KAWSからアンディ・ウォーホルまで。マカオの街並みにアートが同居した新感覚の芸術祭「アート・マカオ」レポート。

世界最大のカジノやショッピングモールをはじめ、統合型リゾートが多く立ち並ぶマカオ。エンターテイメント都市としての印象が強いが、実は近年、アートに力を入れていることを知っているだろうか? その象徴的なプログラムが、今年の6月から10月にかけて開催されている「アート・マカオ(Art Macao)」だ。マカオの街全体に44もの会場が点在し、世界中から集められたアート作品が展示されている本展。日本ではなかなかみることのできない大規模芸術祭の様子をレポートする。[Sponsored by マカオ観光局]

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2019年6月、羽田から香港へ、そこからバスでマカオに到着した。マカオは、中国の特別行政区。成田・関西・福岡から毎日直通便が出ており、日本から約5時間で到着することができる。また、2018年10月には、竣工までに10年の歳月をかけた香港とマカオを結ぶ世界最大の大橋が開通し、香港国際空港からバスで1時間もかからず行き来できるようになっている。
 

 
空港に降り立つなり、とんでもない蒸し暑さに驚いた。ホテル・リゾートの開発が進む埋立地を横目に、バスでホテルへ向かう。カジノを中心にギラギラとネオンが輝くラグジュアリーな雰囲気の地区のすぐ隣には、住民の生活感が漂う古いアパート群が現れ、その対照的な要素が同居する異様な街並みは、まるでSF映画で描かれる近未来都市の様だった。
 

 
「アート・マカオ」とは?

1999年に中国に返還されるまでポルトガルの領土であったマカオ。「アート・マカオ」は、その中国返還から20周年、中華人民共和国の創立70周年を記念して、マカオ政府主催して開催されたイベント。街中には、屋内屋外問わず、ビジュアルアートやインスタレーション、世界中の著名なアーティストによる作品が並び、音楽や演劇などのパフォーマンスが行われる。


「アート・マカオ」の作品はホテルのエントランスや観光地など、街中に点在しており、マップを頼りに世界遺産の街並みを観光しながら鑑賞することができる。

マカオの面積は、世田谷区の半分しかなく、縦断したとしても車で20分程度。私は滞在した5日間で道を自然と覚えてしまい、Google Mapsを見なくとも自由に歩けるようになった。コンパクトな街全体が美術館のようで、街角に突然有名なアート作品が現れる様は圧巻だ。

実際、ホテルに到着するなり、窓の外を見下ろすと、巨大な足跡があった。これも、「アート・マカオ」の出展作品のひとつ。存在するはずのない神話のドラゴンの気配を感じさせる作品。発見と遊び心がある。
 


  • Ma Yansong (MAD Architects) DRAGON’s footprint (2019) Rubber Playground Material 29.84 x 34.64; 30.6

 
街をぶらぶらしていると、地元の建築家、デザイナー、芸術家であるSu RuohanとMeng Litaiによって設計された作品が。竹の構造物にハンモックが設置してあり、街の景色を一望できる癒しのスポットとなっていた。
 

 
この作品はマカオのシンボルでもある「聖ポール天主堂跡」のすぐ隣にある「モンテの砦」に展示してある。もともとこの場所はマカオの軍事施設であったが、今はマカオの高台にある観光地になっている。今も22門の大砲が残されたままであり、マカオの歴史を感じることができる。
 

 
マカオの新しいシンボルといば、2018年の6月に誕生したばかりのタワーホテル「モーフィアス」。建築家は、新国立競技場の問題で日本でも有名なザハ・ハディド(Zaha Hadid)の遺作である。

総開発費11億ドル(日本円で約1230億円)、コンセプト立案から6年かけて建てられたその姿はまさに巨大な芸術作品。モーフィアスの繭のように建物全体を包む鉄骨は、外骨格鉄骨構造によるもの。外側が建物の骨格となっているため、内側に柱を持ってくる必要がない。柱がない分、開放感にあふれたスペースになっている。
 

 
モーフィアスの中には、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するアーティストKAWSの作品“Good Intentions”が展示されている。最近話題になることが多いKAWS。有名なアニメキャラを源流とした目がバッテンの巨大な作品を目の前に「あー、これこれ!」となった。

モーフィアスの地下には日本人現代美術作家、大巻伸嗣の作品があった。通路に突如現れるインスタレーション空間。壁に描かれた想像上の植物が鏡で囲われ、想像と空間を拡張している。

シルクスクリーン手法で製作されたこの作品は、鮮やかな発色がグレース・ケリー(Grace Kelly)の美しさと相まって一際目を引く作品だ。
 


  • Shinji Ohmaki Echoes Infinity Natural crystal pigments

 
マカオはホテルに併設された地下のショッピングモールが張り巡らされ、移動できる通路が多くあり、暑さをしのぐことができる。その途中、ホテル「ギャラクシーマカオ」内にグレース・ケリーの特別展示が行われていた。この作品は、その中の一つ、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)がグレースケリーを描いたポートレイトシリーズ。
 


  • Andy Warhol Grace Kelly, Signed “Andy Warhol, TP 2/20” (1984) Colour screenprint on Lenox Museum Boa

 
ホテル「ウィンパレス」では、人間の楽園をテーマに現代アートを展示する企画展を開催していた。この作品は、5メートルの巨大なデジタルフレームに滑らかに変容する有機的な形状が映されている。ダイナミックに動く様は、本当に目の前の物体が動いているように錯覚し、不思議と没入してしまう。
 


  • Refik Anadol Melting Memories (2018) LED Media Wall 5 x 6 m

  • Refik Anadol Melting Memories (2018) LED Media Wall 5 x 6 m

  • Edoardo Tresoldi Sacral (2016) Wire Mesh 5.3 height

 
この作品も企画展の展示作品。ワイヤーだけで構成され、繊細で高密度である。光が当たることでドームなどの古典的な建築が浮かび上がり、そのコントラストが神秘的なイメージを思わせた。
 


  • Robert Indiana The American LOVE (1970) Polychromed Aluminum 1.83 x 1.83 x 0.92 m

 
東京・新宿にある「LOVE」がマカオにもあった。このLOVEシリーズは世界各国に存在し、世界で最も有名なパブリックアート作品の一つ。ど直球ど真ん中。改めて、言葉の力強さを感じた。
 

 
スポット的にアート作品を紹介しきたが、「アート・マカオ」では400以上のプログラムが開催されており、5日間でも全部は見切れないほど数多くの作品が展示されていた。

マカオにはカジノあり、世界遺産あり、美食あり、そしてアートがある。小さいこの国に凝縮された魅力は一粒で二度、三度、四度おいしい。進化し続ける近未来のリゾートと古き良き街並みが共存している。またその中には、東洋と西洋が同居するマカオ独自の文化を持つ。その街並みは世界遺産に登録されている。夜の街は一人で散歩しても、意外にも治安が良く、安心して楽しめる。

「アート・マカオ」は来年2020年4月に早くも2回目の開催を予定している。この機会に、ぜひ多くの人に行ってもらいたい。


Text / Photo:Toi Yamada, Edit:Kojiro Ichimura

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