コラムニストの憂鬱その4「親父の彼女」

深夜が好きかい。僕は深夜が好きだい。

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深夜は、東京での孤独な暮らしの影をよりくっきりと映し出す。
真っ黒なスモッグの空、人照らす電柱の街灯、光々と明かりを発し続けるコンビニ。

昨日、見たテレビによると40年前の人は11時にもなると床に入っていたそうだ。
文明化が進むほどに、人は深夜という時間帯に自由を見いだした。
テレビを見たり、ラジオを聴いたり。
今ではドン・キホーテでブランド物を買うこともできる。
深夜、ファミリーレストランで和洋好きなメニューを食べることも可能。
文化が行き過ぎた感もあるが、便利な時代であることは間違いない。

深夜のファミレスで友達と夜通しくだらない冗談を話しながら、
無限にあると勘違いしている青い時代を誰もが経験したはずだ。
また、そこで見るファミレスの深夜の住人との邂逅もあるだろう。
大量の新聞紙抱えスクラップに余念がないおっさん。
4人掛けのテーブルを占領し参考書片手に勉強に勤しむ受験生。
灰の山が雪崩を起こしそうなほどに積まれた灰皿を尻目にバカ話をする大学生集団。
仕事かえりに飯を食べるサラリーマンなど。
深夜のファミレスは人種のるつぼだ。

深夜、いや明確に印そう15年4月8日の深夜未明。
仕事を終えた僕は、飯を食べに徒歩3分ほどに距離にあるファミレスに足を運んだ。

扉を開ける。いつもの太った店員が対応してくれる。
「ご自由に席をどうぞ」
深夜帯はガラガラなので、自由に席を選ぶスタイル。
広いフロアを見回す。自分の好きな席の空き具合をチェック。
窓側の角は、一般客からDQN、老若男女一番人気の席だ。
大型トラックがひっきりなしに走る新青梅街道を横目に、
コーヒーをすすれば自分に酔えるだろう。
今晩は漫画家がネームを描いているようだ。
「他の席を探すか」と席を見る。そこで目に留まったのは、
おっさんとおばさんのカップル後ろ姿。
通常、対面して座るところを肩を寄せ合い同じソファーに座っている。
初々しい高校生カップルならもラブ濃度の高さに好感も持てる。
しかし、おっさんとおばさんだと悪い意味で目立つ。
はっきり言ってめちゃくちゃ痛い。

だが、これが深夜のファミレスの良さ。
「この人達ナニやってるんだろう・・・」と考えるキッカケを与えれくれる場所。
もう一度書く。それが深夜のファミレスの良さ。

熟年カップルが顔でもちょっくら拝むかと、横切る際、顔見た。
・・・!?

・・・オ・・・ヤ・・・ジ
親父!?
親父かよっ!?
僕は自分の目を疑った。そう、熟年カップルの男が僕の父親だったのである。

一応英語でも書いておこう。
One of the couple was my father.

次の瞬間には、
「なぜここに親父が?」「この女との関係は?」「ここでコイツらは何をやっているんだ?」
という沢山のクエスションが浮かんでは消えた。

同時に、先ほどまであった嘲笑ってやる!といった邪神は消え、今すぐここから立ち去りたいという思いが強くなった。
多くのことを考えたが答えを出すまで、ほんの一瞬だったと思う。
運が良いことに親父は、女に夢中。僕に気づくことはなかった。
足早にファミレスを去った。

外に出て時計を見る。深夜3時20分。
逆算すると僕が親父の逢瀬を見たのは深夜3時18分だ。

家では家長として君臨し、誰よりも自分の意思を優先してきた男である。
広告代理店の社長で、青山に事務所を持ち、スタッフを20人抱えていた社長だった。
確かに、平日はほぼ一緒に飯を食ったことがない家庭人としてのイマイチの親父でもあるが、
仕事人として年収も高く尊敬に値する男である。
現在は、仕事もセミリタイアし、
家でナンシー関ばりにテレビウォッチャーを続ける親父ではあるが敬ってはいる。
しかし、あの女の前では、まるで舎弟のようなふるまい。
若い女に気をつかう、ただのおっさんである。

ショックを受けた。

次の朝、そのショックを抱えながら仕事場から自宅へ足を運んだ。
久々にお袋と対面し朝食を食べた。昨日の夜の出来事を言いたい、けど言えない。
知ったら、お袋ショック受けるだろうなぁと考えるとブルーな気分に。
歯切れの悪い意味のない会話が続く。
けど覚悟を決めた。僕はこう切り出した。
「親父、昨日の深夜、家にいた?」
お袋「いなかったよ」
僕「へぇー」
お袋「なんで、いきなりそんなこと聞いたの」
僕「別に意味ないよ」
お袋「そうなんだ。最近、親父彼女できたみただよ」
僕「えっ」
女の勘は鋭い。
そのあとは書かずもがな。昨晩のことは全て洗いざらい話した。
お袋は、その話を聞いても特にショックを受けることはなく「親父の相手をしてくれる人がいるだけでありがたいじゃない。ただ、お金とか取られてないか心配」と言った。
女は強い。

その後、久しぶりにあったムサビ時代の恩師・板東孝明教授にこの話をした。
僕は「親父も相手が壇蜜みたいなら良かったけど、フィリピン人のおばちゃんだったんですよ」
と言った。
板東教授は「あなたのお父さん、壇蜜と付き合う価値あると思いますか?」と即レス。
息子のひいき目で親父を見ていたことが急に恥ずかしくなり「ぐぬぬ」と口をつぐんだ。
板東教授は、いつも正しいことしか言わない。

次の日。お袋に板東教授が言った「親父と壇蜜は不釣り合い」の話をした。
するとお袋「流石、板東先生」と一言。
女は強い。

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OTONA WRITER

ヨシムラヒロム / Hiromu Yoshimura

中野区観光大使やっています。最近、29歳になりました!趣味は読書です。