食い方」に迷う方。もう全力で一緒に迷いながら、新しい答えにぶつかっていっちゃいましょう。
ご意見、ばしばしお待ちしてます。ぜひ、現場で!
Text by 塩谷舞(@ciotan)
TOKYO DESIGNER WEEK ソクラテスカフェ
佐渡島庸平(株式会社コルク 代表)× 塩谷舞(PR・WEB編集者)
2015/10/24 (土) 13:00 - 15:00 JST
会場:TOKYO DESIGN WEEK 2015 ソクラテスカフェ
チケット:TDW入場料込 ¥3,500
住所:東京都新宿区霞ヶ丘町2-3 明治神宮外苑絵画館前
アクセス:外苑前駅・青山一丁目駅・信濃町駅より徒歩5分
事前にPeatixにてチケットをお求めください。80名限定のイベントとなります。
http://peatix.com/event/118298
ソクラテスカフェに関してはこちら
フリーランスのPRプランナー、Web編集者です。大学時代に関西の美大生をつなぐネットワーク「SHAKE ART!」を立ち上げ、イベント企画、フリーペーパー発行、何でもやっていました。アートギャラリーDMO ARTSでの販売員も。株式会社CINRAでのWebディレクター・PRを経て、フリーランスに。THE BAKE MAGAZINE編集長もやってます。インターネットが大好き。